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【エバンジェリスト・ボイス】情報格差解消へと導く「可視光通信」への期待

株式会社IDデータセンターマネジメント
上坂 明

こんにちは。IDデータセンターマネジメントの上坂です。(4月から所属が変わりました)

無線通信の現状ですが「5G」と「Wi-Fi」に二分されています。5Gサービスの拡大はまだまだの状況ですが、少しずつ利用可能な範囲・サービスが増えてきました。
また、Wi-Fiについても最新の規格であるWi-Fi6(IEEE802.11ax)が徐々に浸透しつつあり、触れる機会が増えてきたと感じるようになりました。
※Wi-Fiについては過去のコラムに詳細がありますので、そちらをご参照ください。

参考: 【エバンジェリスト・ボイス】Wi-Fiとローカル5Gの動向について

さて、本日扱わせて頂く内容は「可視光通信」についてです。

2021年3月18日ソフトバンクは「ソフトバンクとニコン、360度追尾可能な「トラッキング光無線通信技術」の実証に初めて成功」とのニュースリリースを発表しました。

※外部サイト 関連リンク:ソフトバンクとニコン、360度追尾可能な「トラッキング光無線通信技術」の実証に初めて成功

※外部サイト 紹介動画:ソフトバンクとニコンのトラッキング光無線通信技術

ニュースリリースに書かれている光無線通信とは、従来の電波を利用する無線通信とは異なり、赤外線から可視光までの間の波長の電磁波(光)を利用した通信となります。また、光無線通信は大きく分けて「赤外線通信」と「可視光通信」に分類されます。
(赤外線通信はテレビのリモコン等で利用されていることもあり、馴染み深いかと思います)

 

電波と光の関係性

そもそも電波と光についてですが、ITU(国際電気通信連合)によると、「波長1mm以下、周波数300Ghz以上の電波」を光として定義しています。
現在普及が進み始めている5Gは準ミリ波帯(20Ghz ~30Ghz)のうち、28Ghz帯の利用が定義されています。更に上の周波数帯(波長:1cm~1mm、周波数:30Ghz~300Ghz帯)の電波のことをミリ波と呼びますが、人間が光として視認可能な光の波長(可視光帯)はそれよりも更に短いナノ波帯(単位:nm)となります。

波長の長さによる名称・周波数帯は以下の通りです。

【参考:波長の長さと周波数・名称の関係性】

可視光の波長の長さは約700nm~380nm程度となりますが、波長による見える色が異なり、
例えば620nm以上の波長であれば、赤色の光として認識されます。
この可視光を利用した通信を可視光通信(Visible Light Communication: VLC)といいます。
周波数帯に直すと400Thz(テラヘルツ)以上となり、広帯域の周波数を利用することが可能で、高速・大容量通信が可能となります。

尚、380nm以下の波長の光は「紫外線・X線・ガンマ線」、700nm以上の光は「赤外線」となり、人間では視認出来ません。(※780nm程度までは視認可能な場合もあるため、概算値です)

【イメージ図:波長による色彩の変化】

 

光無線通信の特徴

光を無線通信として利用した場合のメリット・デメリットは以下の通りです。

ニュースリリースでは、「AI(人工知能)技術、画像処理技術、精密制御技を活用し、2台のロボット間で360度双方向の光無線通信が成功した」という内容で、直進性に関する課題解決に向けての実証実験に成功したとの内容です。

現在の5G通信の次世代通信である6Gは、ミリ波・サブミリ波帯も利用する方針で研究が進められており、電波は更に「光の性質に近づく」状況となっています。
波長が短い光は、センサー同士の向きがずれただけでも通信が出来なくなるほど指向性が高いため、今回の実証実験の結果は、光を無線通信として利用するための第1歩ではないかと思います。

 

光無線通信の実装例

では、この可視光通信に利用されている光(光源)はどのようなものがあるのでしょうか。
可視光通信で主に利用される光源は「レーザ光線、発行ダイオード(LED)」が主となります。特にLEDは「高エネルギー効率・長寿命」のため利用しやすく、既に実装されている例もあります。その一例として「Li-Fi(ライファイ)」を例に取り、説明します。

Li-Fiは「Light Fidelity」の略で、LED照明(または専用の受発光機)を使用し、LED照明の光に音声、動画、データなどの信号を高速に変調させることで光通信を行います。Li-Fiの規格はIEEE802.11bbとして標準化が進められており、無線通信規格(IEEE802.11)を拡張したものです。

変調方式としては、LEDの光を人間では視認出来ない速度(1秒間に数千万~1億回程度)で点滅させ、ビットの0と1を表現して通信を行います。

【イメージ図:LED光波によるビット判定】

Li-Fiの特徴を以下に挙げます。

1. 通信速度
可視光スペクトルは高周波スペクトルの1万倍の容量を持つため、理論上の通信速度は224Gbpsと言われています。しかし、実証実験では最大9Gbps程度と現在のWi-Fi6と同程度の通信速度であり、現在日本で実用化されている製品では、最大約300Mbpsの通信速度となっています。

2. 消費電力
Wi-Fiは大量の電気を消費する電波塔が必要ですが、LED照明で通信するLi-Fiは照明分の電力消費のみとなるため、エネルギー効率が非常に良いという特徴があります。

3. 繋がりやすさ
電波干渉や混雑による通信への影響がありません。ただし通信機器のセンサー部に光が届かない(指で覆われた・ポケットの中にデバイスを入れた等)状況となると、繋がらなくなります。また、直接光が届かず、壁に反射した光でも通信は可能ですが、通信速度は低下します。

4. 利用制限
光を利用しての通信となるため、病院や空港などの電波制限区域での利用制限が発生しません。一方、屋外での利用にはあまり適しておらず、直射日光を受けているとセンサーが変調光波を検出できない状況となり、通信が出来なくなります。

5.有効範囲/セキュリティ
LED照明が届く範囲のみ接続可能であるため、照明が届かない部屋の外では接続出来ません。しかし、有効範囲を制御できる点はセキュリティ面ではアクセスコントロールがしやすく、例えばカードキー付きの部屋に設置した場合、物理的な人的アクセス制御も可能となります。(部屋に窓がある場合はこの限りではありません)

Li-Fiは上記の特徴から、政府・銀行系の高セキュリティを求められる場面で利用されています。しかし、通信速度・利便性・専用のデバイスが必要なことから、一般にはあまり普及していないのが現状です。

しかし、今後更に増加することが見込まれているIoTデバイス通信については、電波利用制限区画での利用も必要となる状況が増えることが想定されます。また、在宅テレワークが広がる中、自宅以外に電波が漏れないセキュアな無線LAN環境を準備出来るという点もあり、今後の需要拡大に期待が持てると考えます。

※外部サイト 参考サイト:PureLife

 

おわりに

光通信といえば光ケーブルを利用した有線通信を思い浮かべるケースがほとんどだと思います。
今回ご紹介した光無線通信技術は光ケーブルを引けない地方・山村であっても有効であり、情報格差(デジタルデバイト)の解消にもつながる技術だと考えます。

光の指向性以外にも解消しなければならない課題は多いですが、今後の展開に期待したいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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上坂 明

株式会社IDデータセンターマネジメント テクニカルスペシャリスト

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