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【エバンジェリスト・ボイス】モデル作成及び検証に最適なTeachable Machineをご紹介

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エバンジェリスト 佐藤 聖


平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
早いもので本年も残すところ、あとわずかとなりました。
来年も変わらぬご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

今年は新型コロナウイルス防止対策で世の中の変化が大きな年でした。
政治の世界も米国大統領、日本国首相の交代があり大きな動きがありました。
経済はダウ平均株価の30,000台をNASDAQが12,000台と過去最高額に達し、日経平均株価も過去十年で高値圏に達するなど一年を見渡すと激しい乱高下に見舞われました。

米国では新規AI投資額が決定したことが多くニュースで取り上げられました。今後、5年間に欧州に並ぶ100億ドルの投資が行われることになりました。今年は事業領域の集中を選んだ企業よりも、幅広い領域で挑戦した企業が伸びてきたように思います。時代の変化を捉えて素早く柔軟に対応することが功を奏したのだと思います。

先行きが見えない中、多くの企業でDXが推進され、時代の変化に対応してきました。新型コロナウイルスのワクチン接種も始まり明るい兆しも見えています。新規の患者を減らすという課題は残りますが、一歩前へ踏み出すことができました。IT業界でもパラダイムシフトが起こる可能性を感じており、来年を楽しみにしています。

●モデル作成及び検証に最適なTeachable Machineをご紹介

今回は、AIモデルを簡単にトレーニングして検証できるWebアプリをご紹介します。年末年始に、ご自宅でAI体験してみては如何でしょうか。Google社のTeachable Machine を利用すると手軽にAIのトレーニングや学習済みモデルを使ってAIによる認識機能を体感できます。
※外部サイト:Teachable Machine


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このWebサイトでは画像認識、音声認識、ポーズ検出を学ぶことができます。教育向けの無料サービスですので、冬休みの自由研究に最適なサービスです。トレーニングはマウス操作で行えますので、プログラムがかけなくても問題ありません。用意するものは、パソコンとウェブカメラです。ウェブブラウザ(Google Chrome)からサイトにアクセスするとアカウント登録なしで利用できます。

このサービスはAIフレームワークのデファクトスタンダートの一つであるGoogle社のTensorFlowをベースにしています。このフレームワークでトレーニングされた学習済みモデルはクラウドサービスやパソコンアプリケーションの他に、スマートフォンやタブレット向けアプリケーションやサービスに利用されているものと同じAIが使われています。

トレーニングした学習済みモデルは、無料でGoogleサーバにモデルをアップロードすることができますので、Scratchプログラム やWebページからWeb APIとして呼び出して利用できます。私は、画像認識を使って国旗のデザインや都道府県の形を、音声認識で音から楽器の種類を判定するScratchプログラム作成してみました。これらについては、現在、編集作業中のCQ出版社インターフェース誌(2022年発売予定)にてご紹介することができるかと思います。
※外部サイト:TM2Scratch

●転移学習で少ないトレーニングデータから学習可能

Teachable Machineではプログラムを一切記述することなくAIをトレーニングできます。一般的にディープラーニングのトレーニングでは、大量の学習データを必要になり学習も長時間になります。しかし、Teachable Machineは転移学習と言うトレーニング手法を採用しているため、少量の学習データを使い数分~十数分でトレーニングが完了します。

画像認識やポーズ検出の学習データをパソコンの内蔵カメラやウェブカメラで動画撮影して収集します。音声認識はマイクで録音を行います。

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まず、分類したいものを決めて学習データを取り込みます。取り込み結果はウェブページに表示されるので、どんなデータが入力されるかを見ることができます。画像認識を使い都道府県の形をトレーニングする学習データは以下の図のように作りました。

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都道府県名がラベルで、その下の画像が学習データです。
また、学習データとして、画像ファイルや音声ファイルをアップロードすることも可能です。

