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導入必須!災害発生時に有効なタイムライン(防災行動計画)とは?

ICTサービス第6部
テクニカルスペシャリスト 千葉 由紀祐      千葉さん顔写真_184x297

こんにちは、テクニカルスペシャリストの千葉です。

7月よりエバンジェリストからテクニカルスペシャリストになりました。
気分新たに情報発信していきたいと思います。

今月に入り、線状降水帯による局地的な豪雨が日本各地で発生し、自然災害の脅威を目にします。被災された方々につきましては、心よりお見舞い申し上げます。また、一日も早い復興をお祈りします。

これから台風の発生が多い時期となり、企業活動においても自然災害への対策は十分に留意する必要があります。

今回は、自然災害対策として有効とされるタイムライン(防災行動計画)について、事業継続管理(BCM)、事業継続計画(BCP)、企業防災に触れながら述べたいと思います。

タイムライン(防災行動計画)とは

タイムラインは、近年自然災害が発生した際に度々報道され、ご存じの方が多いかと思います。特にマイタイムラインについては、個人の防災意識を高める事を目的に、国土交通省より普及・促進がなされています。

タイムラインは、アメリカの2012年ハリケーン・サンディの際に被害を最小限に抑える事ができたとして、日本においても、2014年に国土交通省より日本版タイムラインとして「タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針」が公開されました。

地震や台風など自然災害が多い日本において、災害発生後の防災行動については事例も多く、取組みが強化されてきましたが、災害発生前の防災計画の策定には課題があるとされ、当タイムラインの導入によって、災害発生時の状況を予め想定し、早めの防災活動によって被害の最小化を図る事を目指して策定されました。

当指針でのタイムラインの定義は、“災害の発生を前提に、防災関係機関が連携して災害時に発生する状況を予め想定し共有した上で、「いつ」、「誰が」、「何をするか」に着目して、防災行動とその実施主体を時系列で整理した計画”とされています。

引用:「タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)」※1 国土交通省 P4

大規模水害に関するタイムライン(防災行動計画)の流れ

※外部サイト【出典】:大規模水害に関するタイムライン(防災行動計画)の流れ 国土交通省

災害発生時点をゼロ・アワーとし、時間を遡って防災行動を計画する。そのため、自然災害のうち、地震や落雷などの突発型災害よりも、防災行動に必要な時間(リードタイム)を確保できる台風、大雨、大雪などの進行型災害において特に有効なものです。

当指針において、タイムライン導入により期待される効果としては以下の点が挙げられています。

  1. 災害時、実務担当者は「先を見越した早め早めの行動」ができる。また、意思決定者は「不測の事態の対応に専念」できる
  2. 「防災関係機関の責任の明確化」、「防災行動の抜け、漏れ、落ちの防止」が図れる
  3. 防災関係機関間で「顔の見える関係」を構築できる
  4. 「災害対応のふりかえり(検証)、改善」を容易に行うことができる

引用:「タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)」※1 国土交通省 P9

企業における防災活動(企業防災)においても、タイムラインを導入・活用する事で、政府の「防災基本計画」※3で災害時に企業が果たす役割とされる、“生命の安全確保”、“二次災害の防止”、“事業の継続”、“地域貢献・地域の共生”への効果が期待できます。

企業におけるタイムラインの取組み状況

令和元年の台風15号(令和元年房総半島台風)、19号(令和元年東日本台風)では、9月と10月にそれぞれ首都圏を直撃し、記録的な暴風・大雨による大規模な停電、河川氾濫などによって、企業活動にも大きな影響を与えました。

内閣府防災担当が今年3月に公開した、当時の企業の事業継続に関する取組みを調査した「令和2年度企業防災力向上のための事業継続計画(BCP)策定・運用に関する調査・検討業務 業務報告書」※2では、多くの企業でBCPは策定済であったものの、タイムラインを踏まえたBCPを策定している企業は、社会機能を維持する業界の一部の企業に限られていたとなっていました。

現在の自然災害の発生状況、タイムライン導入により期待される効果を鑑みれば、BCP整備を図る上でのポイントとして、今後取組む企業は増えていくものと思います。

では、どのような点を考慮して整備を図ると良いでしょうか?

