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ブロードコムのVMware買収 ~利益の追求と混乱

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サイバー・セキュリティ・ソリューション部       
テクニカルスペシャリスト 輿石 香豪 matsuoka2_274x380

皆様、はじめまして。テクニカルスペシャリストの輿石と申します。
 
今回がこちらのコラムへの初投稿となります。
私は、これまでプログラム開発、システム設計、保守、運用に携わり、現在はセキュリティを扱う部署で、お客様のセキュリティ向上に向けて日々奮闘しています。
これからも疾走し続ける予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
東京では暑い日がしばらく続いていましたが、やっと秋らしい心地よい気温の季節、10月がやってまいりました。だんだんと涼しくなると温かいラーメン食べたくなります。
 
私は、第三京浜を車でビューンと20分ほど走れば新横浜ラーメン博物館に着くので、気軽に通っておりますが、難点は建物に併設された立体駐車場です。
入り口はゲート式でバーがあるタイプなのですが、駐車券を取るゲートバーの部分が左右コンクリートで囲まれていてとても狭く、横幅180cm制限と書かれています。
 
なので、最近の大型車には少し厳しいかもしれません。でも、192cmほどあるSクラスの外国車も駐車できているので、頑張れば入れるかなという感じです。ただ、側面やホイールを擦らないように気をつける必要がありますね。

はじめに

さて、最近気になるニュースといえばVMwareに関する話題でしょうか。
 
VMware社は、仮想化技術の分野で世界トップクラスの企業として知られています。
同社は、サーバーの仮想化技術をベースに、データセンターの効率化やITリソースの最適化を可能にし、クラウドコンピューティングの基盤となる技術を開発・提供しています。
 
そのため、世界中の企業のITインフラにおいて、VMware製品は高い採用率を誇っています。Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloudといった主要クラウドベンダーのプラットフォーム上でも、VMwareの環境を展開できる「VMware Cloud on AWS」などのサービスを提供しています。

利益の最大化を目指すブロードコム


そんなVMware社が2022年に半導体大手のブロードコム(Broadcom)に610億ドルで買収されることが発表され、大きな注目を集めました。
 
ソフトウェア事業の強化を目指すブロードコムの動きとしては、過去最大規模の買収であり、仮想化技術のリーダーと半導体企業の合併が市場に与える影響について、多くの関係者が注目しており、ブロードコムはクラウドビジネスへの進出を強化し、新たな市場での収益拡大を狙っています。
 
ブロードコムは、これまで数々の企業を買収し、事業統合やコスト削減で効率よく利益を追求してきました。
例えば、2019年にシマンテックのエンタープライズセキュリティ部門を107億ドル(約1兆1300億円)で買収しましたが、その直後に大規模な人員削減を実施し、ライセンス料金を一気に3倍に引き上げました。
 
また、製品ラインナップの見直しや販売制度の変更など、大胆な再編成も行っています。
これにより、シマンテックの顧客やパートナーからは、サポート体制や価格の見直しに関する不満が噴出し、他社製品への乗り換えを検討する動きも見られました。
弊社でも、シマンテックのライセンス見積もりがなかなか提示できないといった事象が発生していました。
 
こうしたブロードコムの買収手法は、投資家から見てどのように映っているのでしょうか。
 
過去5年間、2018年から2024年8月までの株価を振り返ってみると、ブロードコムの株価は右肩上がりで推移しています。
もちろん、AIブームなどの要因も影響しているでしょうが、株価を見る限り、市場はこれらの買収戦略をポジティブに受け入れているようです。

日付 株価 動き
2018年8月 21ドル  
2019年8月 28ドル シマンテック買収
2020年8月 34ドル  
2021年8月 49ドル  
2022年8月 49ドル VMWare買収
2023年8月 92ドル  
2024年8月 162ドル  
Yahooファイナンス時系列データから独自に作成