トレーニングは、エポック数、バッチサイズ、学習率のパラメータがあります。初めは初期設定のまま変えずにトレーニングしてみてください。10ラベル(10種類の画像判定)に各30枚の画像によるトレーニングも通常10分間未満で学習が完了します。最大50ラベルまでのモデル生成ができました。

●学習済みモデルの活用方法

トレーニングが完了すると学習済みモデルを利用できます。パソコンの内蔵カメラや内蔵マイクから映像や音声を取り込むとウェブページ上に表示されます。その下にはで認識させたい物を撮影すると、各ラベルの精度がWebアプリ内に表示されます。ここでは北海道の形を認識させたところ、次の図の下部では、確率100%で北海道との結果が返ってきました。

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トレーニングした学習済みモデルはダウンロードして、パソコン・アプリケーション、AndroidやiOSのアプリケーションに組み込むことができます。

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在宅勤務が増えてなかなかコミュニケーションが取りづらくなっています。Teachable Machineはアイディアを形にして周囲の評価を得るためのツールとして手軽で便利です。プロジェクトファイルを共有して、Teachable MachineのWebアプリで読み込ませれば同じモデル利用することもできます。

●スマートフォンと仮想空間利用で進むデジタルツイン

AI以外でも現実世界でのトライ&エラーによる改善には非常に時間がかかります。解決方法の一つに、デジタルツインがあります。実現には、仮想空間上に理想モデルと現実世界で起こり得る詳細な物理現象を高い精度でシミュレーションします。

コンピュータ上で展開される仮想空間でのトライ&エラーによる改善は、空間や時間の制約を受けません。この手法は新型コロナウイルスのワクチン開発でも活用されました。デジタルツインを活用すると以下のような効果があるとされています。

・リアルタイムで問題を把握する
・何度も試行・施策ができる
・試行・試作からリスクを予測する
・人や物の動きを最適化させる
・効率化によるコスト削減につながる

これはコンピュータ上に作られる仮想空間と3Dモデル、AI技術を組み合わせたものがよく利用されます。例えば、AIの強化学習と仮想空間の相性はよく、産業用ロボットの組み立てなどのトレーニングを仮想空間でROS(Robot Operating System)やAIを使ってトレーニングを行い、現実世界で生産に利用するといった使われ方をしています。

また、店舗でレジの混雑を防ぐためにデジタルツインが利用されています。人の動きをシミュレーションしてレジ付近の混雑の原因を調査したり、機会ロスを減らす工夫に応用されています。基本的な技術としては、経路案内アプリと同様で、論理モデルを使ってコンピュータシミュレーションを行っており、AR技術で現場を見ながらシミュレーション結果を見て問題を把握し、より具体的に対策を講じるのに利用されています。

●アフターコロナ時代に向けて

アフターコロナ時代、AI、ARやVRは学校や職場にもより浸透すると考えています。スマートフォンでAR技術が手軽に利用できるので、AIを活用したデジタルツインが発展していくものと考えています。

仮想空間を実現するには、3Dゲーム開発プラットフォームが利用されています。ゲーム開発技術は、ビジネスへの応用がそれほど進んでいません。今月開催されるバーチャルマーケット5は仮想空間でのイベントです。ここには多くの企業が出展し、仮想空間の活用が活発になっていることを伺えます。同様の技術を活用した試みとしてバーチャル展示会、バーチャル卒業式が世界各地で行われました。来年は、ARやVRのビジネス活用が普及と共にゲーム開発技術の重要度も増すはずです。

私も2年前ほどから自宅で仮想空間を作り、AIのトレーニングに利用したり、仮想空間でモノづくりをしたりしていました。AI+仮想空間がこれからのトレンドになるかもしれません。開発における大きな出来事として、Apple Mac miniやMacbook Airの発売があります。いずれも10万円前後のエントリーモデルのコンピュータですが仮想空間やAIの開発を行える性能があります。新しいアーキテクチャのコンピュータにシフトしていく兆しを感じています。皆さんも挑戦してみてはいかがでしょうか。


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佐藤 聖

株式会社インフォメーション・ディベロプメント 先端技術部 エバンジェリスト

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