タイムラインの活用ポイント

タイムライン作成のプロセスとしては、対象とする自然災害を定めた上で、対応項目の洗い出し、対応部署・対応者の決定、ゼロ・アワーの設定、リードタイムを考慮した行動開始タイミングの決定、時系列で整理などがありますが、活用の際に考慮すべき主なポイントは以下が挙げられます。

  1. タイムラインとBCPの整合性の確保
  2. タイムラインに基づく行動開始タイミングが、BCPで必要となる人、モノ、環境が確保できるか、整合性を確保する事が重要です。
    例えば、BCPを代替拠点での事業継続としている場合の交通運休などの移動制限に関る情報確認、サプライチェーン確保のために関係会社との協議が必要な場合の連絡体制確保といった事項が、BCP対応に支障のない様に反映されているか、十分チェックする必要があります。また、ゼロ・アワー後の初動対応(安否確認など)もスムーズに実施できるよう、整合性を確認します。

  3. 意思決定条件の明確化
  4. タイムラインの時間軸はあくまで目安であり、災害の規模・状況によって行動開始タイミングは変化しますが、「状況に応じて判断する」とした場合、行動が遅れる、また関係部署間の連携にずれが生じるなど、時間ロスの懸念がでてきます。
    行動開始時の意思決定者が判断可能な条件を明確に設定する事が重要です。

  5. 想定可能事象の十分な洗い出し
  6. 災害時は想定外の事象が起こり得るものと考え、できる限り想定可能な内容は盛り込み、想定外の事象に備える事が有効です。そのためには関係部署が集まり、情報取集、備品確保、要員避難、業務継続対応などを各部署の観点で洗い出しをし、いつ、だれが、何をするかをしっかり協議しておく必要があります。

  7. 確実な連絡手段の確保
  8. 防災行動は、多数の関係部署で平行して行われる事から、迅速かつ正確な横連携が必要です。そのため、複数の連絡手段(電話・メール・Web会議システム)の確保や、休日・夜間を想定した準備を反映しておく必要があります。

  9. 訓練・教育
  10. 防災意識を高め、緊急時に冷静に行動するためには教育・訓練は必要不可欠です。また、前述した災害時の企業の果たす役割を自社がどのように取り組んでいるかを理解させる意味でも効果があります。
    BCMの教育・訓練プロセスの中で行うなど、定期的に実施する仕組み作りが必要です。あわせてタイムラインの整備(業務状況の変化によるリードタイムの確認等)も教育・訓練前に定期的に実施します。

まとめ

私も過去の大型台風発生時、より実効性の高いタイムラインの策定に取組み、関係会社・部署との連携タイミングの明確化や、事業継続体制確保のための多くの検討・調整を経験しました。策定、及びスムーズな実行には各社課題や試行錯誤も生じますが、昨今の自然災害の発生状況を考えれば、タイムラインを考慮した事業継続の検討・取組みは今まで以上に有効であり、災害時における安定した事業の継続は、企業価値を高める事に大きく寄与します。

また、コロナ禍でリモートワーク環境の整備が進んだ事により、BCPの整備・見直しが必要となりますが、その際にあわせて検討する事でより有効なBCP策定が実施できます。

本稿がタイムライン導入検討のきっかけとなれば幸いです。

では、またお会いしましょう。

以下外部サイト

参考文献: タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版):国土交通省
水災害に関する防災・減災対策本部、防災行動計画ワーキング・グループ
令和2年度企業防災力向上のための事業継続計画(BCP)策定・運用に関する調査・検討業務 業務報告書:内閣府防災担当
防災基本計画:中央防災会議

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千葉 由紀祐

株式会社IDデータセンターマネジメント テクニカルスペシャリスト

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