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最新VR空間のワークスペースを体験!メリット・デメリットまとめ

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IDアメリカ
ハムザ・アフメッド顔写真

こんにちは。IDアメリカのハムザです。


昨年は1000万台のVRヘッドセットが販売され、この数字は2020年に比べおよそ2倍となっています。この背景には、VRヘッドセットの価格低下と、人々のVRに対する意識の変化があります。今はゲームやコンテンツを楽しむために活用されるのが一般的ですが、各企業はメタバースの未来を見据えて投資しており、VR 含めXR(Cross Reality)が日常生活で活用されると考えています。そして、XRへ移行するもののひとつに、私たちの日々の業務も含まれることになるでしょう。
 
ここ数年、VR環境で作業するためのアプリ開発が進んでおり、作業効率化、コラボレーション、トレーニングなどの用途で、今では数多くのビジネスアプリが存在しています。今回は、VR内のアプリをワークスペースとして試用し、VRで現在の業務遂行が可能かどうかを検証してみます。
 
普段はオフィスに出社して仕事をしています。ミーティングはたまに発生する程度です。仕事柄、パソコンを使うことが多いので、それをVRで再現してみようと思っています。今回のテストでは、VRヘッドセットとして「Meta Quest 2」を使用します。このヘッドセットを選んだ理由は、価格帯が手ごろなことと、別途PCに接続する必要がないことです。
 
 ワークスペース条件
    • パソコンを導入することが可能
    • ミーティングが行えること
 
 この条件に該当するのが以下の3つ:
    • Horizon Workroom
    • Immersed
    • vSpatial

これらのアプリで業務を行い、感想を記載していきます。

Horizon Workrooms

Metaは、将来のすべての仕事がVRで行われるという世界を構想しています。そこで昨年8月、1年ほど前からベータ版を提供していた「Horizon Workrooms(※外部サイト)」を展開しました。

Horizon Workroomsは、ビジネスミーティングのためのソーシャルVR体験アプリです。チーム用のルームを作成し、そこにいる全員が仮想現実で会議に参加できます。VRヘッドセットを持っていない人や移動中の人は、ZoomやTeamsのようにウェブカメラだけで参加することも可能です。

部屋にいる全員が会話やチャットをすることができますが、机から立ち上がってホワイトボード(実際は黒板)に向かって、コントローラーで文字を書いたり、画像を取り込んでブレーンストーミングに参加したりすることも可能です。また、自分のデスクトップを大画面で共有し、他の人に見せることも可能です。これはプレゼンテーションなどに適しています。

評価

アプリ自体は使いやすかったのですが、初期設定がいろいろと手間がかかりました。Metaはアカウント設定の際、ヘッドセットに表示されるコードをパソコンに入力するよう求められるため、コード全体を取得するためにはヘッドセットを着脱する必要があります。ヘッドセットをつけたままパソコンに入力するのはなかなか大変なので、これはあまり直感的とはいえません。簡単な解決策としては、この設定中にパススルーさせるか、ヘッドセットを通してコードを読み取ることができるQRコードを用意することでしょう。

設定が終わればWorkroom自体はシンプルにできており、目の前に机があり、そこで業務を行うことができます。PCとの接続も非常に簡単で、使用中のタイムラグもほとんどありません。VRの世界にあるパソコンのモニターは大きさを2段階調整でき、高解像度のため、パソコンに表示されている内容は簡単に読むことができました。また、パススルーの設定により、現実世界のキーボードを表示させることができます。

会議を行う際にはミーティングルームに移動すると、その環境は複数人が利用できそうな大きめのテーブルがあります。Metaのサイトには16人までと書いてありますが、今回は3人で試してみました。音声と位置と連動しているため、話し手がどこにいるかすぐにわかります。ホワイトボード機能やプレゼン機能もあり、想像以上にミーティングがはかどりました。


 長所
    • パソコンのスクリーンの画質が高く、小さい文字まで見える
    • 音声が方向によって変わるため、誰が話しているかが分かる
    • ホワイトボードでの操作がしやすい
 
