ICTサービス第5部
テクニカルスペシャリスト 千葉 由紀祐
こんにちは、テクニカルスペシャリストの千葉です。
新たな年度を迎え、新しい業務や技術にチャレンジをされる方も多いのではないでしょうか?私も今月から新たなお客様先で心機一転取り組んでいます。
新たな年度を迎え、新しい業務や技術にチャレンジをされる方も多いのではないでしょうか?私も今月から新たなお客様先で心機一転取り組んでいます。
「DX白書2023」公開
先月、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)がDX白書2023 を公開しました。
前回のDX白書2021の続刊となりますが、日米企業を対象とした企業戦略・人材・技術などに関するアンケート調査結果や、前回調査からの経年変化、国内のDX推進への課題や取組みの方向性などが解説されています。
DX白書2023によると、DXに取り組んでいる企業は、2021年度調査では55.8%、2022年度調査では69.3%と着実に増加しています。一方、DX白書2023の副題が、“進み始めた「デジタル」、進まない「トランスフォーメーション」”となっている通り、データのデジタル化(デジタイゼーション)や、業務プロセスのデジタル化(デジタライゼーション)は進んでいるものの、業務改革やビジネス改革といったデジタルトランスフォーメーションが進んでいない状況が、アンケート結果から見えています。
DXの取組みの成果が出ていると回答した企業のうち、「アナログ・物理データのデジタル化」や「業務の効率化による生産性の向上」は70%以上が成果が出ていると回答しているのに対して、「新規製品・サービスの創出」や「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」などのデジタルトランスフォーメーションの項目は20%~40%台に留まっています。米国企業がどの項目も65%以上である点から見ても、取組み強化の余地がまだあると言えます。
では、取り組みを強化するために、ITシステムをどう整備・構築していけば良いでしょうか?
今回は、“トランスフォーメーションを進めるITシステムとは”について述べていきたいと思います。
前回のDX白書2021の続刊となりますが、日米企業を対象とした企業戦略・人材・技術などに関するアンケート調査結果や、前回調査からの経年変化、国内のDX推進への課題や取組みの方向性などが解説されています。
DX白書2023によると、DXに取り組んでいる企業は、2021年度調査では55.8%、2022年度調査では69.3%と着実に増加しています。一方、DX白書2023の副題が、“進み始めた「デジタル」、進まない「トランスフォーメーション」”となっている通り、データのデジタル化(デジタイゼーション)や、業務プロセスのデジタル化(デジタライゼーション)は進んでいるものの、業務改革やビジネス改革といったデジタルトランスフォーメーションが進んでいない状況が、アンケート結果から見えています。
引用:IPA「DX白書2023 」P107
DXの取組みの成果が出ていると回答した企業のうち、「アナログ・物理データのデジタル化」や「業務の効率化による生産性の向上」は70%以上が成果が出ていると回答しているのに対して、「新規製品・サービスの創出」や「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」などのデジタルトランスフォーメーションの項目は20%~40%台に留まっています。米国企業がどの項目も65%以上である点から見ても、取組み強化の余地がまだあると言えます。
では、取り組みを強化するために、ITシステムをどう整備・構築していけば良いでしょうか?
