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技術発展に避けて通れないAIの「標準化」とは?

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エバンジェリスト・フェロー 玉越 元啓

今回のテーマは、「コモディティ化するAIとAI関連標準仕様」についてです。新技術や実験・実装に関する記事は数多く目にしますが、今後AIをサービスや製品に組み込むにあたり避けては通れないテーマが「標準化」です。
 
- 展示会の来場の御礼
- コモディティ化するAIとは
- なぜ今、「標準化」なのか
- 人工知能の標準化
- 規格開発状況

展示会の来場の御礼

前回のコラムにて、AI検索技術を活用したデモ展示のご案内を予告させていただきました。InterBEE2021に出展させていただきました。多くの方に来場いただき、ありがとうございます。出展概要と展示したシステムについては、ニュースリリースの抜粋と展示内容の説明へのリンクを残しておきます。

AI運用支援システムの概要
AI運用支援システムの概要

・DXコンサルティング、インフォメーション・ディベロプメント、NHKテクノロジーズ社とAI運用支援システムを開発
 
 
※外部サイト:・NHKテクノロジーズ 「Inter BEE 2021」出展のお知らせ

コモディティ化するAIとは

「AIの民主化」「AIのコモディティ化」等の目標や未来像を耳にされた方もいらっしゃると思いますが、そもそも民主化やコモディティ化とはどんなことなのでしょうか。ここでは、AIと同じように技術革新を経て現在コモディティ化されている自動車の歴史になぞらえて説明します。
 
自動車の大まかな歴史は、およそ下のような流れになっています。
1,蒸気機関の発明と蒸気自動車が開発される
2,ガソリン機関が発明され、ガソリンを燃料とする現在の自動車が開発される
3,電気・水素などの新しい燃料による自動車、既存燃料とのハイブリッド自動車が生まれ、広がりを見せている
 
現在は、当たり前のように自動車を所有し、自動車によるサービスを受けられるようになっています。またSDGsなどの新しい世界的な目標の元に、新技術による自動車のありかたと法整備がされているところです。
 
AIの歴史は、およそ下のような流れになっています。
1960年代の第1次AI ブーム、探索・推論やアルゴリズムの研究
1980年代の第2次AI ブーム、知識の集約方法の研究、エキスパートシステムなど
現在の第3次AIブーム、機械学習・ディープラーニングの発展と製品への活用
 
自動車は自家用車の他、バス・タクシー・トラック、スポーツカー、工作/農業車両など、多くのサービスとしてあたりまえに受け入れられています。
AI技術の発展は目覚ましいものがあり、AI が組み込まれた製品やサービスが登場してきていますが、最新の技術、先端の技術として紹介されることが多く、AI を「あってあたり前」のものとして使う段階には、まだ来ていません。
民主化・コモディティ化とは、AI が「あってあたり前」「使うことが当たり前」の状態になることを意味しています。

なぜ今、「標準化」なのか

誰にとってもAIが「あたり前」であること、つまり民主化されコモディティ化するには、関わる全ての人のAIに対する理解が一定以上あり、また、とりまくルールも共通のものとして認識されている必要があります。急速に技術が発展し浸透する中で未然に問題の発生を防ぐことや、問題発生時の判断の基準が求められてきています。これらを解決するため、AIの「標準化」が急速に進められています。

システム化・RPAを含む広義のロボットの普及、AI導入などのテクノロジーの進展より、現在、あらゆるプロセスが完全自動化されようとしています。完全自動化されることにより生じる一番大きなリスクは「Human out of the Loop(人が関与しないこと)」と考えられています。

AIが組み込まれるリスクが顕在化している例として自動運転があげられます。現在、量産車でのレベル3(※)自動運転車がすでに実用化されていますが、自動運転中での事故は発生しています。しかしながら、自動運転中に起きた事故に対して、誰が責任をとるのは、ドライバーか、自動車メーカーか、自動運転AIを開発したエンジニアなのか、明確な答えはでていません。新しい技術が急速に普及することにより法律などの社会制度や人の倫理観との乖離が生まれ、今までになかった問題に直面することになります。
あらたな技術のもたらす社会的問題とそれを解決するためのデザインとして、今まさにAIの標準化が進められているのです。
 
※自動運転レベル3
Conditional automation: System performs all aspect except for driver intervention, Highway, dedicated lane ,etc.

人工知能の標準化

人工知能(AI)を活用する動きが活発になってきたおりに、2017年10月にロシア連邦のウラジオストクで開かれたISO/IEC JTC 1総会において、人工知能に対する新しい分科委員会(JTC 1/SC 42)の設置が決議されました。
 
国際標準化の組織の大枠とSC42の位置付け
国際標準化の組織の大枠とSC42の位置付け

SC42のなかでは標準化するテーマを下のように整理し、これらについてワーキンググループにわかれて議論を進めています。

課題 標準化のテーマ
共通課題のAIに関する拡張
ガイダンス
ガバナンス&マネジメントシステム
用語
フレームワーク&参照アーキテクチャ
ライフサイクル&プロセス
品質
セキュリティ&プライバシー
相互運用性内容
ユースケース
AI特有の課題 倫理&信頼性
アルゴリズム性能&頑健性
データ

2018年にISO/IEC JTC 1/SC42において、人工知能に関する標準化活動が開始されてから3年が経過し、いくつかの規格については公開が始まっています。

テーマごとの標準化の規格については、文末の「JTC 1/SC 42 (Artificial Intelligence)の規格開発状況」をご覧ください。ここでは、企業がAIを活用したシステム構築、サービス提供などを行うにあたって把握しておくべき標準に関するキーワードとその概要と標準化の議論で感じたことについてコメントしておきます。標準化の利用にあたり関連文書全てにあたることが時間的また人的リソースの問題で難しい場合があると思います。近くのAIの専門家や弊社に相談ください。