日常生活で関わることが少ないため、ブロードコムの企業規模がピンと来ない方も多いかもしれません。
 
しかし、アメリカの上場企業の時価総額で見てみると、ブロードコムは堂々の10位にランクインしており、その時価総額は7929億9376万ドルに達します(Yahooファイナンス2024年9月30日時点)。
最近の円高を踏まえて、1ドル145円で換算すると、なんと約114兆円という巨大な規模になります。
 
日本の上場企業と比べると、その規模の大きさがより鮮明になります。
 
1位のトヨタ自動車が約43兆円、2位の三菱UFJフィナンシャルグループが約18兆円、3位のソニーグループが約17兆円で、上位3社を合計してもブロードコム1社の時価総額には届きません。
これだけを見ても、ブロードコムの企業規模がいかに大きいかお分かりいただけると思います。

ライセンス体系変更による混乱

さて、今回のVMware社の買収でも、シマンテック買収時と同様の動きが見られます。ITメディアやインプレスなどのニュースサイトによると、約2800人規模のレイオフが行われると報じられています。
 
また、いくつかの転職サイトを見てみると、退職理由として「ブロードコムに買収されたから」という記述がちらほらと見受けられます。
買収後の再編によって、従業員のキャリアや雇用環境に大きな影響が出ていることが伺えます。
       
そして、VMwareはライセンス体系の変更と価格改定を行いました。
2024年2月4日をもって永続ライセンスの販売が終了し、それに伴い永続ライセンス製品のサポートも同日に終了となりました
 
この動きにより、今後はサブスクリプションモデルへの移行が強制される形となり、既存ユーザーにとっても大きな変化となっています。
 
保守更新ができなくなったため、今後はサブスクリプションライセンス(保守込み)を新規に購入する必要があるとしています。
この「簡素化」と称した変更は、多くのユーザーにとって事実上のコストアップとなる可能性があります。
 


これまでは、「VMware vSphere」や「VMware vCenter」など、必要な機能を組み合わせて購入することができました。
しかし、今後は使わない機能が含まれていても、使いたい機能が入ったサブスクリプションプランを選ぶか、もしくは使わない機能が含まれた状態で、必要な機能をアドオンできるプランを選択する必要があります。
 
各プランの詳細については、他のサイトにお任せするとして、この大きなライセンス体系の変更に伴い、費用が最大20倍に跳ね上がったというニュースも見られます。
一部のユーザーにとっては、以前のライセンス体系から大幅なコスト増となり、サブスクリプションプランへの移行が、実質的に負担となるケースが出てきているようです。
 
例えば、ラーメン屋に入って、800円の醤油ラーメンを食べようと思ったら、なんとラーメン単品では注文できず、餃子、野菜炒め、焼きそば、中華スープ、杏仁豆腐がセットになった4,000円のプランしかないとしたらどうでしょう?
そんなに食べられないよ!と思っても、近所に他のラーメン屋がなく、その店が市場シェアの8割以上を占めているなら、結局そのプランを選ばざるを得ないという状況です。

市場のセーフガードが出動

そんな状況を見かねて、誰かがタレコミしたのかは分かりませんが、9月25日に公正取引委員会がVMwareの日本法人に対し、独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を行ったという報道がありました。
 
市場での圧倒的な地位を利用し、優越的地位の乱用があったのではないかと指摘されています。今後の公正取引委員会の動向は、業界に大きな影響を与える可能性があり、注目に値するでしょう。


VMwareと販売代理店と購入企業のイメージ図

最後に

VMwareの予算を年間500万円で計画していたところ、販売代理店から「翌年度は1億円になります」と急に告げられたら、思わず「何言ってるの?」と不満が溜まってしまいそうですよね。
 
さて、そんなモヤモヤを吹き飛ばすために、美味しいラーメンでも食べに行きましょうか。もちろん、ラーメン単品で注文できるお店へ、ですね。
 
それでは、また次回お会いしましょう!



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輿石 香豪

サイバー・セキュリティ・ソリューション部 テクニカルスペシャリスト

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