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業務改革

AI
先端技術部
フェロー
玉越 元啓
初めまして。先端技術部の玉越です。
私は大学で統計学を学び、解析に使用したコンピュータに魅せられてITの世界に入りました。
システム開発やプロジェクトマネジメント等を経て、現在は、AIの研究や関連するサービス開発に携わっています。
AI技術のベースとなる統計学の知識からスタートし、ユーザ企業への派遣、システム開発技術や組織管理のキャリアを積んだことで、ライフワークとなりそうな
AI
分野に出会うことができました。
さらに、
AI
分野を活用したシステム開発や
PoC
へと、幅広い業務に取り組んでおります。
今回は、私が所属している人工知能学会とAIのトレンドについてお話します。
・人工知能学会とは
「一般社団法人人工知能学会(しゃだんほうじん じんこうちのうがっかい、英
; The Japanese Society for Artificial Intelligence
)は、人工知能に関する研究の進展と知識の普及を図り,学術・技術ならびに産業・社会の発展に寄与することを目的として設立された」学会です。
※外部サイト: 出典
主な活動として、日本国内向けの人工知能学会の全国大会と国際大会の開催、学会誌の発行があります。今回は、直近2回の学会について紹介いたします。
・2018年の学会
※2018年度人工知能学会論文集の頻出単語より筆者作成
AIを活用したサービスや事業化がすすんだ影響からか、大学や研究機関だけでなく企業による発表が増えてきました。
人工知能学会の会長も2018年度に初めて一般企業から選出されており、産学共同でAIに取り組んでいく姿勢が明確になったといえます。
企業の研究事例として、遺伝子工学へのAI適用により薬の開発速度の加速が紹介されました。
一つ一つは小さな進歩ですが基礎研究の積み重ねがCOVID-19などに対する薬の開発などに繋がり社会に貢献していると考えます。
また、自動運転に関する事例では、技術要素も出そろい自動車を運転させるだけなら実用レベルにあることを実感させられたとともに、自動車内でやることがなくなる「人」にとって自動車に乗ることの価値をこの先考えていく必要を感じました。
一風変わった研究としてお酒の味の表現と実際の味の関連についての発表がありました。
私は下戸ですが、将来、辛口の日本酒の味を楽しめるようになる可能性を感じました。
客観的・定量的なデータと主観的・定性的な情報とを関連づける切り口は他の分野でも活用されていますし、AIの得意とするところです。スポーツの分野でも人の行動と結果を関連付けて、良い結果が出る動作を予測し練習にフィードバックすることは今や当たり前ですし、ITの分野においてもネットワーク上の情報をもとにどう行動しているかを判断しセキュリティに活かす製品もでています。
※外部サイト:
1
日本酒味表現の類似性の分析
・2019年の学会について
※
2019
年度人工知能学会論文集の頻出単語より筆者作成
海外で発表された文脈解析の論文を日本語に適応する研究と
IoT
・自動運転・工作機器などの機械操作に関するものが増加しています。
翻訳等を含めた文脈の解析の多くは、インド
-
ヨーロッパ語族の言語(英語、ドイツ語等)を暗黙の前提としており、そのままでは日本語族(日本語のみ)に適応できない、ないし、期待する成果を得られないケースが多いです。
あたりまえですが、日本語の研究は日本でやる必要があると感じます。
2018
年に
Google
が発表した
BERT(
※
1)
を日本語に適応するための取り組みが新しくみられました。
また画像解析に関する、特に
GAN(
※
2)
に関する論文が
2019
年から急増しています。
なかでも、表層に現れる感情と垣間見える本音を合成した表情を生成する研究は、海外では見られない研究で、日本の文化に根差した面白い取り組みです。
新しく発表される研究もそのほとんどが
SVM(
※
3)
、
CNN(
※
4)
などに代表される基本的な考え方がベースとなっており、それらを拡張・改良するための取り組みは日本国内に限らず続けられています。
技術的な研究と並行して、技術を正しくつかうという倫理観についての議論も活発になりました。
アイザック・アシモフが小説の中で示したロボット工学三原則のように、AIも正しく使わないとかえって悪影響がでてきます。
AIに判断基準を学ばせるためのデータが間違っていると、その間違った基準で判断するようになってしまいます。
例えば偏見が入った考情報をもとに採用AIを開発すると、差別的な採用が利用者が認識しないうちに実行されてしまうのです。
こうした過ちを防ぐためのアプローチは二つあります。
一つは統計的に偏りがないデータを用意することで、もう一つはAIが判断した理由をAIに説明させることです。
一部ブラックボックス化しているAIの中身を明らかにしていく取り組みは今まさに進行しているところで2020年度の学会でも注目されている分野となっています。
※
1 BERT
とは?
外部サイト:
Google
が開発した
NLP
(自然言語処理)事前トレーニングのための手法
※
2 GAN
Generative adversarial network 敵対的生成ネットワーク
教師なし学習の一つ。データから特徴を学習することで、実在しないデータを生成したり、存在するデータの特徴に沿って変換できる。
2019
年度人工知能学会で発表された論文「
JSAI2019_1E4J1203:Neural Virtual Try-On System considering 3D human model
」から参考画像を示す
※
3 SVM
Supoort Vector Machine サポートベクターマシーン
教師あり機械学習方法の一つ。データを2つのグループに分類する超平面(2次元だと線)を計算する
※
4 CNN
Convolutional Neural Network シーエヌエヌ/コンボリューショナル・ニューラル・ネットワーク
画像の深層学習によく用いられる手法。「畳み込み(
Convolutional
)」という局所の特長を際立たせる手法とニューラルネットワークを組み合わせている。
・2020年度の学会について
2020年の学会はリモート開催となり、これへの参加を予定しています。
当日発表される論文のテーマと論文を読みながら、聴講する発表をまさに選定しているところです。
次回以降、
2020
年度人工知能学会のリモート開催の状況と研究のトレンド、実装等について紹介していきます。
IT/AIの世界の技術革新の速度は非常に早く、出来そうにないと思っていたことがいつの間にかできるようになっていたりします。
お持ちのアイデアを実現できるか、抱えられている課題を解決できるか、最新の情報をもって取り組ませていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。
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