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プラチナバンド再割当てに見える総務省の本気

2022-11-24

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11月8日(火)に開催された総務省主催「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース(第15回)」にて、プラチナバンド帯の周波数再割当てに関する報告書(案)が提示されました。
 
このタスクフォースは、携帯電話が利用する周波数帯の有効利用促進に向けた目標設定、および実現可能な施策を検討するもので、令和4年2月から開催されています。
今回提示された報告書(案)の内容は、携帯電話を利用する方全てに関わる内容でしたので、紹介させて頂こうと思います。

電波利用の課題

現在の制度では、携帯キャリアによる基地局開設計画の認可中、対象の周波数帯を排他的に利用可能となっていますが、そのまま再免許申請を繰り返すことで、永続的に該当周波数帯が利用可能となっています。そのため、既に周波数帯を抑えている免許人(キャリア)が有利な状況が続き、事業参入の障壁となっていました。
 
また、周波数帯を他事業が利用するための設備移行に係る期間、および移行に必要な費用負担についても明確な指針がなく、事業者間での議論が進まない状況で、国による指針提示が求められている状況でした。現在の主要携帯キャリアに割当てられた周波数帯は以下の通りです。(参考①参照)
 
【参考①:携帯電話用周波数の割当状況】
参考①:携帯電話用周波数の割当状況
出典:携帯電話用周波数の再割当てに係る 円滑な移行に関するタスクフォース 報告書(案)(外部リンク)
 
表を見ていただければ分かる通り、5G帯向けに利用されるSUB6帯の3.7GHz・4.5GHz、およびミリ波帯の28GHz帯については全社ほぼ横並びの状況ですが、それ以外の周波数帯、特にプラチナバンドと呼ばれる700MHz~900MHz帯については楽天以外のキャリア3社が占有している状況です。また楽天モバイルについては1.7GHz帯周波数の一部のみの割当てとなっており、他社と比較すると利用可能帯域が少なく、基地局あたりの収容キャパシティは低い状況といえます。

プラチナバンドの優位性

プラチナバンドの周波数は1GHz未満の帯域であり、300~3GHz帯のUHF(極超短波)に分類されます。特に800MHz前後の帯域は、回折の特性、小型機器へのアンテナの実装が比較的容易な波長である点から、携帯電話などのモバイルデバイスでの利用に適している帯域です。
 
回折の特性とは通信上に障害物が存在した場合、電波の波が障害物の背後に回り込む特性で、ビルの内部や地下などの障害物入り組んだ場所でも繋がりやすいとされています。また、電波が遠くまで届きやすく、地方などの広いエリアをカバーしやすい特徴もあります。ただし、通信速度は最大75Mbps程度であり、それほど早くありません。
 
携帯電話は動画などの大容量コンテンツ閲覧だけでなく、スマホ決済による金融インフラとしての機能も求められています。最近では現金を持ち歩かない人も多くなり、店舗での決済時に通信が出来ずに困っている方を見かけることが多くなったと感じます。通信速度も重要ですが「繋がること」が大前提のサービスが多くなり、プラチナバンド帯の優位性はますます向上している状況にあります。

周波数帯の再割当て方針

今回の議論の根底として、楽天モバイルからのプラチナバンド再割当て要請がありました。
既存3社が利用する、元々3G回線で利用されていたプラチナバンド帯域を「1年以内に移行、かつ機器交換費用は全て既存事業者負担を希望する」という強烈な要請でした。
 
そのため、既存事業者との議論は平行線となり、今回の報告書(案)にて総務省より方針が示されたものとなります。提示された方針については以下の通りです。概ね楽天モバイル側の主張が採用された形となりました。
  • 携帯電話周波数帯の再割当てを実施する
  • 周波数帯の標準的な移行期間は5年とする
  • 移行にかかる設備交換の費用負担は既存免許人負担とする

再割当ての申請のあった周波数帯は800MHz帯で20MHz、900MHz帯で10MHz。既存事業者の利用帯域からそれぞれ5MHzずつ割当てる案となっています。特定事業者の全ての帯域を移行しないため、既存事業者の周波数帯の変更自体は無く、利用者にも影響は無いものとなります。
 
