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有効なBCP策定の在り方 ~オールハザード型BCPと従来型BCPの比較検討~

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ICTサービス第6部
テクニカルスペシャリスト 千葉 由紀祐   千葉さん顔写真_184x297

こんにちは、テクニカルスペシャリストの千葉です。
 
早いもので今年も半月が過ぎ、新型コロナウイルス感染症との戦い・共存も3年目に突入しました。昨年後半の新規感染者数の減少傾向から、新たな変異株(オミクロン株)の発生に伴って感染対策を緩和から引き締めへと見直しされている企業も多いのではないでしょうか。
特に、オミクロン株発生当初の広範囲な濃厚接触者の認定は、状況によっては企業の事業に大きな影響を与えかねないものでした。
 
日本経済団体連合会(経団連)は、昨年、感染拡大の経験を踏まえて、事業継続計画(BCP)をオールハザード型へ転換する事を推奨しています。2009年の新型インフルエンザ流行を機に感染症対策の整備が進んだ企業は多くありましたが、今回の新型コロナウイルス感染症対策では十分機能しなかった企業も多かったとして、想定外事象にも対応できるBCPへの転換を促したものです。
 
新型コロナ対策としてリモートワーク環境やサテライトオフィスなどを整備し、BCPの見直しを進められている企業も多いと思いますので、今回は、オールハザード型BCPと従来型BCPの比較検討を通じて、有効なBCP策定の在り方について考えていきます。

BCP


オールハザード型BCPと従来型BCP

BCPの概要・目的等については以前のコラムで述べていますので是非ご参照ください。
初動が最重要!事業継続マネジメント(BCM)と事業継続計画(BCP)
似ているけど違う!?「防災活動」と「BCM(事業継続マネジメント)」の違い
 
BCPは事業影響度分析(BIA)によって定めた重要業務の継続・早期復旧のために策定しますが、検討するにあたって“原因事象”と“結果事象”の考え方があります。例えば、感染症蔓延であれば、原因事象が“感染症蔓延”であり、結果事象が”社員の40%が欠勤、執務フロア利用不可“などです。
 
オールハザード型BCPでは、緊急事態の結果事象における経営資源(リソース)に着目して策定します。RLO(目標復旧レベル)に必要となるリソースの定義は勿論、各リソース(人、設備、機器、サプライヤー等)を定義しておく事で、想定外の事象や、複合的に事象が発生した際も、原因事象に囚われず対応できるという考え方です。
 
一方、従来型BCPは、原因事象に着目し、その原因事象の結果事象を想定し整備は行う考え方です。原因事象の発生に備えた平時の活動(予兆情報の収集による防災・減災対策などのリスク管理)を通じて、緊急時の初動対応(指揮命令系統の確立、被害状況確認、安全確保など)やBCPの整備を行う対応が多いと思います。
 
では、どちらの考え方が好ましいのでしょうか?

オールハザード型BCPと従来型BCPの比較検討

双方を以下4つの観点で比較すると以下の通りとなります。
 
1.発生事象
例えば、システム大規模障害と大型台風など複合的に事象が発生した場合、人的リソース確保のために個々の計画を確認する従来型BCPよりも、1つの計画を確認するオールハザード型BCPの方が判断・決断がし易く、対応スピードが速まる事は大きなメリットと言える。
 
2.管理面
BCPは内外の環境変化に対応するために事業継続管理(BCM)に基づく継続的な改善を行う事から、管理する量や、対策の重複を避ける事ができるオールハザード型BCPの方が、品質面・工数面で有効だと言える。また、RLO達成に必要なリソース確保計画も立て易い点も大きな利点となる。
 
3.教育・訓練
年間で実施できる教育・訓練は1~2回程で、経営層参加形式となれば長時間の実施も難しいため、原因事象毎の従来型BCPでは複数年計画になってしまう。また、訓練は自社にとってリスクが高いと分析した原因事象をテーマとして行うのが一般的であるが、リソースを網羅したBCPの確認によって他の原因事象も意識できる点で、オールハザード型BCPの方が効果的と言える。
 
4.平時の活動、緊急時の初動対応
平時の活動、及び緊急時の初動対応の整備は、原因事象によって対応内容が異なる事から、従来型BCPにおける原因事象への着目が不可欠となる。BCP発動前の取組みではあるものの、平時の活動結果が、緊急時の初動対応とBCP整備のきっかけとなり得る事から、自社事業に合った原因事象に着目した平時の活動は非常に重要となる。

従来型BCP
オールハザード型BCP
1.発生事象
想定外の発生事象はその場で検討が必要となる。また、複合的に発生した場合はそれぞれのBCPを踏まえて判断する必要がある
想定外の発生事象や複合的に事象が発生した場合も対応できる
2.管理面
重要業務を発生事象毎に策定するため、管理する数が多くなる。また、発生事象間で同じ対策がある場合、重複管理となる
全てのリソースの観点を含めて重要業務毎に策定するため、記載内容は多くなるが管理する数は少なくなる
対策の重複は回避できる
3.教育訓練
管理する量が多い事から、網羅的に訓練・教育する場合は負担や時間が掛かる 管理する量の面で、網羅的に訓練・教育する場合、負担は少ない
4.平時の活動、緊急時初動対応
原因事象の観点によって、平時の活動(リスクの軽減・回避等)と緊急時の初動対応が整備できる
結果事象の観点では、平時の活動と緊急時の初動対応の整備はできない

1~3の観点では、結果事象に着目したオールハザード型BCPの考え方が有効ですが、4の観点では、BCP発動前の活動・対応については従来の原因事象への着目が必要となります。
 
結論として、結果事象に着目したオールハザード型BCPの整備と、従来の原因事象に着目した平時、緊急時の初動対応への取組みが、有効なBCP策定の在り方の1つと言えます。
 
なお、これからオールハザード型BCPへの転換を検討する場合は、従来型BCPの1つ(リソース制限が多い原因事象のもの)をベースにリソース観点を付加する事が、品質確保、工数負荷の面から有効な手段です。
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最後に

新型コロナウイルス感染症の発生により、各企業は“従業員を守りながら事業を継続させる”ために、インフラ環境の整備やデジタル化による業務プロセス等の見直しが行われ、新たなビジネス・価値提供するDX戦略が急速に進みました。
 
これにより、BCPにおいても、リモートワーク環境での業務継続、サテライトオフィスの代替拠点利用、Web会議サービスのクライシスコミュニケーションでの活用といった整備手段の選択肢が広がり、新たなビジネスに対する対応も必要となりました。
 
また、新型コロナウイルス感染症の他、サイバー攻撃の多様化、気候変動等による大規模な自然災害(台風・地震等)の発生、テロの脅威など、企業を取り巻く危機は変化しており、平時の活動を通じて対応していかなければなりません。
 
事業変化や新たな危機に対応するためのBCP/BCMの取組みは、企業競争力を維持・強化する上で益々重要視されていくと考えます。
 
 
本年も事業継続管理やITサービスマネジメントを中心に、より良いサービス提供の実現に貢献できる様、発信していきたいと思います。
では、また次回コラムでお会いしましょう。
 
 
※外部サイト 参考文献:非常事態に対してレジリエントな経済社会の構築に向けて 日本経済団体連合会



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千葉 由紀祐

株式会社IDデータセンターマネジメント テクニカルスペシャリスト

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