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将来タンパク質が供給不足?環境に配慮した食の最新テクノロジー


株式会社IDデータセンターマネジメント
テクニカルスペシャリスト 水谷 知彦  水谷写真_100x150 

IDデータセンターマネジメント所属テクニカルスペシャリスト水谷です。

今回のコラムでは、弊社でも推進しているSDGs、ESG関連のニュースや本を読んでいる際に気になった、食のテクノロジーについて触れていきたいと思います。

代替タンパクと食のテクノロジー

近い将来、世界の人口増加に伴いタンパクの需要が供給を上回る可能性があると言われています。人間に必要な3大栄養素の1つであるタンパク質は、主に肉、魚、卵、豆、乳製品などから摂ることができますが、今までの仕組み、環境ではこれらの供給が足りなくなると耳にします。
では、このタンパクが不足する問題を解決するため、どの様な取り組みが行われているかSDGs、ESGの観点も踏まえて見ていきたいと思います。

植物肉

人為的に排出されている温室効果ガスの約14.5%が畜産業に由来していると言われています。タンパクを確保する手段として、牛、鳥、豚など食肉用の家畜を単純に増やす方法は、温室効果ガス削減による環境保護の観点からも今後選択しづらくなってくると考えられます。

環境保護に考慮した肉に代わるタンパク確保の手段の一つとして、植物由来の原料で作成された植物肉が開発されており、市場への供給が進められています。環境保護の目的以外にも、健康意識の高まり、動物愛護の観点などから、近年、植物肉の市場は拡大しており、一例として米国では日本でも有名な大手ファストフードチェーンが植物肉のハンバーガーなどを販売しています。
最近の植物肉はかなり実際の肉に近づいており、見た目、味などは、ほぼ肉とのこと、食感、栄養に関してまだ課題はあるようですが、こちらも日々の研究で解決されるものと考えられます。日本の食卓でも植物肉が一般的なおかずになる日が近いかもしれません。

ちょっと話は脱線しますが、植物肉に関連したIT技術で面白いものに、3Dフードプリンタを利用した植物肉の作成があります。原材料の入ったカプセルを3Dフードプリンタにセットして、プログラムされた設計図の情報を基にノズルから材料を吐出して植物肉を作成するといったものです。この技術により食感、味の改善が大幅に進むと言われており、作成時間、費用などの点で課題はあるようですが、改善も進んでいるため今後も注目の技術となります。

培養肉

植物肉と同じ代替肉のカテゴリに培養肉があります。培養肉は植物肉と違い本物の肉です。素材となる肉を培養装置に入れて増殖させて作ります。培養肉は肉そのものを増殖させる仕組みであるため、家畜を「と畜」する必要がなく環境への負荷が少ないことからクリーンミートとも呼ばれています。現時点では、作成費用が高額である点などから一般的な家庭まで普及は進んでおりませんが、改善は日々進められており、数年前まで100g作るのに数千万円掛かっていた費用が、現在は数千円まで下がっている例もあります。また培養肉の技術は、マグロなどを対象としても研究されており、限りある水産資源に依存せず、環境に負荷を与えない形での魚肉の確保も進められている状況です。
培養肉の研究により、作成時の大幅なコストダウンが進めば、持続可能かつ安定したタンパクの供給に大きく貢献するものと考えられます。

イメージ

昆虫食

最後に、近い将来不足することが予想されるタンパクを確保する手段の一つとして、昆虫食があります。日本でもイナゴや蜂の子を食べる食文化があるため、ご存じの方も多いと思いますが、この昆虫食が近年見直されてきております。昆虫はタンパク質の割合が6割程度と非常に多く、タンパク質が多く含まれていると言われている鶏のささ身と比較した場合でも、同じ質量で約2倍のタンパク質が含まれています。牛と比較した場合は、約3倍になります。不足するタンパクを確保するため、昆虫食は大変有効な解決策の一つになると考えられます。
近年の昆虫食の中心となっているコオロギは比較的飼育がしやすく、食用として出荷できるまで6、7週間と牛、鶏など比較して短期間でタンパクを供給できます。また、同量のタンパク質を確保する場合、牛の飼育と比較して、温室効果ガスの排出量は30分の1程度、使用する水の量は2000分の1程度で済むと言われています。環境保護の観点からも昆虫によるタンパクの提供は、今後も継続的に成長して市場が拡大していくと考えられます。

この様に良いこと尽くめの昆虫食ですが、一つ大きな問題があります。見た目になります。昆虫そのままの形で提供された場合、嫌悪感を持つ人も多いと思います。個人的にも昆虫の形はあまり食欲をそそるものではありません。
この見た目の問題を解決する手段の一つとして、昆虫を粉末状にして提供するといった方法が取られています。最近コオロギの粉末を使ったクッキーやお煎餅などが食品店や飲食店などで販売されているのをよく見ますので、粉末にしてしまえば昆虫食へのハードルが大幅に下がると思われます。

昆虫の飼育に関して、コオロギやバッタなどの飼育環境は自動化が進められており、IoTのセンシング技術やAIによるロボット操作などのIT技術が利用されています。植物工場などと同様に効率化、安定供給のため今後も自動化が進むと考えられますので、IT技術の進歩と伴に成長していく領域と考えられます。近い将来昆虫の餌となる植物の育成から、昆虫を飼育して粉末状にして出荷するまですべて自動化された工場が出てくるかもしれません。

最後に、昆虫に含まれるコレステロールや脂肪は少なく、昆虫はヘルシー食材としての側面も持っています。個人的に健康維持のため、食わず嫌いをせず今後は積極的に食べていきたいと思います。先ほど早速、某大手ECサイトにてコオロギのスナックと、コオロギの粉末が入ったお煎餅を購入してみました。今から届くのが大変楽しみです。

食のテクノロジーは個人的に大変興味のある分野ですので、引き続きアンテナを張ってこちらのコラムでも触れていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた、次のコラムでお会いしましょう。

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水谷 知彦

株式会社IDデータセンターマネジメント テクニカルスペシャリスト

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