
先端技術部
エバンジェリスト 藤原 和紀
エバンジェリストの藤原です。
ここのところ、日経平均株価が一時 26,000 円台を回復するなど好調となっています。その裏で仮想通貨市場も好調で、 Bitcoin は執筆時点で 1,900,000 円を超えています。
仮想通貨市場が好調になると増えてくるのがクリプトジャッキング攻撃です。クリプトジャッキングとはマルウェアに感染させるなど、不正な
Web
の閲覧などによりユーザーに無断で仮想通貨マイニングさせる手法です。ファイルを壊されるというような実質的な被害は無いのですが、
PC
のリソースのほとんどがマイニングに費やされますので、レスポンスは低下し、消費電力も相当なものになります。このような症状が出たらクリプトジャッキングも疑ってください。
さて本題です。
11
月
13
日に総務省から発表された「周波数再編アクションプラン(令和
2
年度第
2
次改定版)」において、「無線
LAN
の6
GHz
帯(
5925
~
7125MHz
)への周波数帯域の拡張に係る技術的条件について、令和2年度中に検討を開始する。」と6
GHz
帯の無線
LAN
使用について明言されました。
現時点で今年度中に検討を開始ですので、今後どのようになるかは不明な点も多いのですが、他国の動きも見ると恐らく対応されると見られています。
※外部サイト:総務省 周波数再編アクションプラン(令和2年度第2次改定版)」の公表
何のことかよくわからないと思いますので、
Wi-Fi
の規格について確認したいと思います。
現在製品化されている最速の規格は
Wi-Fi6
です。正式名称は
IEEE 802.11ax
になりますが、今回からナンバリングを付けることになり、
Wi-Fi4
からさかのぼってナンバリングされています。
上記の中で
Wi-Fi7
は規格制定中となっており、
2024
年後半に実用化される予定ですが、6
GHz
帯が使用される見込みとなっています。
なお、過去の例からもドラフト版に準拠する形の製品は少し早く発売されると見込まれています。
Wi-Fi7
はまだ少し先の話ではありますが、別の規格として
Wi-Fi Alliance
から
Wi-Fi6E
という規格が発表されています。
Wi-Fi6E
とは規格自体は
802.11ax
なのですが今までの周波数帯に加え
6GHz
帯も活用することができる規格です。既存の
5GHz
帯で使用できるのは約
500MHz
の帯域しかありませんが、
6GHz
帯は規格上の帯域を全て利用できることになれば約
1200MHz
の帯域となります。これによって
5GHz
帯の倍以上のチャンネルを使う事が出来ますので高速化や多接続時の安定化が期待されます。
米国では
2020
年
4
月に
6GHz
帯の使用が米国連邦通信委員会
(FCC)
によって承認されていますので、
Wi-Fi6E
対応製品が
12
月には
ASUS
から発売される見込みです。
日本でも早めに
6GHz
帯の使用について検討が進むことを願います。
・ローカル5Gとの違い
以前
5G
についてコラムを書かせていただきましたが、通常私たちが想像する
5G
網とはキャリア各社が提供するパブリック
5G
を想像するかと思います。
このパブリック
5G
とは別に、
Wi-Fi
に似たローカル
5G
という技術もあります。
ローカル
5G
とは企業や自治体によって運営される
5G
ネットワークで、自己の所有する土地や建物内といった限定されたエリアに構築することができます。
ローカル
5G
と
Wi-Fi
を比較した場合、
5G
の特徴である「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」が実現できます。
以下に
Wi-Fi
との比較をしてみます。尚、数値は全て目標値です。
導入する機器によってこの数値は大きく変化しますが、少なくとも目標値のレベルでは
5G
の数値が上回っています。ローカル
5G
では、キャリアのエリア展開に影響されず、自前で専用の
5G
ネットワークを構築できることが魅力になります。
このメリットにより、構内
Wi-Fi
をローカル
5G
に置き換えようという動きが活発になっています。
本年度はメーカー等による実験施設などを中心に開局が進みましたが、早ければ来年度くらいから本格導入を開始するところも出てくる見込みです。
