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企業戦略としてのデータ利活用

2023-06-22

ICT

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株式会社IDデータセンターマネジメント
ICTサービス第6部
テクニカルスペシャリスト 千葉 由紀祐顔写真

こんにちは、テクニカルスペシャリストの千葉です。
 
関東も6月8日に梅雨入りし、雨と暑さでじめじめしていますね。私は最近、淡水魚をメインとした水族館で、涼しそうな魚達を見てリフレッシュしています。以前は自宅で水槽を立ち上げて熱帯魚の鑑賞をしていましたが、やはりプロの方が作る水槽は美しく、少し離れた場所にある自宅の水槽だと思って通えるよう、年間パスポートを購入しました。気分転換をしつつ、梅雨を乗り切っていきたいです。

DXを実現するためのデータ活用

前回のコラムで、DXを実現するためのITシステムの3要素として「スピード・アジリティ」、「社会最適」、「データ活用」を取り上げました。
そのうち「データ活用」については、経験や勘に頼らないデータドリブンな意思決定をする上で欠かせないものであり、以下の2つの取組みが欠かせないと述べました。

  1. 企業内外の個々の業務システムや社外システムからデータを収集し、利用し易い形式に加工・蓄積・保存ができ、且つ高度な分析を行うためのデータ活用基盤の構築
  2. 収集するデータが正確で欠落がなく最新の状態にするためのデータ品質管理の実施

一方、情報処理推進機構(IPA)のDX白書2023の企業アンケートの結果を見ると、半数以上(55%)の企業がデータを利活用していると回答しているものの、データ利活用の効果(売上増加、コスト削減)があると回答した企業は、3割に満たない状況になっています。


IPA「DX白書2023 」


IPA「DX白書2023 」引用:IPA「DX白書2023」P321、327、328


今回は、データ利活用の取組みをより推進させるための対応策について述べていきたいと思います。

データ活用基盤の全体像

データ利活用に必要なデータ活用基盤とは下図のイメージの通り、企業内外からのデータを“収集・保管”の上、利用し易い形式に“整形”・“蓄積”し、高度な分析結果を“活用”する一連のプロセスを実現するためのものです。


IPA「DX白書2023 」
 引用:IPA「DX白書2023」P283


各プロセスを1つの部門で行う企業もあるかもしれませんが、多くの企業はデータの収集、整形、蓄積を担うデータ管理部門、蓄積されたデータを分析・活用するデータ利用部門が別にあり、連携しつつ運用しているケースが多いと思います。
そのデータ管理部門とデータ利用部門、それぞれがデータの有効活用を推進する上での主な課題として、以下のようなものが挙げられます。


データ管理部門:
取り扱うデータ量の増加、データ種類の多様化、高品質なデータの要求などに対応するため、各プロセスの整備・強化が求められる

データ利用部門:
変化の激しい外部環境・顧客ニーズを捉えるために、より迅速かつ柔軟なデータ分析・活用が求められる


こうした課題に対してどのように対応していけば良いでしょうか?

各課題への対応策

DataOpsの導入


1点目のデータ管理部門の課題「各プロセスの整備・強化」への対応策としては、データ管理部門とデータ利用部門の連携強化のためのアプローチであるDataOpsの導入が挙げられます。

DataOpsは、DevOps(開発と運用)と同様、作業の統合・自動化によりライフサイクルの短縮を図り、継続的改善による価値創出を図るものであり、アジャイル手法を取り入れています。

DevOpsが、ソフトウェアのテストやデプロイを自動化することで開発スピードを高め、運用のフィードバックにより開発と運用の乖離をなくし、継続的改善で価値を高めるのと同様、DataOpsでは、データ利用部門の求めるデータのアジリティ(機敏性)を高めるために、データの収集・整形・蓄積のプロセスを自動化し、データ利用部門のデータ活用目的の明確化・可視化により、データ管理部門との共通認識を確保します。

また、各所に散らばった(サイロ化した)データの一元管理、メタデータのカタログ化を行うことで、品質・鮮度が確保された信頼性の高いデータとなる様、両部門で調整・連携します。

プロセスの自動化によるスピード・アジリティの向上、アジャイル手法による継続的改善などDataOpsとDevOpsで取組みの共通点は多いものの、データ利活用の推進にはより業務的観点での連携が求められる点で、DataOpsの方が両部門間の連携を密に行う必要があると思います。

データ活用基盤における各プロセス強化を図る上でDataOpsの取組みは有効と言えます。

データの民主化


2点目のデータ利用部門の課題「迅速かつ柔軟なデータ分析・活用」への対応策としては、データを必要とする人がデータにアクセスできる環境から、全ての社員がデータにアクセスできる環境に整備する考え方(データの民主化)が挙げられます。

データ分析を経営者やデータサイエンティストなどの一部の人に任すのではなく、全社員がデータ分析を行い、データに基づく意思決定ができることは変化の激しい外部環境・顧客ニーズに対応するための大きな強みとなります。

見えないことを対応する事は困難ですが、見えることで改善・提案が可能となり、変化にあわせた主体的な行動が期待できます。
 
データの民主化の実現には、データのアクセス環境を整備するだけでなく、データ利用者のデータリテラシーを高める施策や、信頼性が確保されたデータをいつでも利用できること(1点目の課題解決)が必要となります。
 
変化の激しい外部環境・顧客ニーズを捉えたデータの有効活用には、データに強い組織作りがポイントです。


イメージ画像

まとめ

変化の激しい現代において、社内外の多種多様で大量のデータを分析・活用して、データドリブン型の意思決定から新しい価値・サービスを生み出すためには、データ利活用が欠かせません。

データの利活用には、データ活用基盤におけるデータ管理部門とデータ利用部門のDataOpsのアプローチ、および、一部の社員だけでなく全社員がデータにアクセスできる環境を整備し、データに強い組織作りがポイントとなります。
 
いずれにおいても、各部門のみで対応できることではなく、全社横断的な取組みが必要であり、企業戦略として推進しなければなりません。また、データの利活用への取組みは、外部環境の状況や技術の進化などで変化し、継続的改善の中で適宜組み込んでいかなければなりません。
 
引き続き、データ利活用の動向については、本コラムで追っていきたいと思います。

では、また次回コラムでお会いしましょう。


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千葉 由紀祐

株式会社IDデータセンターマネジメント テクニカルスペシャリスト

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