下図は周波数帯の割当て案を抜粋したものとなります。各々管理している事業者が異なるため、一斉に移行ではなく、それぞれ妥当な移行期間が設定されるイメージです。
 
移行期間は、電波法の免許の有効期間が5年間であり、再免許の付与が保証されていないことを勘案し、5年が妥当であるという結論となりました。費用負担の考え方も同様です。移行作業には基地局から受信した電波を増幅するレピータの交換、減った帯域をカバーする基地局の増強などのインフラ整備が必要となります。(参考②③参照)
 
各社ヒヤリングによるレピータの交換にかかる期間は、殆どが5年以上、かつ標準的な移行期間を超える場合の延長案も提示されていることから、実際に再割当てに至るまでの期間は不透明な状況です。(参考④⑤参照)
 
【参考②:プラチナバンドの再割当てにおける移行期間の設定イメージ】
参考②:プラチナバンドの再割当てにおける移行期間の設定イメージ
 
【参考③プラチナバンドの再割当てに係る作業と費用(各社ヒヤリング資料抜粋)】
参考③プラチナバンドの再割当てに係る作業と費用(各社ヒヤリング資料抜粋)
 
【参考④各社レピータ交換作業詳細】参考④各社レピータ交換作業詳細
 
【参考⑤標準的な移行期間を超える場合の周波数帯移行イメージ】参考⑤標準的な移行期間を超える場合の周波数帯移行イメージ
出典:携帯電話用周波数の再割当てに係る 円滑な移行に関するタスクフォース 報告書(案)(外部リンク)

帯域再割当てと今後の展望

今回の報告書(案)については総務省が大ナタを振るい、多額の費用・工数をかけてでも既存事業者のプラチナバンド帯を移行、4社競争体制を確立することを目指したものと感じました。
 
それだけに再割当てを受ける楽天モバイル側には、移行にかかった費用以上のメリットを提供する義務が生じるわけであり、既存事業者以上のプレッシャーがかかるものと思われます。今後も継続して莫大な設備投資が必要になると予想されます。
 
一般利用者から見ると、競争体制の確立、割当て帯域の公平化などメリットが多い内容に見受けられますが、5年後という先を見据えてみた場合、平行して進められている「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」への影響が懸念されます。
 
本計画は政府の成長戦略の重要な柱として掲げられたもので、地方活性・持続可能な経済社会を実現し、地方から全国へのボトムアップ成長を図るために計画されたものです。
 
実現にはデジタル基盤整備(光ファイバー、5G、海底ケーブルなど)が必要であり、本報告書内にも計画に着手中の事業者に対し、計画への影響が無いよう配慮が必要との記載があります。
 
計画のロードマップを見ると、5G環境整備の取り組みは「2023年度内に全ての居住区で4Gが利用可能な状況を実現」、「2030年度内に全国・各都道府県の5Gカバー率99%」を目指すとあります。例えばソフトバンクは5G向けに割当てられた3.7GHz帯だけでなく、4G向けに割り当てている700MHzや1.7GHz帯を5G向けに転用しエリア整備を進めています。
 
このように周波数帯の再利用を検討していた既存事業者にとっては、方針次第では移行と合わせて再検討が必要となるかもしれません。(参考⑥参照)
 
【参考⑥デジタル田園都市国家インフラ整備計画 5G整備方針】
参考⑥デジタル田園都市国家インフラ整備計画 5G整備方針
 

参考⑥デジタル田園都市国家インフラ整備計画 5G整備方針
出典:デジタル田園都市国家インフラ整備計画 の概要(外部リンク)

尚、本報告書(案)に対する意見募集が12月9日(金)迄受付として公開されています。
提出された意見は、議論の参考となる予定であり、次回以降の議論での方針に影響を与えることになると思われますが、今回決定した基本方針に対しては大きな変更が無いものと予想されます。
 
以下に意見公募のリンクを記載します。当コラムでご紹介した資料の詳細もありますので、気になった方は一度目を通されることをお勧めします。
 
最後まで読んで頂きありがとうございました。
 
参考リンク:携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関する タスクフォース 報告書(案)」に対する意見募集(外部リンク)

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上坂 明

株式会社IDデータセンターマネジメント テクニカルスペシャリスト

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