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アートから見るIT ~Banksy(バンクシー)-NFT-Blockchain(ブロックチェーン)-SDGs (後編)

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フェロー 関原 弘樹   顔写真2_1187x1313

3月を迎え東京もようやく春めいてきました。今年こそ楽しく心躍るような春を迎えたいものです。
 
かたや、東欧に目を向けるとマ・クベもビックリ、誰もが予期しなかったこのタイミングでロシアとウクライナの交戦が始まってしまいました。
 
価値の裏付けのない通貨が流通しないように、現実の行動を伴わない決議には何も期待できないと判断したと思われるウクライナはデジタル転換相を兼務する副首相がGAFAを中心としたIT企業にロシアへのサイバー空間包囲網構築の要請をしているというニュースが流れました。
 
この春この問題がどのようなフィナーレを迎えるかはわかりませんが、今後国家(とその連合)とITジャイアントの力関係がより鮮明に描き出されるの出来事として記憶されるかもしれません。
 
 
さて今回は昨年11/4のコラムの後編ですが話はすこし変わります。

タイトルから「Banksy(バンクシー)-NFT-Blockchain(ブロックチェーン)」まで来ましたので最後はSDGsです。
Banksy / Turf War (Winston Churchill) バンクシーって誰?展にて筆者撮影 Dec 2021
Banksy / Turf War (Winston Churchill) バンクシーって誰?展にて筆者撮影 Dec 2021

SDGsとは?

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」、ここに記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本としても積極的に取り組んでいます。
(外務省ウェブサイトより)
Google Trends
※外部サイト:2030年アジェンダ
従来からの企業の利益重視のビジネススタイルへの免罪符のようにも聞こえますが、それはさておいてここでは電力関連の記載を見ていきたいと思います。
 
以下のリンクに外務省作成のパンフレットがあります。
※外部サイト:持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組

 
ここには17の目標が記載されていますが本コラムの内容に直接関係しそうなものはこの2つです
目標7 [エネルギー]
すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する

目標13 [気候変動]
気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
 
このパンフレットにはこれ以上の具体的な記載はありません。
次に行きましょう。

SDGsのゴール

SDGsの目標にはゴールとターゲットが結びついているようです。
別の資料で確認します。
 
まずは直接関係してきそうなこちら

※外部サイト:7: エネルギーをみんなに そしてクリーンに
 
やや分量が多いので転載は避けますが上記のサイトでターゲットとグローバル指標を確認すると直接的に「先進国で電力使用量を下げる必要がある」という記載は無いようです。
当然ながら「エネルギー効率の改善率を倍増」や「クリーンエネルギー技術への投資を促進」という記載はありました。
 
ではこちらはどうでしょうか?

※外部サイト:13: 気候変動に具体的な対策を
 
ここには「年間温室効果ガス総排出量」という具体的で有名なKPIがあります。
 
これらから読み取れるのはクリーンなエネルギーならいくら使ってもいい!ということですが、実際にそれはうまくいくのでしょうか?
 
水力、風力、太陽光、原子力
 
温室効果ガスの排出は無いかもしれませんがダムの建設、自然系の開発、不明確なTCOと気候変動のトリガーになりそうな新たなイシューは少なくないように感じます。
 
 
#SDGsに関してはもう一つのキーワードESGも併せて弊社水谷エバンジェリストが執筆した、以下の記事もぜひご覧ください。
SDGs、ESG推進~地球温暖化と脱炭素化を考える~

ブロックチェーンとSDGs

様々な発展が期待されるブロックチェーンと現在ビジネスシーンの周辺で様々なステークホルダが様々な思惑により推進しようとしているSDGs。
 
この二つを別々のベクターから同時に推進していこうとするとバッティングして最終的には大きな回り道をしなければならないのではないか?ということを数年前から感じておりました。
 
だいぶ前のことですがこの話を数名のブロックチェーン関連の事業を専門にしている方々に投げかけてみたところ「??」という反応でしたのであまり興味を引く話題ではないのかもしれませんが、最近ではビルゲイツ氏を始め各所でこの件について主張しているようなのでやはり大きな問題なのかもしれません。

現在のブロックチェーンにおける電力消費量

さて、ブロックチェーンのアプリケーションに関して全世界で消費される電力はどれくらいなのでしょうか?
 
ある調査ではビットコイン(BTC)の全トランザクションまたは一つのトランザクションで利用される電力量の合計は以下のようになるようです。
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※外部サイト:Bitcoin Energy Consumption Index より
 
新たな価値創出の主役となり、今後のDXビジネスをけん引していくことが期待されているブロックチェーンですがこのようなデータをSDGsの観点からも見てみるとどうでしょうか?
 
やはり、ちょっと立ち止まって考えてたくなるかたも多いのではないでしょうか。

ブロックチェーン開発コミュニティからの技術的なアンサー

コラムの前編で取り上げたようにNFTで利用されるインフラはイーサリアム(ETH)というブロックチェーン技術ですが、最近新しいバージョン(Etherium2.0)に移行し、「そのチェーンを連鎖させる方法」として従来からのビットコイン(BTC)と同様の「PoW / Proof of Work」だけでなく「PoS / Proof of Stake」というものを導入することでこの消費電力問題を解決しようとしています。
 
 
一説によるとイーサリアム(ETH)ではこのバージョン移行で同じ価値を生み出すのにこれまで消費されていた電力99.95%が削減できるとの見方もあります。

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※外部サイト:Ethereum's energy usage will soon decrease by ~99.95% 
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PROOF-OF-STAKE, STAKING, AND VALIDATORSでは、PoSとPowの違いはどのようなものでしょうか?
そしてなぜPoSはPoWの課題である電力消費量の問題を解決できるのでしょうか?
 
