KNOWLEDGE - COLUMN ナレッジ - コラム

自動化2.0への期待と課題

コラムイメージ

関連するソリューション

業務改革

AI

IDアメリカ
ハムザ・アフメッド顔写真

こんにちは、IDアメリカのハムザ・アフメッドです。
テクノロジーの進化は、自動化の発展と密接に結びついています。


テクノロジーの進化と自動化の発展例
  • 製粉工場は小麦粉の生産を機械化し、農業従事者の方々を作業に費やす時間と労力から解放
  • 灌漑の登場は、広大な距離を水を運ぶという骨の折れる仕事の負担を軽減)
  • 産業革命は、自動化を活用することで生産性を大幅に向上)
  • フォードの技術革新に代表される自動車の普及は、製造工程に自動化を取り入れることで可能に

歴史を通じて、自動化は技術進歩の原動力となってきました。手間のかかる作業を自動化システムに委ねることで、私たちはより野心的な目標を追求する自由を得ました。

自動化は、人類の歴史において最大の技術的進歩の一つだと思います。これは様々な領域で顕著に表れており、中でもITと情報技術はその代表例で、自動化は現代世界において便利なものから絶対に必要なものへと変化しています。

現代のIT領域では、自動化は効率性とシームレスな操作の代名詞です。例えば、Google検索すると、何千もの自動化された操作が複雑に絡み合い、1秒以内にコンテンツをデバイスに配信してくれます。

複雑なシステムが複数のサーバーと連携し、クエリに関連するデータを検証して取得します。これらのプロセスは、ユーザーの認証やデータへのアクセスなどでも再現されます。

驚くべき点は、これらのタスクが自律的に、凄まじいスピードで実行されることで、今日のテクノロジー主導の世界における自動化の極めて重要な役割を強調しています。メディア、教育、医療、インフラ、緊急サービスなど、さまざまな分野でITへの依存が顕著になっており、障害が発生した場合その影響は甚大なものになります。

ネットワーク・プロバイダーが99.999%(1年間のダウンタイムに換算すると約5分)の無停止を保証するという厳しい基準があり、このレベルの信頼性を維持するために、ITプロフェッショナルは監視ツールを採用し、発生しうる問題を迅速に解決しています。

しかし、システムが拡大し、多くの企業がデジタル・オペレーションに移行するにつれ、自動化ツールの助けを借りたとしても、ネットワークの管理はますます複雑になってしまいます。既存の自動化ツールでは限界が近づいており、「自動化2.0」と呼ばれる高度なIT自動化の出現が待たれます。

自動化の歴史

IT自動化の主な目的は、ITオペレーションの合理化と簡素化です。その起源は、メインフレーム時代のスケジューリングやバッチ処理といった初歩的なタスクにまで遡ります。

ネットワーク・インフラが進歩するにつれ、ネットワーク・デバイスのステータスを監視する必要性が生じ、SNMP(Simple Network Management Protocol)の開発につながりました。

2000年代初頭には、インターネットの爆発的な成長により、ネットワーク・リソースのプロビジョニング、スケーリング、および限定された潜在的な問題への自動応答を含む、様々な管理タスクの自動化が促進されました。2000年代の終わりには、テストとデプロイメントのための自動化ツールの作成に至り、迅速な開発に重点が移りました。

従来、これらの自動化プロセスには、オペレーターによる手動入力が必要で、オペレーターは自動化のためのタスクを定義し、システムの拡大や縮小に合わせてパラメーターを調整していました。しかし、2010年代終盤に企業がDXを進めるにつれて、この方法は大きな課題に直面しました。COVID-19の流行はこの問題を悪化させ、ユーザー需要の急増に伴うネットワーク停止を招いてしまいました。

システム障害がもたらす経済的打撃は甚大です。Enconnex社によると、システム障害の70%は10万ドル以上、25%は100万ドル以上の費用がかかると言われています。2021年だけでも、Amazon、Meta、Alibabaの3社は、障害によって合計で数十億ドルの損失を被いました。
 
オーストラリアの大手スーパーマーケット2社は、技術的な問題に見舞われ、問題が解決するまで店舗を閉鎖せざるを得なくなりました。NetCovによると、システム障害の代償は1分あたり5,600ドルという驚異的な金額で、このコストは組織の規模が大きいほど大きくなります。
 
また、IT管理が複雑化すればするほど、システム障害の頻度も高くなり関連コストも高くなります。このため、システムの進歩よりも保守にリソースが割かれるようになり、IT業界のイノベーションが阻害される恐れがあります。


イメージ画像


こうした課題に対応するため、AIを活用した高度な自動化サービスが登場し始めています。AIOpsのようなテクノロジーは、AIがタスクを開始し監督することで、オペレーターの役割をタスクの作成からタスクの確認へとシフトさせました
 
ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)は自動化レベルをさらに高め、複雑な手動設定を必要とせず、多様な環境でシームレスに動作します。このようなAIの活用は、自動化2.0と呼ばれるものの中核を形成し、ITランドスケープにおけるインテリジェントで適応性の高い自動化の新時代を象徴しています。このテクノロジーはまだ黎明期にあり、企業に採用され始めたばかりです。

自動化2.0とは

自動化1.0は、同じ処理を繰り返し行う決まったパラメータで動作する単純作業の自動化を指しています。例えば、ロードバランサーは、アクセス数に応じてリソースを増減させるシステムです。
 
このようなタスクの自動化は、アクセス数の増加を検知すると、そのシステムのリソースを増やし、ユーザー数の減少を検知するとリソースを減らすシステムを持つことです。ITオペレーターは、これを機能させるためのパラメータやタスクを設定する必要があります。
 
自動化2.0では、AIは新しいシステムが導入されたことを検知すると、システムがスムーズに稼働するためのパラメーターと必要なタスクを設定し、ITオペレーターにはタスクが作成されたことだけを通知してくれます。
 
これはほんの一例に過ぎませんが、AIを活用したこのようなプロアクティブな自動化が自動化2.0を構成しています。AIを使えば、構造化されていないデータでも発見を行うことができます。
 
これは、データが構造化されていることに依存する通常の自動化では非常に難しいです。また、システムを円滑に稼働させるために必要な変更やタスクをAIがオペレーターに通知することも可能です。
 
IBMは、自動化1.0と2.0の違いを示すために、以下の図を展示しました。


自動化1.0 自動化2.0
構造化されたプロセスとデータ 非構造化プロセスとデータ
サイロオートメーションシステム ITとビジネスオートメーションの融合システム
自動化ボットと人間の間の離散的なハンドオフ 人間とボットの自然なコラボレーション
リアクティブ プロアクティブとリアクティブ

データ入力、抽出、集計、ウェブサイト、ポータル、デスクトップアプリケーション、ドキュメントとの統合

インシデントの診断と解決、変更リスク管理、エンドツーエンプロセスの自動化とオーケストレーション


以下は自動化2.0を構成する技術です。

Artificial Intelligence Operations(AIOps)

AIOps(IT運用のための人工知能)は、IT運用と監視におけるAIの応用を指します。データ収集、データ取り込み、根本原因分析、イベント相関、継続的改善など、さまざまな重要な機能が含まれています。
 
AIOpsの必要性は、ログ情報の管理という課題の増大に対応して生じてきました。最新のシステムでは、1日に何千ものアラートが生成される可能性があり、複数のシステムを扱う場合、リソースに大きな負担がかかります。また、アラートの継続的な監視を任務とする個人にとって一般的な問題になるアラート疲れにもつながります。この疲労は、重要なアラートの見落としにつながり、システム停止のリスクを高めます。
 
AIOpsは、データを収集し、オペレーターの注意が必要なアラートのみを表示することで、これらの課題に対処します。さらに、より単純なアラートを自律的に解決する能力を備えているため、オペレーターのリソースをより複雑なタスクに解放することができます。これにより、IT管理の全体的な信頼性が向上するだけでなく、効率性も改善され、重要な問題に迅速に対処し、卓越した運用を維持することができます。

予測モニタリング

アラートに迅速に対応する能力は極めて重要ですが、潜在的な問題がエスカレートする前にプロアクティブに対処することで、運用負荷を大幅に軽減することができます。そこで活躍するのがAI評価ツールです。このようなツールは、ネットワークの脆弱性をスキャンし、ベスト・プラクティスから逸脱した構成を特定することができるため、潜在的な問題が顕在化する前に回避することができます。

Robotics Process Automation(RPA)

RPAは、反復タスクの実行に正確なパラメータを要求する従来のルールベースの自動化に依存するのではなく、タスクを達成するために人間の行動を模倣することで動作します。例えば、日々のログをコピーし、分析のために別のアプリケーションに転送するタスクを考えてみましょう。RPAは、マウスを動かしてログをコピーし、分析アプリケーションを開いて貼り付けるという人間の操作を再現できます。
 
一方、ルールベースのアプローチでは、ログ取得アプリケーションからログを取得し、APIを利用して分析アプリケーションにデータを転送するプログラムを記述する必要があり、プログラミングに手間がかかります。RPAの場合、オペレータのマウスとキーボードの動きを一度記録するだけで終了です。この非公式な自動化により、タスクの自動化に必要な時間が大幅に短縮され、複雑な反復タスクを簡単に処理できるようになります。
 