ガイダンス、用語について

AIに関する用語の説明やガイドについて議論する際、各々が背景とする文化によってAIへのスタンスの違いが異なる傾向にあります。欧米ではAIに関して擬人化した表現を避ける傾向が強く、一方、日本では、擬人化した表現を用いる傾向がみられます。

データに関する標準化

データ品質、ソフトウエア品質、品質の評価方法に関する標準です。SC42設立前からビッグデータに関する標準化はすすめられており、データを扱う組織のプロセス管理の標準化にまで言及されています。サービス開発において大量のデータを収集する必要がある場合、正しく管理・利用するために関連する標準化の文書に触れることをお勧めします。

AIの信頼性

AIを怖がる人にAIを安心して使ってもらうためにはどうしたらよいのか、機能安全、品質評価、説明性、リスクマネジメント、バイアス(偏見)、安定性などの観点で議論・整理しています。製造物の機能安全性に関する専門家は多いのですが、AIにまで言及して議論できる方はまだまだ少なく、AIの研究者と手を取り合って標準化を進めているところです。

ガバナンス&マネジメントシステム

多くの標準化が技術者や利用者を対象としたものであるのに対し、AIのガバナンスに関する標準は、経営者を対象としています。ITガバナンスに関する標準をベースとしてすすめられており、組織内のAIの効果的、効率的、な活用とAIの活用を許容できる範囲について、経営者向けのガイダンスを提供することを目標にしています。

ユースケース

品質、システムライフサイクルなど多岐にわたる課題の標準化を進めるうえで、具体的なAIの利用方法が共有されていないと、議論の焦点が定まらない、意見がまとまらない場面があると思います。

標準化全般について

AIはまだまだ人が制御できない場面が多く、リスク管理の観点からAIの技術が成熟しつつある今の段階から標準化をつくっていく国際的な潮流となっていますが、技術の発展を阻害ないような枠組みとして整備できるよう研究者自らが標準化活動に参加しています。AIに関する標準化の関心は年々たかまっており、早くJIS化してほしいとの要望もでてきています。

JTC 1/SC 42 (Artificial Intelligence)の規格開発状況

(1)ガイダンス
TR 20547 5 Big Data standards roadmap
ISO/IEC 5339 Guidelines for AI applications
 
(2)ガバナンス&マネジメントシステム
組織による人工知能の使用のガバナンスへの影響
ISO/IEC 38507 Governance implications of the use of AI by organizations
ISO/IEC 42001 AI management system
 
(3)用語
人工知能の概念と用語、ビッグデータの概要と語彙についてまとめられています。
ISO/IEC 20546 Big Data overview and vocabulary
ISO/IEC 22989 AI concepts and terminology
ISO/IEC 5259-1 Data quality for analytics and ML -Overview, terminology and examples
 
(4)フレームワーク&参照アーキテクチャ

機械学習(ML)を使用した人工知能(AI)システムのフレームワークやビッグデータを取り扱うときのアーキテクチャについてまとめられています。

AIシステムの計算アプローチの概要
ISO/IEC 23053 Framework for AI systems using ML
ISO/IEC TR 20547-1 Big Data framework and application process
ISO/IEC TR 24372 Overview of computational approaches for AI systems
ISO/IEC 20547-3 Big Data reference architecture
ISO/IEC 5392 Reference architecture of knowledge engineering
 
(5)ライフサイクル&プロセス
ビッグデータ分析のためのプロセス管理フレームワーク
ISO/IEC 22989 AI concepts and terminology
ISO/IEC 24668 Process management framework for Big Data analytics
ISO/IEC 5338 AI system life cycle processes
 
(6)品質
TR 29119 11 Testing of AI based systems
ISO/IEC 5059 Quality model for AI based systems
ISO/IEC 5469 TR Functional safety and AI systems
 
(7)セキュリティ&プライバシー
IS Study Period:Impact of AI on privacy
ISO/IEC 20547 4 Big Data security and Privacy
 
(8)相互運用性
Neural Network Exchange Format(Khronos)
 
(9)ユースケース
TR 20547 2 Big Data use cases and derived requirements
ISO/IEC TR 24030 - Information technology — Artificial Intelligence — Use cases
 
(10)倫理&信頼性
AIシステムとAI支援による意思決定のバイアス、倫理的および社会的懸念の概要
リスクマネジメント
TR 24028 Overview of trustworthiness in AI
TR 24368 Overview of ethical and societal concerns
IEEE Ethics of autonomous & intelligent systems
IEC SEG 10 Ethics in autonomous and AI applications
JTC 1/AG 7 Trustworthiness
ISO/IEC 23894 Risk management
TR 24027 Bias in AI systems and AI aided decision making
TS Objectives and methods for explainability of ML models and AI systems
IEEE P7000 series
 
(11)アルゴリズム性能&頑健性
人工知能の信頼性の概要
ニューラルネットワークの堅牢性の評価
TR 24028 Overview of trustworthiness in AI
TR 24029 1 Assessment of the robustness of NNs Overview
TS 4213 Assessment of classification performance for ML models
ISO/IEC 24029 2 Assessment of the robustness of NNs Methodology for the use of formal methods
 
(12)データ
ISO/IEC 5259- 2 Data quality for analytics and ML Data quality measures
ISO/IEC 5259-3 Data quality for analytics and ML -Data quality management requirements and guidelines
ISO/IEC 5259 4 Data quality for analytics and ML Data quality process framework



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玉越 元啓

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