公式サイトから引用すると以下の様になります。(画像はEdgeによる自動翻訳)
 
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PROOF-OF-STAKE, STAKING, AND VALIDATORS
Proof-of-stake is the underlying mechanism that activates validators upon receipt of enough stake. For Ethereum, users will need to stake 32 ETH to become a validator. Validators are chosen at random to create blocks and are responsible for checking and confirming blocks they don't create. A user's stake is also used as a way to incentivise good validator behavior. For example, a user can lose a portion of their stake for things like going offline (failing to validate) or their entire stake for deliberate collusion.
 
HOW DOES ETHEREUM'S PROOF-OF-STAKE WORK?
Unlike proof-of-work, validators don't need to use significant amounts of computational power because they're selected at random and aren't competing. They don't need to mine blocks; they just need to create blocks when chosen and validate proposed blocks when they're not. This validation is known as attesting. You can think of attesting as saying "this block looks good to me." Validators get rewards for proposing new blocks and for attesting to ones they've seen.
 
If you attest to malicious blocks, you lose your stake.
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※外部サイト:PROOF-OF-STAKE (POS)

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正確に表現できているかは多少の不安がありますが、きわめてかみ砕いた表現をすると……
 
ブロックチェーンのマイニング(チェーンをつなげる作業)への参加者は
①担保として手持ちのイーサリアム(ETH)を差し出す必要がある
⇒マイニング作業参加へのハードルを設ける
②ハッシュ計算をするブロックは参加者ごとに割り当てられる
⇒効率性の追求 消費電力量の最小化
③不正行為、悪意のある行為にはペナルティがある
⇒マイニングプロセス変更により発生するリスクのコントロール
といったあたりがキーメカニズムとして説明されています。
 
これによりPoSでは自由にマイニングをしたい(一儲けしたい)参加者が集まってきたPoWのように参加者がそれぞれ莫大な電力を消費して無駄なマイニングを競い合うことがなくなる。
ということが主たる特徴のようです。
個人的にはブロックチェーンアプリケーションの大きなアドバンテージとして語られることの多い非中央集権性がどのように検討され実装されるのか?という点は興味深い問題だと感じます。
 
イーサリアム(ETH)だけでなく、今後の他のブロックチェーンアプリケーションがどのような方向性でこの消費電力量問題に対処していくのか?トランザクションの速度などその他の問題は顕在化しないのか?その動向もウォッチしていきたいですね。
 
ちなみに先月にはハードウェアの観点からこのようなニュースが報道されています。
 
※外部サイト:Intelが新ビットコインASICマイニングプロセッサ、BonanzaMineの発売を正式に発表
・従来のグラフィックスプロセッシングユニットよりも1000倍高速
・スループットが40T Hash、消費電力が3.6kWの300個のBonanzaMineASICで構成
・ESGに対する懸念事項を考慮して開発
・責任を持って持続可能な形でオープンかつ安全なブロックチェーン・エコシステムを推進
とのことです。
 
繰り返しますがPoWを採用している限りハッシュレートが上がりすぎた場合、攻撃を防ぐためにさらに処理を重くする必要が出てきます。(Workに負荷があることに意味がある)
よって、これはあまり本質的なソリューションではないと感じています。
 
 
#なお、本コラム入稿と前後してEU発の以下のニュースが報じられていますので参考としてリンクを掲載しておきます
※外部サイト:2/24 欧州議会、仮想通貨規制案にPoW銘柄禁止を盛り込む可能性=報道
>欧州議会に提出された、暗号資産(仮想通貨)規制案「MiCA」(=Regulations on Market in Crypto Assets)の最終草案に、ビットコインを禁止する提案が含まれているようだ。
 
※外部サイト:2/26 EU議会、仮想通貨規制案の投票を延期へ
>欧州連合議会は、暗号資産(仮想通貨)市場の規制に関する投票を延期したことが分かった。これにより、投票の日時は未定となっている。
>「MiCA指令がビットコインの事実上の禁止だと誤解されないことが肝要であるように思われる」
>このような状況下で、EU議会が誤ったシグナルを投票によって出したら、それは致命的になるだろう。
引用ここまで

おわりに

もう昨年のことになってしまいますが日比谷で「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」という映画を鑑賞してきました。
アートの価値の本質とは?政治・経済との結びつきは?というテーマでとても興味深く、そして楽しむことができました。
 
今春にもディスクメディアが発売されると思いますのでご興味を持った方は是非!
※外部サイト:ダ・ヴィンチは誰に微笑む


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ではまた、次回のエントリーでお会いしましょう。
 
 
Hiroki Sekihara,
CGEIT, CRISC, CISSP, CCSP, CEH, PMP, CCIE #14607 Emeritus,
AWS Certified Solutions Architect – Professional,
AWS Certified Security – Specialty,
Google Cloud Certified Professional Cloud Security Engineer,


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関原 弘樹

株式会社インフォメーション・ディベロプメント フェロー / CISSP

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