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「Startup Boston Week 2022」 &「Nvidia GTC」イベントレポート

コラムイメージ

IDアメリカ
ハムザ・アフメッド顔写真

こんにちは。IDアメリカのハムザです。
 
アメリカでは今年からマスク着用の規制も解除され、人が集まるイベント会場ではマスクを付けているものは少数になっています。今回レポートするイベントは「Startup Boston Week」はマサチューセッツ州、同時期に「Nvidia GTC」はカリフォルニア州で開催されました。どちらもハイブリッドイベントであったため、バーチャルで両イベントに参加することが出来ました。コロナが落ち着いてきてはいるものの、人が移動せずに参加できる利点があり、今後のイベントはハイブリッドが一般的になっていくでしょう。

Startup Boston Week

NCSCのProducts & services2022年9月19日~9月22日 

 

マサチューセッツ州で行われたこのイベントはボストンにある組織「Startup Boston」が開催しているものです。Startup Bostonはマサチューセッツ州にあるスタートアップをサポートする組織で、2016年に設立したこの組織はスタートアップ向けのイベントを開催することでコミュニティを広げ、ネットワーキングサポートをしてくれます。
 
Startup Bostonの使命
「私たちの使命は、業界コミュニティ、学習コミュニティ、キャリアコミュニティなど、あなたとコミュニティをつなぐお手伝いをすることです。」
※英文邦訳
 
このイベントでのトピックはスタートアップに対するアドバイスだけでなく、法律や技術の話もされており、このレポートではWeb3.0に関連した内容について記述いたします。

Nvidia GTC

Nvidia GTC2022年9月19日~9月21日

 

カリフォルニア州で行われたこのイベント「NVIDIA GTC (GPU Technology Conference)」はアメリカの大手企業Nvidia社が開催しました。Nvidia社 は、人工知能のハードウェアおよびソフトウェアにおける世界的なリーダーであり、Nvidiaのプロフェッショナル向けGPUは、建築、エンジニアリング、建設、メディア、エンターテインメント、自動車、科学研究、製造設計などの分野のワークステーションに採用されています。
 
NVIDIA GTC (GPU Technology Conference) は、開発者、エンジニア、研究者、発明家、IT専門家が集まる開発者向けのグローバルなAIカンファレンスです。 トピックは、人工知能(AI)、コンピュータグラフィックス、データサイエンス、機械学習、自律マシンなどに焦点をあてています。

Startup Bostonセッション

Web 3.0とは?スタートアップが必要な知識

★Web 3.0の説明が必要な場合は、こちらを参考にしてください。

Web 2.0懸念点

Web 2.0の技術は大手企業に大きなアドバンテージを与えてしまいます。スタートアップが大手企業のデータやプラットフォームを使っている場合、規制などで製品が使えなくなるリスクも存在します。スタートアップにとってWeb 3.0はこれらの大手企業から独立するための手段になります。データがブロックチェーン上に保存されるため、その活用は自由になり、大手からの規制を避けることができます。そのため、スタートアップは今後Web 3.0戦略を考えることが勧められます。
 
もう1つの懸念点として、Web 2.0で保存されているデータのセキュリティはデータを所有している企業が責任をもって守るべきですが、多くの企業は脆弱なセキュリティを使っており、ハッキングされるリスクがあります。ブロックチェーンはセキュリティを意識して作られた技術のため、企業は保存時の暗号化対応など気にする必要がなくなります。このため、コストも削減でき、セキュリティも強化できます。★Web 3.0の説明が必要な場合は、こちらを参考にしてください。

Web 3.0利点

「今のインターネット構造は他社のマンションを借りているようなものです。自分の家ではないので、リフォームしても、家主が追い出せばその努力はなくなってしまいます。Web 3.0上のインターネットは自分の家のようなものなのです。家をリフォームさせることで得られる価値を上げることができる上、後に売る時には、その価値分を得ることができます」
 
データが自分のものとして意識すれば、人はより質の高いデータを保存してくれるであろうとスピーカーは語っていました。Web 3.0を検討する時に以下の利点を参考に活用しましょう。
  • ブロックチェーンに保存されているデータの動きは全て自動的に記録され、ログ対応をせずにブロックチェーンを活用することができる
  • データの所有者に権利を与えプライバシーを上げる
  • ブロックチェーンに関わる技術は全てオープンソースのため、大手企業に規制をかけられることはない
  • 自動的に分散化することで冗長性を期待できる
Web 3.0が一般的になってもWeb 2.0が消えるわけではありません。Web 2.0でのユースケースは多く、Web 3.0への移行を考える時、Web 3.0が今のサービスに必要かを検討する必要があります。