 短所
    • 設定にパソコンが必要になるタイミングが多い。
    • ワークスペースのカスタマイズが制限されている。
    • ウィンドウは1つしか開くことができない
    • キーボードサポートがあるとのことだが、実装できていない
    • ヘッドセット内でスケジュールを設定するのが難しい
    • ホワイトボードに張る紙が小さく、座っている人からは見えにくい

Immersed

7月末まで、Immersedはサブスクリプション型のアプリで、無料ユーザー向けにはその機能は極めて限定されたものでした。Immersed(※外部サイト)は一部の有料プランを無料化し、ユーザーは自分のワークスペースに他人を招待したり、環境に複数のコンピュータモニタを設置したりできるようになりました。今回の変更は、メタバース・ワークスペースという新しいビジネスが関連しています。Immersedが提供しているデジタル・マンハッタンとは、人々がEtherでデジタル空間を購入できる仕組みを持っています。この土地を購入した人には、カスタマイズ可能なビルが提供されます。残念ながらこの機能は、現時点で試してみることはできませんでした。

Immersedのバーチャルワークスペースに話を戻すと、そのデザインはHorizon Workroomとは大きく異なります。Horizon Workroomがバーチャルミーティングのための場所であるのに対し、Immersedはユーザーが仕事に集中できるようなワークルームとしての体験を提供する点に重きを置いています。ユーザーは同時に5つの仮想モニターを利用することができ、ウィンドウのパススルーを設定して環境を認識させることができます。


評価

ImmersedのセットアップはHorizon Workroomよりもスムーズに感じられ、すぐに環境を利用することができました。モニターは3台まで表示できるので、かなりスペースを有効活用できます。ただ、モニターを3台表示した場合、マウスが効かなかったり、環境に若干のラグが発生したりすることがあります。また、モニターを移動させる際、環境の配置によってはボタンを押しても移動できないことがあります。
環境は宇宙空間やオフィス空間、森の中の家など、いろいろと変えることができます。また、プレゼンテーション用の部屋など、ミーティング機能も備わっていて、ユーザー全員が自分のホワイトボードを使うことができます。また、現実世界の中の特定部分だけを見せることができる部分パススルー機能も備えています。

全体的な評価としてはよく機能していると思いますが、3つのモニターを使用する場合はレイテンシーの問題があり、解像度はHorizon Workroomほど高性能ではありません。テーマやジェスチャーコントロールなど、Horizon Workroomよりも機能は充実していますが、まだまだ未完成な要素があるように感じます。


 長所
    • 1つのPCから画面を3つまで増やすことが可能で、VRのスペースを有効活用
    • パススルー機能がWorkroomよりも性能が高い
    • 画質のコントロールが可能で、ネットにラグがある場合に調整することができる

 短所
    • VR環境の画質が低いため、長時間の利用は負担が大きい
    • 環境操作が少し難しい。ポインターがクリックできないところに配置してあったり、ボタンが見えにくい場所にあったりする
    • ホワイトボードに書くための距離感の設定が難しい。遠すぎるとタイプできず、近すぎると書きづらい。カメラの向きも変えられないのでコントローラーでボードの位置を調整する必要がある
    • マウスがたまに視界から消える、ラグも発生するのでストレスに繋がる

vSpatial

vSpatial(※外部サイト)は、Oculus、Vive、Index、Windows Mixed Realityなど、一般的なヘッドセットならばほとんどのものが動作するVRワークスペース・アプリケーションです。自分のワークステーションをVRで再現し、他の人と共同でも、一人でもタスクを実行することができます。

vSpatial上では、アプリケーションのウィンドウや開いている画面をそれぞれ別のモニターとして再現することができます。操作できる画面の数は多く、リモートデスクトップ接続も可能で、vSpatialは、VRの中で多くのマルチスクリーンの空間を実現することができるのです。また、このプラットフォームでは、仮想世界の中で、電話を受ける、文書を編集する、文字を打つ、各種ソフトウェアを使う、調査をする、ビデオを再生する、などのが可能です。メディアプレーヤーが統合されており、ローカルに保存された動画ファイルを再生することもできます。