今回は、“トランスフォーメーションを進めるITシステムとは”について述べていきたいと思います。
DXを実現するためのITシステムのあるべき姿
新たなサービスの創出、ビジネスモデル変革といったDXを実現するITシステムの要件については、IPAが公開しているDX実践手引書 ITシステム構築編(完成第1.0版) が参考になります。
同手引書は、DX推進者向けの手引書として、2021年11月に暫定第1版が公開され、以降、2022年1月、同年4月の改訂を経て、先月、完成第1.0版が公開されました。
同手引書では、経営、事業、技術、人材・組織といった観点でDX実現のための考え方が纏められています。その内の技術の観点において、「スピード・アジリティ」、「社会最適」、「データ活用」の3つがDXを実現するためのITシステムの要素として挙げられています。
この3つのポイントは、経済産業省が公開したDX推進指標に定めた項目と概ね一致していますが、DX推進指標での「全社最適」に対し、全社だけではなく外部サービスも視野に入れるべきとして「社会最適」となっている点が異なります。
それぞれのポイントの概要と実現のための取り組み例は以下の通りです。
同手引書は、DX推進者向けの手引書として、2021年11月に暫定第1版が公開され、以降、2022年1月、同年4月の改訂を経て、先月、完成第1.0版が公開されました。
同手引書では、経営、事業、技術、人材・組織といった観点でDX実現のための考え方が纏められています。その内の技術の観点において、「スピード・アジリティ」、「社会最適」、「データ活用」の3つがDXを実現するためのITシステムの要素として挙げられています。
引用:IPA「DX実践手引書 ITシステム構築編(完成第1.0版) 」P74
この3つのポイントは、経済産業省が公開したDX推進指標に定めた項目と概ね一致していますが、DX推進指標での「全社最適」に対し、全社だけではなく外部サービスも視野に入れるべきとして「社会最適」となっている点が異なります。
それぞれのポイントの概要と実現のための取り組み例は以下の通りです。
スピード・アジリティの向上
スピード・アジリティとは、市場やニーズ、環境の変化に応じて素早く臨機応変に対応できる力です。ITシステム、開発・運用体制に俊敏性や柔軟性を向上させることであり、施策として、疎結合・API・クラウド活用が挙げられます。
個々のサービスを独立・疎結合にしAPIで連携する事や、マイクロサービス化を行う事によって、機能追加や改変による他機能・他システムへの影響を最小限に留め、開発・テストの時間・コスト削減による俊敏性や柔軟性の向上が期待できます。また、クラウド活用によるスモールスタートや需要にあわせたスケールアウトなども有効です。
個々のサービスを独立・疎結合にしAPIで連携する事や、マイクロサービス化を行う事によって、機能追加や改変による他機能・他システムへの影響を最小限に留め、開発・テストの時間・コスト削減による俊敏性や柔軟性の向上が期待できます。また、クラウド活用によるスモールスタートや需要にあわせたスケールアウトなども有効です。
データ活用の実現
データ活用を実現するには、企業内外の個々の業務システムや社外システムからデータを収集し、利用し易い形式に加工・蓄積・保存ができ、且つ高度な分析を行うためのデータ活用基盤が求められます。そして、収集・分析するデータが変化する事を想定し、業務システムとデータ活用基盤とのAPI連携を安定して行うために、API管理の検討や業務システム所管部署との綿密な調整などのプロセスが大切です。
また、データ活用において重要となるのが、収集データの品質管理です。データが正確で、欠落のない、最新の状態でなければ有効な分析結果が導かれないからです。
当手引書では、データ活用の促進のための条件として以下の3つの条件を挙げています。
データ活用にはそのほか、セキュリティ確保、データ量に合わせた拡張性などを考慮する必要がありますが、データ活用の目的である経験や勘に頼らないデータドリブンな意思決定・課題解決の実現には、データの収集と品質管理の2つの仕組み整備が不可欠です。
また、データ活用において重要となるのが、収集データの品質管理です。データが正確で、欠落のない、最新の状態でなければ有効な分析結果が導かれないからです。
当手引書では、データ活用の促進のための条件として以下の3つの条件を挙げています。
引用:IPA「DX実践手引書 ITシステム構築編(完成第1.0版) 」P65
データ活用にはそのほか、セキュリティ確保、データ量に合わせた拡張性などを考慮する必要がありますが、データ活用の目的である経験や勘に頼らないデータドリブンな意思決定・課題解決の実現には、データの収集と品質管理の2つの仕組み整備が不可欠です。
社会最適の実現
