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AIの外部ツール連携を支える「MCP」の実力とは?

MCP

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AIスマートソリューション部
テクニカルスペシャリスト     
松尾 大輔 matsuoka2_274x380

こんにちは。AIスマートソリューション部テクニカルスペシャリストの松尾です。
今回は、2025年4月現在、AI界隈で一番ホットなMCP(Model Context Protocol)について調べてみました。

MCP(Model Context Protocol)とは

MCPとは、Claudeで有名なAnthropic社によって2024年11月に発表された、AIモデル(LLM)と外部データソース・ツール(以降、外部リソース)を接続するためのオープン標準プロトコルです。

2025年のAIトレンドとしてエージェントがありますが、エージェントに必須となる外部リソースとの連携に有効であることから、3月くらいから急にホットになってきた印象です。
MCPの公式サイトでは、MCPはAIアプリケーションにおけるUSB-Cポートのようなものだと記載されています。

参考:https://modelcontextprotocol.io/introduction
 
パソコンと周辺機器の接続がUSB-Cに統一されたことによって、持ち運ぶケーブルの種類が1つに統一されたように、AIアプリケーションと外部リソースの接続を共通プロトコルで統一すれば、各外部リソースとの接続部分(APIクライアントやコネクタ)を個別に実装する必要もなくなることから、注目されています。
 
■パソコンと周辺機器
USB-Cケーブルのみで様々な周辺機器と接続可能です。

MCP

■AIアプリケーションと外部リソース
AIアプリケーション側のMCP Clientと、外部リソースごとのMCP Serverを接続します。
MCP Serverは各サービスベンダが公式に提供しているものを利用するか、独自に実装することもできます。

MCP

MCP を用いたAIアプリケーションの実装

それでは、MCPを用いて何かアプリケーションを作ってみましょう。
よくあるシチュエーションとして、以下機能を実装したチャットボットを作ってみます。

  • 社内にある各種情報(ファイルやデータベース)をナレッジとして利用(今回はローカル上で実装)
  • 必要に応じて、Webで最新情報を検索
今回は、なるべく独自実装をせずに、公式のリファレンスなどを用いることにします。
具体的には、以下を使用します。

  • MCP Client: Claude Desktop 
  • MCP Server(ファイル検索): Filesystem 
  • MCP Server(データベース検索): PostgreSQL 
  • MCP Server(Web検索): Tavily

MCP

以降は、Windows 11での実装例となります。
以下のソフトウェアが必要となりますので、お試しされる際はインストールをお願いします。

  • Node.js 
  • PostgreSQL
  • Claude Desktop

1.Filesystem MCP Server

まずは、ローカルのファイル検索を行うFilesystem MCP Serverを実装します。

1.1. インストール

以下のコマンドを実行して、MCP Serverをインストールします。
実際はここでインストールしなくても、MCP Server実行時にnpxコマンドによって、一時的にインストールされます。ここでは、実行速度を上げるためにインストールしています。

npm install -g @modelcontextprotocol/server-filesystem

%APPDATA%\Claude\claude_desktop_config.jsonを開いて、MCP Serverの定義を入力します。
argsの3行目以降に、ファイル検索対象のパスを記入します。検索対象のパスが複数ある場合は、4行目、5行目…と列挙します。

{
  "mcpServers": {
    "filesystem": {
      "command": "npx",
      "args": [
        "-y",
        "@modelcontextprotocol/server-filesystem",
        "C:\mcp_data",
        "C:\mcp_data_2"
      ]
    }
  }
}

1.2. サンプルデータ

Filesystem MCP Serverは、WordやPowerPointなどのOfficeファイルは現時点では直接読み取ることができませんでした。よって、以下のような架空の会社の会社概要をプレーンテキストにして、サンプルデータとします。
未来技術ソリューション株式会社は、2000年に設立されたITサービス企業です。
所在地は関東地方の東雲市です。主に企業向けに幅広いITサービスを提供しており、特にデジタルトランスフォーメーション(DX)関連の事業を強みとしています。顧客は全国の様々な業種の企業で、DX推進やシステム開発、クラウド導入などのプロジェクトを支援しています。
   