ブロックチェーンの法律

ブロックチェーンは仮想通貨やNFTなど資産価値を持ちつつこともあり、通貨となりうるため、政府も規制強化に取り組みを始めています。これらの取り組みを意識していないと罰金の対象や政府からプラットフォームの閉鎖がされることもあります。その上、ブロックチェーンは普通の通貨と違い、グローバルで使用可能なため、自国だけでなく、他国の規制を考慮する必要があります。現時点でのアメリカで、もし新たなトークン(ビットコインやPolygonなど)を作る際に考慮する必要があるのは以下の通りです。
  • 期待収益を持ないこと:トークンを投資目的で作らない
  • 投資家よりコンシューマ向けに作ること
  • リリースする前にトークンの価値を発表すること
  • プラットフォームができる前にトークンを売ること
これらを考慮しないと政府から処罰が下される場合があります。
 
もし投資目的のトークンを作る場合は以下の方法で承認を受け、販売許可を得る必要があります:
  • Regulation D:トークンは投資家のみに売る。投資家とは年間少なくとも1人$20万か夫婦で$30万を儲けるものに該当する
  • Regulation A:プラットフォームとトークンを作り、販売するまで1年間待機。このあいだにSECの問い合わせなどに回答する。もっとも一般的。
  • Regulation S:アメリカ以外の国で販売したい場合。アメリカでの販売を禁じる。1年たったあとのみアメリカでの販売を許可する。
  • Regulation CF:$5Mが投資家でないコンシューマにクラウドファンディング得られた場合は問題ない。プラットフォームができ次第、トークンを与える仕組みである。
規定は頻繁に変わっていますが、一度でも承認を得て販売許可を得られれば、その後の承認の必要はありません。これらの取り組みはアメリカ政府のみで、ほかの国も独自の規制を行っています。おすすめするのは最も規制の厳しい国でトークンに取り組むことです。最も厳しい場所で問題なければほとんどの場所で問題ないはずです。もちろん弁護士と全てを確認しておくことも重要です。

競争情報(Competitive Intelligence)

競合情報の定義:
「組織の外で何が起こっているかを合法的に知り、その情報に基づいて行動できるように自信を持つこと。」
 
競合情報への第一歩。
  • 検索エンジンで、競合他社が何をしているかを検索し、すべてエクセルで記録しておく
  • Googleで検索したときに自社が表示されるようなキーワードを考える
  • フィールド・インテリジェンス:自分が聞いたこと、他の人がその会社について聞いたことを集める。ヒント:競合のニュースレターに登録する
  • 競合他社のターゲット市場とその市場に対する言葉の使い方をチェック
 
競合情報は多くのチームに含まれていますが、初期段階のビジネスでは、セールスとマーケチームがこの情報から最も大きな利益を得ます。スタートアップがマーケットに入る前にこのような調査を行うのは必須です。スピーカーによると参考にする情報として、競合が使っている色合いやフォントも知ることが重要である。

Nvidia GTC

製造メタバース

メタバースの使用例/進歩。
  • 生産の監視、問題の分析、(物理ベースの)ソリューションのシミュレーション、また製品デザインにも有用で、製品がどのように見えるかを正確に表示するのに役立ちます。
産業界(生産設備)での没入型リアルタイム・コミュニケーションの提供。メタバースは、製品設計が可能な限り仮想環境に留まることを可能にし、機械的・物理的なリソースを節約することができます。

事例:自動車業界における技術向上のプランニング(Siemens)

Siemensは、包括的なデジタルツインを構築するソフトウェアに取り組んでいます。シミュレーションは部分的にしか機能しませんが、NVIDIA GPUと連携することで、シミュレーションをよりリアルにすることができます。メルセデス・ベンツはデジタルツインのエコシステム作りに着手し、他社の技術も取り込みはじめ、試験を行っています。工場を強化する時にリアルに近いシミュレーションを行うことで5年かかる工場づくりを事前に確認することができます。

事例:倉庫でロボット - Robust.AI

ロジスティクス・オペレーションは、消費者の需要の高まりと併せて迅速な配送対応が課題とされています。労働力と予算や倉庫に合った自動化ソリューションの不足の両方によって制限されています。(全倉庫の80%は自動化されていません)。
 
自動化されていない80%の倉庫では、生産性と業務効率を向上させる自動化が絶対に必要であり、さまざまなビジネスの組み合わせや将来の変化にも対応できる適応性が必要です。また、倉庫が自動化されることで人の雇用が減るのは好ましくないので、人と一緒に働く自動化ソリューションが必要です。
 
この問題を解決するために作られたソフトウェア:Grace
 
このソフトウェアは、どんな倉庫でも、どんなワークフローでも、人とロボットとのダイナミックなコラボレーションを可能にします。
  • コードの設定やカスタマイズは必要ありません。
  • AIによる最適化で、人とロボットの間のワークフローを動的に計画し、状況の変化に応じて常に適応していくことができます。
  • また、AIは一定レベルの状況認識能力を備えており、人間の言葉や職場の規範で世界を理解し、作業員に価値ある情報を提供することができます。