社会最適の実現とは、外部リソースを活用した全社システムの最適化がポイントです。
既存システムの運営・保守に多くの費用を要していた場合、新たなビジネスへのIT投資が困難なため、他社との競争分野にITリソースを集中させ、バックオフィス等の非競争分野は外部サービスを活用しコストを抑えるなどの取組みが求められます。
競争分野については、変化の早い市場ニーズ・技術に自社のリソースだけで対応するには限界があるため、技術を保有し実績があるベンダーやサービス提供事業者とのパートナーシップの提携を積極的に行っていく必要があります。
一方、非競争分野については、SaaSなどの外部サービスを活用することで、システム規模にあわせたコストに抑え、また、業務の標準化が図り易いサービス・製品を選定することで、導入時のカスタマイズ費用、バージョンアップ時の保守費用を抑える事が有効です。
既存システムの運営・保守に多くの費用を要していた場合、新たなビジネスへのIT投資が困難なため、他社との競争分野にITリソースを集中させ、バックオフィス等の非競争分野は外部サービスを活用しコストを抑えるなどの取組みが求められます。
競争分野については、変化の早い市場ニーズ・技術に自社のリソースだけで対応するには限界があるため、技術を保有し実績があるベンダーやサービス提供事業者とのパートナーシップの提携を積極的に行っていく必要があります。
一方、非競争分野については、SaaSなどの外部サービスを活用することで、システム規模にあわせたコストに抑え、また、業務の標準化が図り易いサービス・製品を選定することで、導入時のカスタマイズ費用、バージョンアップ時の保守費用を抑える事が有効です。
ITシステムのあるべき姿の現在地
ここで、DX白書2023でのアンケート結果から、これら3要素に関する企業の重要度と達成度の状況を見ると、重要度はどの項目も60%を超えており、また日米の差もあまりありませんが、一方、達成度については大きな差があります。
3要件に該当する多くの項目で“達成している”が5%足らず、“まあまあ達成している”を含めても30%程です。1/3程の企業でしか達成を実感していません。
重要度が高いと認識していても達成が困難という状況と言えます。
引用:IPA「DX白書2023 」P124、125
3要件に該当する多くの項目で“達成している”が5%足らず、“まあまあ達成している”を含めても30%程です。1/3程の企業でしか達成を実感していません。
重要度が高いと認識していても達成が困難という状況と言えます。
最後に
どのような取組みを行うことでITシステムのあるべき姿の実現に繋がるのか、私の考えを述べたいと思います。
- 俯瞰的に考え、旗振りができる人を設ける
APIやデータ活用基盤などを推進する際、俯瞰的に考え、各関係部署の意見を取り纏め、指揮を執る人がいなければ進みません。また、トップの理解なくして改革は進まないことから、トップと指揮者の連携は不可欠です。
そして、トップダウンに偏ることなく、全ての関係部署の意見がしっかり出てくる様、ボトムアップアプローチの考慮も必要です。 - 組織の横連携をできる限り強め、リソースの共有を図る
リソースの共有利用は対応の重複を避けられ、リソースの有効活用に繋がります。 - 業務プロセスにあわせたカスタマイズを行う前に、業務プロセスを見直す
現在の業務プロセスがベストであるか自答する事で、業務変革意識が高まります。
特に非競争分野はカスタマイズしない、または最小限に留める様、業務変革を追求します。 - 取組み結果を必ず評価し、次に活かせる仕組みを作る
新しい取組みを次々と進める状況において、“作って満足“しない様、結果を評価・蓄積・展開し、次に繋がる仕組みを作ります。その際、失敗も経験として蓄積される様、考慮します。 - 内製化と外部サービスの活用のバランスを図る
内製化の推進によって変革スピードが遅くならない様、外部サービスとの共創を視野に入れて活用を検討します。
これらの取り組みは「スピード・アジリティ」、「社会最適」、「データ活用」いずれの実現においても関係するものになります。DXの推進には、技術の観点だけでなく、経営、事業、人材・組織の観点など複合的な取り組みが必要となりますが、ITシステムがあるべき姿になるための追求は、DXの大きな推進力になり得る事は間違いありません。
本コラムで取り上げた取り組みがトランスフォーメーションを進める参考になれば幸いです。なお、DX白書2023は、現在地を知り、DXの取組みの方向性の確認・検討をする上で、大いに参考になると思います。
白書は400ページ程ありますが、40ページ程に纏められたエグゼクティブサマリー も公開されていますので、まずはこちらを確認して概要を把握されるのも良いと思います。
では、また次回コラムでお会いしましょう。