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農業におけるデジタル技術の必要性

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株式会社IDデータセンターマネジメント
テクニカルスペシャリスト 水谷 知彦  水谷写真_100x150 

IDデータセンターマネジメント所属テクニカルスペシャリスト水谷です。
 
コラムを書いている6月25日に、群馬県の伊勢崎市で最高気温40.2度が観測され、国内において6月として観測史上初めて気温が40度を超えたというニュースを目にしました。都心でも最高気温が35度を超えており、地球温暖化による影響が年々身近でより目に見える形で表れている様な気がします。
今後、夏に向けて気温が上がり、人間は熱中症などに十分注意しながら過ごす必要がでてきますが、夏野菜など夏の植物にとっては、太陽光に当たる機会が増えるため、光合成を行い大きく成長するチャンスとなります。庭のプランターに植えているミニトマトで実が増えて一部で赤くなってきているのを見ていると、夏に向けて日差しが強くなり光合成が活発に行われている状況を身近に感じることができます。庭に植えているミニトマトが吸収してくれる二酸化炭素の量は微々たるものですが、二酸化炭素の量を減らしカーボンニュートラルな社会を実現するため、ミニトマトの光合成を応援したくなります。

農業のPDCAサイクルと育成ノウハウ 

地球温暖化の話から変わりますが、庭でミニトマトなどを育てていると、植物を育てるさいのトライ&エラー、PDCAのサイクルが、普段私が扱っているデジタルのシステムと比較して、大きく異なっていることに気が付きます。プログラムであれば、キーを押せばすぐに結果が返ってくるため、1日で何度も試行錯誤を繰り返せますが、植物の場合は、早くても数日、長いものだと数年でやっと結果が見えてきます。収穫量を増やすためにどれくらいの量、間隔で水、肥料をやればよいのか、病気や害虫を防止するために使用した薬の効果が本当にあるのかなど、想定している結果の確認ができるまでに長い時間が掛かります。


家庭菜園などで自分たちが食べる分だけの野菜を作る分には、私の様に多少失敗して1つの苗からキュウリが1本だけしかならなくても、生活にあまり影響はありませんが、農業で生活をしている場合は違ってきます。作物の収穫量が収入に直結するため、想定している収穫量より、実際の収穫量が大きく下回った場合、生活ができなくなってしまう可能性が出てきます。1年に1回しか収穫できない作物であった場合、結果が出るまでに1年掛かるため、十分な貯蓄がないと気軽に何度も失敗することはできなくなります。
 
新規就農者が数年で離農してしまう原因の1つに、思うように作物の収穫量が上げられず、安定した収入を得ることができないため、農業を断念してしまうといったものがあります。先祖代々農業を行っているベテランの就農者は、長い時間を掛けて失敗と成功を繰り返しながら、試行錯誤を重ねて作物の育成ノウハウを身に付けています。農業との関わりの浅い新規就農者は、この育成ノウハウがありません。

作物の育成ノウハウは、育てる作物の知識、作物を育てる地域の土、水、気候など環境の知識、病気や害虫を予防、対処する知識など、数多くの要素が複雑に絡みあった大変高度なものとなります。作物の育成を通して、新規就農者がベテランの就農者の方と同じノウハウを身に着けるには、試行錯誤を行うサイクルが長いこともあり、大変長い時間が掛かってしまいます。
新規就農者がベテラン就農者と同じレベルの育成ノウハウを身に付けるのは、収入のこともありなかなか難しいと考えられます。

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新規就農者をサポートするデジタル技術

新規就農者が継続的に農業を続けられる環境がなければ、産業として先細りとなってしまいます。そこで現在、農業では不足する育成ノウハウを補うため、数多くのデジタル技術が活用されています。例えば、カメラとAIによる育成状況の監視があります。この技術はカメラで撮影した作物の育成状況をAIが解析して、栄養が足りているか、病気になっていないか、収穫タイミングなどを判断します。この解析には、蓄積された育成ノウハウのデータが活用されており、新規就農者でもベテラン就農者に近いレベルでの判断が可能となります。AIの解析では、蓄積されるデータが増えるほど精度が上がるため、今後は新規就農者でも初めからベテラン就農者と同じレベルで、作物の育成状況を把握することが可能になるかもしれません。

その他、施設園芸のビニールハウス、植物工場などでは、IoTを活用した自動環境制御があります。施設内の温度、湿度、二酸化炭素量など作物の育成に必要な環境情報を、センサーなどを活用して収集します。収集された環境情報は、クラウド等に配置された環境制御システムに転送され、収集された環境情報から施設内の空調、窓の開閉などを自動でコントロールして作物の育成に最適な環境を作ります。この自動環境制御も育成ノウハウをデータ化したものが活用されており、新規就農者でもベテラン就農者と近いレベルで作物の育成に最適な環境を作り出すことが可能になります。

まとめ

今回コラムで紹介したデジタル技術は、育成ノウハウが不足している新規就農者などが活用するとより効果的に利用できますが、今後はベテラン就農者でも活用する機会が増えるかもしれません。十数年前までサクランボ生産量日本一位の山形県のライバルは山梨県でしたが、現在は北海道になっています。

地球温暖化の影響などもあり、地域の環境に適した作物が変わってきているため、ベテラン就農者が今まで育成ノウハウの無い作物を作る必要が出てくるかもしれません。その際、一から育成ノウハウを蓄積していくのはあまり現実的ではないため、今回紹介した様なデジタル技術が活用されていくと考えられます。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた、次のコラムでお会いしましょう。

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水谷 知彦

株式会社IDデータセンターマネジメント ICTサービス第4部 テクニカルスペシャリスト

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