さらに、RPAの領域には、インテリジェント・プロセス・オートメーション(IPA)と呼ばれるサブセットが存在します。IPAは、RPAに自然言語処理(NLP)や機械学習(ML)などのAI技術を組み合わせることで、非構造化データや意思決定を含む、より複雑で認知的なタスクを自動化することができます。

スマートアナリティクス

予測モニタリングは潜在的な問題を事前に特定することができますが、スマートアナリティクスはネットワークの運用とセキュリティをより高度なものにしてくれます。このアプローチでは、日々の運用を継続的に監視し、パラメーターを動的に調整してパフォーマンスを最適化し、セキュリティを強化します。
 
ネットワーク運用では、システムがリアルタイムのデータに基づいてさまざまなパラメーターを微調整し、効率性と応答性を高めます。セキュリティ面では、スマート・アナリティクスがユーザーの行動を評価し、異常なログイン時間や見慣れない場所など、不審なアクセス・パターンなどの異常を検出します。この高度な機能は、ITオペレーターの作業負担を軽減するだけでなく、潜在的な懸念にプロアクティブに対処することで、システム全体の信頼性を大幅に高めます。


イメージ画像

自動化2.0の課題

自動化2.0には多くの利点がありますが、導入には技術的な課題と機会的な課題があります。


非現実的な期待
AIをめぐる誇大広告が蔓延し手ごわい障害となっています。AIによる自動化という贅沢な主張と、実現可能な現実のユースケースを区別することは、クライアントにとって依然として困難です。この課題は、自動化2.0の具体的な価値、特に定量化可能な投資収益率を実証する能力に大きく影響します。

価値を生み出すまでの時間
AIは一般的に観察を通じて学習し、通常のデータパターンのモデルを作成し、これらのパターンにソリューションを関連付けることで動作します。しかし、この学習プロセスには時間がかかります。稀な事象に対する正確な検出モデルの開発は数ヶ月に及ぶこともあり、迅速な結果を求める組織の忍耐力が試されます。

技術的な困難
自動化2.0を十分に活用するためには、いくつかの技術的な課題に対処し理解する必要があります。

  • AIモデル内のコンセプト・ドリフト
    コンセプト・ドリフトはAIに蔓延する問題です。より多くのデータがモデルに取り込まれるにつれ、その信頼性は向上します。ただし、多様で常に変化するデータを扱う場合、AIモデル内でドリフトが発生する可能性があります。このドリフトにより、人間のオペレーターなら特定できるような問題を見落としてしまう可能性があります。

  • 技術的な要求
    AIモデルの実行には、リソースとコストがかかります。小規模な組織では、AIに多額の投資をするよりも、監視業務のために人員を追加雇用する方が、費用対効果が高いと考えられます。AIの技術的要求と利用可能なリソースのバランスをとることは、重要な検討事項です。

  • 説明可能性と透明性
    AIが意思決定や推奨を行う際には、その意思決定の根拠を理解することが重要です。プロセスの透明性と説明可能性を確保することは、特に複雑な機械学習モデルが関与する場合、技術的に困難な場合があります。組織は、意思決定プロセスを透明化するよう努めなければなりません。

これらは自動化2.0の導入を決定する際、重要な検討事項です。目標と期待を混同したような導入は、不適切で高価な投資となる可能性があります。

これらの問題の多くは、業界がベストプラクティスを確立しAIが改善され、ハードウェアが安価になるにつれて、時間とともに解決されるかもしれません。

最後に

IT管理が複雑化するにつれ、障害が頻発し関連コストが増大します。その結果、システムを進化させるよりも保守に多くのリソースが割かれるようになり、IT業界のイノベーションが阻害される恐れがあります。
 
IT人材の不足が深刻化する中、自動化2.0を導入することでIT管理を強化し、イノベーションを推進する重要なタスクにリソースを割くことができます。とはいえ、このシフトには、期待されることを十分に考慮し、明確な計画を立てて取り組むことが重要です。
 
不適切な導入は解決策を提供するどころか、問題を悪化させる可能性もあります。したがって、IT管理における高度な自動化のメリットを享受するには、慎重な計画と実行が不可欠です。


当サイトの内容、テキスト、画像等の転載・転記・使用する場合は問い合わせよりご連絡下さい。
エバンジェリストによるコラムやIDグループからのお知らせなどを
メルマガでお届けしています。

メルマガ登録ボタン

ハムザ・アフメッド

IDアメリカ

この執筆者の記事一覧

関連するソリューション

業務改革

AI

関連するナレッジ・コラム

レストラン業界 ITトレンドレビュー2024年

重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案 -日本を守るセキュリティクリアランス

AI倫理~AIとの向き合い方と制度~