主な用途としてスマートファクトリーでの制御機器管理やスタジアムの映像配信が期待されていますが、将来的に屋外建設現場での重機の遠隔操作や自律運転、農業での農機の遠隔操作や自律運転等を行うことも期待されています。
では、デメリットはどうでしょうか。
やはり最初に挙げられるのは導入価格です。新しい技術について最初は高価なのは当然ですが、現状では数千万以上の導入コストが見込まれていますので、ここは機器の普及が待たれるところです。
次に、現状でローカル
5G
向けに割り当てられているのはミリ波である
28GHz
帯のみとなっています。以前書かせていただきましたが、ミリ波は直進性が高く障害物を回り込むことができないため工場内などでは不利となります。これに対しては、
2020
年末にサブ
6
(
4.8GHz
帯)の割り当てが予定されていますので、ミリ波を補完することが可能になりそうです。
また、デメリットかどうか判断の分かれるところですが、免許制という事も導入のハードルになっています。
・プライベート5G
呼び方が紛らわしいのですが、ソフトバンクが
2022
年度に提供開始を予定しているプライベート
5G
というものがあります。
これは企業や自治体の敷地内にソフトバンクが
5G
ネットワークを提供するというマネージドサービスで、企業や自治体は免許の取得が不要というサービスとなる見込みです。
立ち位置としてはパブリック
5G
とローカル
5G
の中間的な位置づけです。
※外部サイト:ソフトバンク ローカル5Gとプライベート5Gの違いとは?
・なぜWi-Fiは免許が不要なのか
このようなタイトルだと、なぜ
Wi-Fi
で免許の話になるのか不思議な方いらっしゃると思います。
そもそも無線の免許を取得した事の無い方がほとんどだと思いますので、ここで簡単に電波法をおさらいしてみましょう。
そもそも、電波法第四条では全ての無線局は免許が必要であることが前提となっています。しかし、これを建前通り運用すると免許手続がお互いに大変になってしまいます。
そこで、小規模な無線設備で特に定めるものに関しては、事前に技術基準に適合していることを証明できれば免許が不要となる旨を定めており、これを技術基準適合証明制度と呼びます。
私たちが使用している機器は上記にある適合表示無線設備に当たるため免許不要で利用できます。証明を受けている機器かどうかを確認するためには、以下の技適マークの有無で判断できます。
現在の技適マーク
旧技適マーク
皆さんの身の回りでは携帯電話・タブレット端末・特定小電力無線局・ゲーム機・無線
LAN
アクセスポイント・ラジコン・ウェアラブルデバイス・ヘッドホン等の無線
LAN
や
Bluetooth
といった無線デバイスについていますので、適法かどうか一度確認してみてください。
※技適マークには例外もあり、モニタ表示も可能ですので必ずしも本体に表示されているとは限りません。また、おもちゃの無線などで極微弱な電波しか発しないものは微弱無線というカテゴリーで技適マークが必要ないものもあります。
さらに、技適マークが無い端末も技術基準を満たしていれば総務省に届け出ることで
180
日以内に限り実験利用できる制度がありますので注意してください。
・今後の展開について
いかがでしょう。
5G
に負けず
Wi-Fi
も順当な進化が進んでいます。
5G
があれば
Wi-Fi
が不要になるという話もささやかれますが、
5G
も万能ではなく電波特性から電波を掴みづらい場所も出てくると想定されます。また、
5G
であっても混雑時のトラフィック低下が懸念されていますが、このような場合は免許が不要な
Wi-Fi
を設置して回避するといった補完関係で共存し続けると想定されています。
むしろ懸念は固定回線です。現在民生用の回線では
NURO
光の地域限定
20Gbps
が今のところ最も高速ですが、ほとんどの地域では
1Gbps
が最大となっています。
また宅内では
1Gbps
が最大というご家庭も多いのではないでしょうか。家庭用の有線環境についても規格上高速なものはたくさんあるのですが、価格がネックとなりなかなか普及に至りません。これを機に低価格化を期待したいと思います。
最後に、しつこいようですが本コラムの速度表記などは論理値ですので誤解の無いようお願いいたします。
それでは、また次回までしばらくお待ちください。
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