「デジタル技術で企業の未来を創造する」という企業理念のもと、顧客企業の変革を共に推進し、社会に貢献することを目指しています。
創業以来、安定した成長を続け、2025年には従業員数が約1000名、売上高が約200億円規模にまで拡大しました。
特にDX関連サービスの売上比率は、創業当初の約5%から2025年には60%にまで高まっています。


MCP

2.PostgreSQL MCP Server

次は、データベース検索を行うPostgreSQL MCP Serverです。

2.1. インストール

1.1.と同様にインストールします。

npm install -g @modelcontextprotocol/server-postgres

%APPDATA%\Claude\claude_desktop_config.jsonに、PostgreSQL MCP Serverの情報を追記します。

{
    "mcpServers": {
        <2.1.1.で準備した"filesystem"の内容>,
        "postgres": {
            "command": "npx",
            "args": [
                "-y",
                "@modelcontextprotocol/server-postgres",
                "postgresql://user:password@localhost/db-name"
            ]
        }
    }
}

2.2. サンプルデータ

こちらのサンプルデータは、2.1.2の架空会社の売上高と従業員数のデータとしています。
 
■売上高(年度, 売上高, DX比率)
fiscal_year
revenue_billion
dx_ratio_percent
2000
1.00
5.00
2001
2.00
6.00
以降省略

■従業員数(年度, 従業員数)
fiscal_year
employee_count
2000
10
2001
15
以降省略

3.Tavily MCP Server

最後は、Web検索をするためのTavily MCP Serverです。

3.1. インストール

同様にインストールします。

npm install -g tavily-mcp@0.1.4

%APPDATA%\Claude\claude_desktop_config.jsonに、Tavily MCP Serverの情報を追記します。
私の環境では、envAPPDATA(値はWindowsの環境変数APPDATA)を記載しないとMCP Serverを起動できませんでした。

{
    "mcpServers": {
        <2.1.1.で準備した"filesystem"の内容>,
        <2.2.1.で準備した"postgres"の内容<,
        "tavily-mcp": {
            "command": "npx",
            "args": ["-y", "tavily-mcp@0.1.4"],
            "env": {
              "TAVILY_API_KEY": "tvly-YOUR_API_KEY-here",
              "APPDATA": "C:\\Users\\USERNAME\\AppData\\Roaming\\"
            }
        }
    }
}

4.動作確認

それでは動作確認をしてみましょう。
Claude Desktopを開いて、以下のプロンプトを入力してみます。
未来技術ソリューション株式会社の2025年の事業計画案を考えてください。
## 参照情報
- 会社概要: c:\mcp_data
- 売上高、従業員数: postgreSQLに格納
AI事業を強化する予定です。最新のAIトレンドを加味してください。


MCP

チャットの初回は、MCP Serverが実行されるたびに許可確認のポップアップが表示されます。

MCP

Filesystem MCP Serverが呼び出されたところです。ファイルの中身が読み取られていることが分かります。

MCP

PostgreSQL MCP Serverが呼び出されたところです。プロンプトには、テーブル名は記載しなかったので、まずは、どういうテーブルがあるかを調べています。

MCP

最終結果は、以下のようになりました。実装したすべてのMCP Serverが実行されていますね。出力結果もなかなかのものではないでしょうか。

MCP

まとめ

以上、MCPの実装でした。
WordやExcel等のOfficeファイルの読み込みに対応していないなど、ワークロードによっては、MCP Serverの独自実装が必要になると思いますが、外部リソースがローカルにあるのかリモート(インターネット上のSaaS等)にあるのかを気にせずに、同じ実装で外部リソースを呼び出せる点は、大きなメリットではないでしょうか。
 
今回の実装では、MCP ClientにClaude Desktopを使ったため、Claude Desktopの設定ファイルにJsonの定義を書いただけで実装できました。
MCPの実装に興味がある方は、まずは、公式サイトのGet Startedの内容を実際に実装してみることをお勧めします(私もこれを行ったことで理解が深まりました)。

なお、弊社では、MCPの導入支援も行っております。ご興味がありましたら、ぜひ、お問い合わせいただければと思います。

参考:インフォメーション・ディベロプメント、AIの拡張性、導入効果を最大限に引き出す「MCP導入支援」サービスを開始

 

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