Omniverseの紹介

イベントでNvidiaはメタバースを作るツールOmniverseを紹介しました。Omniverseは高い処理力でいままでにないリアルな環境をデジタルで再現することができます。Omniverseで作った工場を見るとかなり忠実にできているのが分かります。しかし、Omniverse一番の機能はOmniverse外で作ったファイルを、Omniverseプラットフォームで使えることです。
 
メタバースを作る際にはいろいろなツールが必要になります。3Dモデルの情報はBlenderから、IoTのパラメータはAutocad Revit、動きの情報はUnityからと、いろいろのフォーマットのデータを自動的に使えるフォーマットに変化し、活用することができます。この技術を使うことでいろいろな専門家のコラボレーションが可能になります。クラウド上で展開すれば何人もが同じ環境を編集することができます。

デジタルツイン自動運転

Nvidiaが発表したことで注目を集めたものは、車の自動運転でした。Omniverseで仮想の町を組み立て、その仮想の町で車を自動運転させることで、現実世界で試す前に、より多くのシナリオで試すことができます。自動運転プログラム自体はデジタル上の道で走っていることは関知せず、全く同じプログラムが現実世界の車に導入されます。これの利点以下の通りです。
 
  • 普段自動運転が禁じられている地域でもAIモデルのトレーニングができる
  • より多くの時間自動運転を試すことが可能
  • 滅多にないケースを再現し、トレーニングさせることができる
 
通常は自動運転のアルゴリズムは、運転とテストの後に結果データを確認して変更するもです。しかし、その場合、実際車の中にいないと、車がどのように町をナビゲートしたのかがわからないのです。Omniverse上では全てを録画することが可能で、もっと正確なパフォーマンスを参考することができます。
 
Nvidiaは今後自動運転車の資格を得るための取り組みもこのデジタルツインで行える未来を語っていました。

AIの進歩

今回のイベントでNvidiaはコンシューマ向けのGPU RTX4000と、企業向けGPU HX6000を発表しました。これらの部品はゲームでの性能を上げるだけでなく、AIのトレーニングや処理に使われています。NvidiaのGPUがAIに特化している理由は部品に使われているCUDAコアにあります。CUDAは10年以上前にAIのために作られ、そのためにライブラリーが使われています。数年前にTensorコアを導入していることでAIの性能が高まっており、新たなGPUには第4世代Tensorコアが導入されているとのことです。
 
「AL&MLの活用において、多くの企業は現在どのような状況にあるのでしょうか?」
 
Adept社によると、現在の企業はAIをまだスタート段階でしか活用していないと語っています。オンラインではいくつかのパッケージやAPI、サービスが提供されていますが、多くの企業はそれらの最先端技術を自社の企業や製品に適用する専門家を抱えてはいません。企業はまだ、自分たちの特定のビジネスにおいて何が意味を持つのか、そのためにAIをどのように使いたいのかを見極める必要があります。

Adept AIでPCとコラボレーション

Adept社では「Adept AI」を開発しており、将来的にはAdept AIを使ってAIを構築することも可能になることを期待しています。Adept AIはユーザとコンピュータをより繫げるものです。現在のPCではユーザが全てのコマンド(アプリの立ち上げやファイルの検索)を起動させます。Adept AIを導入しているPCはユーザの操作を理解し、必要になりそうなものを自動的にユーザに勧め、ユーザはPCをより効率よく使うことが可能です。

AIアシスタント

Adept社では「Adept AI」を開発しており、将来的にはAdept AIを使ってAIイベントの間、NvidiaはAIを使ったアシスタント、Nvidia Rivaを紹介しました。Omniverseの開発の際に使用者がコマンドを話すことで、見ているスクリーンからコマンドの意味を理解し実行させます。Nvidiaの会話型AIの最大の特徴は話している言葉の理解だけでなく、今行っている動作で言葉の意味を理解することでした。Nvidiaが見せたデモでは、車のモデルを3Dで編集していて、使用者が「サイズを小さくする」と話すと、車のサイズが小さくなりました。今までのAIは言葉の意味が分かっても、状況にあわせて実行するためには、より多くの言葉が必要であったため、少し不自然な感じになっていました。

イベントまとめ

Startup Boston Weekはスタートアップや中小企業向けで、Nvidia GTCは中規模企業から大手企業向けでしたが、両方とも作業の効率化を主なトピックとして取り上げていました。スタートアップはリソースが少ないため効率的に作業できる手段を探しており、大手企業は値段の高い最先端技術をいかに効率的に導入できるかを探しています。

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