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システム開発
株式会社IDデータセンターマネジメント
ICTサービス第6部
テクニカルスペシャリスト 千葉 由紀祐
今月初旬は都心でも雪が降るなど寒い日が続いていましたが、ようやく気温も10度台となり、春も近くなりました。昨年はお花見に行けなかったので、今年は今から楽しみです。
今年最初の投稿としてアジャイルのマインドセットを取り上げたいと思います。
アジャイルは“素早い”、“機敏な”の意味を持ち、ビジネスにおいて価値のあるものを素早く、そして変化に対応しつつ継続的に提供するための手法です。企画・実行・振り返りの反復をスピード感もって行うことで、変化に強く、新たな技術への対応がし易くなります。
アジャイルの思想(マインドセット)は、変化の激しいVUCAの時代で変化に対応するために必要な考え方であり、システム開発だけでなく、システム運用(ITSM)や組織運営においても有効なものです。
私が現在参画中のプロジェクトでもアジャイル方式を取り入れています。
ユーザストーリーを決定し、イテレーション(スプリント)計画を立て、スプリントを実施し、スプリントレビュー(デモ)、レトロスペクティブ(振り返り)をし、ユーザストーリーを更新するといった反復によりシステム構築を行っています。その際にマインドセットを持っていることが円滑なプロジェクト推進には欠かせません。
今回は、システムに携わる上でアジャイルのマインドセットを持とう!をテーマに述べていきたいと思います。
アジャイルのマインドセットとは
アジャイルのマインドセットとして最も分かり易いのは、アジャイル開発の価値と原則を定義した“アジャイルソフトウェア開発宣言”(アジャイルマニフェスト)と、宣言の背後にある“12の原則”です。
アジャイルマニフェストは、それまでのウォーターフォール開発等、従来のソフトウェア開発に異論を唱えたアメリカ、ヨーロッパ等の開発者17名によって作成され、2001年に世界に広く公開されました。
引用:Agile Alliance「アジャイルソフトウェア開発宣言」
引用:Agile Alliance 「アジャイル宣言の背後にある原則」
アジャイルマニフェストは宣言の最後の1文にある様に、
従来の開発手法における“プロセスやツール”、“ドキュメント”、“契約交渉”、“契約”にも価値があるとした上で、より価値があるものとして“個人と対話”、“動くソフトウェア”、“顧客との協調”、“変化への対応”の4点を挙げています。
アジャイルマインドセットの解釈
4つの価値について、12の原則を関連付けて解釈すると以下の様に表現できます。- “個人と対話”… プロセスやツールに頑なに縛られず、参画する個人との対話から個人の意見・創造性を最大限活かす。(主に原則⑤、⑥、⑪、⑫と関連)
- “動くソフトウェア” … ドキュメント整備に対して、動くソフトウェアこそ進捗状況を明瞭にする。
要件に柔軟に対応するにあたりドキュメント整備が対応スピードの足を引っ張ってはならない。
(主に原則③、⑦、⑩と関連)
- ”顧客との協調”…契約交渉においてシステム開発が目的化せず、顧客への提供価値を高めるための顧客との
協調、価値共創が重要。(主に原則①、④と関連)
- ”変化への対応”… 計画に固執する事は変化への対応を遅らせる。変化へ柔軟に対応できる事で顧客への
提供価値を高める。(主に原則②、⑧、⑨と関連)
整理した内容を見るとソフトウェア開発以外にも適用できる内容であり、「ソフトウェア開発」を「運用」や
「組織」に置き換えても顧客への価値提供に通じるものです。アジャイルマインドセットは、システムに係る
関係者・部門の共通マインドになり得るものと言えます。
アジャイルマインドセットの有効性
アジャイルマインドセットの有効性について、事例を挙げてみます。例えば、スプリントの振り返りで要件が具体化したり、外部環境変化で新たな要件が発生したり、バックログの件数が膨れ上がるケースはよくあります。この場合、アジャイルマインドセットを持っていると持っていない(または不十分)では捉え方が変わります。例えば、以下のような例が挙げられます。
アジャイルマインドセットを持っていない(又は不足) |
アジャイルマインドセットを持っている |
---|---|
事前に取り決めたプロセスで対応 | 定期的な振り返りで調整したプロセスで対応 |
ドキュメントベースでの進捗報告 | デモを繰り返しての進捗報告 |
システム開発自体を目的とした契約 | 顧客の価値向上を目的とした契約 |
開発のし易さ目線での計画策定 | 業務での価値、競争力向上目線での計画策定 |
また、他の事例として、リリース後に顧客からの要求追加、バグ改修の依頼に追われる状況に陥るケースの例では以下の様な例が挙げられます。
アジャイルマインドセットを持っていない(又は不足) | アジャイルマインドセットを持っている |
---|---|
顧客要求を着実に対応 | 要求が価値を生むものか会話をして対応 |
顧客からの細かい指示にも対応 | 顧客との協調、自律的な行動で価値向上を図る |
高負荷な要求に対して一時的な体制強化で対応 | 優先度を付けてタスクを小さく反復で対応 |
ポイントとなるのは、左側のアジャイルマインドセットを持っていない(又は不足)の内容も、それだけを見ると決して間違った内容とは言えない点です。アジャイルマインドセットを持っている場合、より変化に対して柔軟な対応ができる可能性が高いという事です。
4つの価値、12の原則の理解が対応のバリエーションを増やすとも言えます。
アジャイルマインドセットの行動規範
上記の解釈は私自身が実践する上で整理した内容となりますが、情報処理推進機構(IPA)が「アジャイルソフトウェア開発宣言の読みとき方」という資料を公開しています。4つの価値、12の原則に対する基本的な考え方の他、行動に移すための行動規範も記載されています。実践の参考にしたり、自身の行動
チェックなどに活用したりできると思います。
一番良いのは、識者との会話や関連セミナー、書籍から理解を深化させ、自身が腹落ちできるまで理解をし、自分なりの解釈で纏めて実務の中で実践していくことです。
まとめ
変化に対応するための新たな取組みや、変化により発生する課題・問題に対応するためにはアジャイルマインドセットを十分理解し、深化させる必要があります。
そのためには、都度、4つの価値、12の原則に立ち返って思考し、実践してみることが一番効果的です。そして、実践のために必要な知識・技術を身に付ける学習、経験者から知見を得る交流の場を設けるなど、自律的に行動し、技術力を磨き続けることが大事です。
また、プロジェクトや業務を円滑に進めるには、自身だけでなく、アジャイルマインドセットを持つ仲間を増やすことも欠かせません。ステークホルダー全員で共有できれば理想的だと思います。
皆さんはどのような取組みや工夫をしていますか?
アジャイルマインドセットを学び、実践していくことで、柔軟な考え方を得られ、変化への対応力がついてくることも実感できます。
本コラムがその取り組みの参考になったら幸いです。
では、また次回コラムでお会いしましょう。
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