Immersedと同様の作業をしますが、ネット回線が弱いと起動時にエラーが発生することがあります。

評価

ImmersedのセットアップはHorizon Workroomよりもスムーズに感じられ、すぐに環境を利用することができました。モニターvSpatialの最大の利点は、モニターを無制限に開くことができる点です。そのため、他のどのソリューションよりも、たくさんの画面で一度に確認することができます。その上、QuestのコントローラーでPCを操作できるところが便利です。ただ、バグなのかもしれませんが、キーボードをパススルーで表現しようとしても、うまく表示されないのが一番の問題点でしょう。
 
バーチャル空間では、バスケットフープを置いて遊んだり、環境を変更したりできます。 vSpatialはブラウザアプリなどを活用できるので、PCを持っていなくてもVR環境で作業できます。内部アプリをいくつか使えばPCに頼らなくてもVR環境で作業できるようなので、使用用途が決まっていればvSpatialが最適ともいえます。ただ、使用感としては、乱雑な空間に感じるときがあります。

 長所
    • 1つのPCから無限に画面を追加することが可能
    • 空間内でカスタマイズが可能
    • 多くのヘッドセットに対応している
    • アプリ内にブラウザなどが使える

 短所
    • 画面の画質が粗い
    • Windowsにしか対応していない
    • マウスのラグがある
    • 環境を移動させる際のボタンがUIで見えない場合がある
    • キーボードがパススルーで表示されない
    • バーチャル空間が少し乱雑な状態に感じる

ヘッドセットを付けての業務

最初と比べると、思ったより悪くないという印象です。キーボードがはっきり見えないことが難点ですが、ボタンの配置がわかっていれば、パススルーである程度はタイプ可能でした。アバターを通して話すと、相手に対する親近感が湧きやすいのですが、真剣なやり取りが少し薄れてしまいます。それに、パソコンから参加するメンバーがアバターでないことに違和感を覚えます。
 
最大の問題は、長時間の装着にあります。ヘッドセットの重さも気になりますが、環境の質が低く不快感となって、頭痛がしてしまいました。個人的には、1時間ごとに少しずつ休憩を入れるといいと思います。もうひとつの問題は、コントローラーを探す時にあります。作業中は、手にコントローラーを持っていないので、手で操作が必要です。しかし、手を認識するのに時間がかかるケースがあり、それがストレスにつながりやすいと感じます。その上、一定時間操作をしないとコントローラーが視界から消えてしまうため、ヘッドセットを外してコントローラーを探さなければなりません。この点で、ユーザーエクスペリエンスの低下が気になります。
 
Quest自体の性能はそれほど高くないので、アプリでできることは限られています。また、バッテリーは2時間程度で切れてしまうので、時々本体から外して充電する必要があります。また、作業中の飲食も簡単ではありませんでした。飲み物をこぼしてしまう恐れがあるので、VRで操作するときは、周辺にドリンクなどは置かない方がいいかもしれません。

研究

研究により、仮想的な自然環境は、仕事中のストレスを軽減し、気分を向上させることが実証されています。緑に満ちた空間は精神的疲労の回復を誘発し、一般に人間の健康に役立つことはよく知られています。また、リラックスできそうな動画をただ再生するよりもVRを利用した方が効果的にストレスを軽減できることや、受動的にVRコンテンツを体験するよりもインタラクティブなVR環境の方がより効果的であるという研究成果も発表されていました。
 
しかし、これらの実験は短時間の作業で得られた結果です。今回の実験「Quantifying the Effects of Working in VR for One Week(※外部サイト)」(VRで1週間働く効果の定量化)では、より長期間にわたってVRで仕事をした場合の環境に対する効果を調査しています。参加者は大学職員や研究者ばかりで、丸1週間VRで作業し、その効果を確認しました。
 
実験では、1日8時間働き、休憩と昼食は45分としました。1週間後、VRでの業務に、抱えているタスクに対して負荷が増えたと平均35%報告しています。また、フラストレーションが42%、「ネガティブな感情」が11%、不安が19%上昇することもわかりました。頭痛がひどく、実験から外れる人も2人いたようです。
 
Metaは、VRでの仕事は、様々なことに気を取られない仮想環境でよりよく作業できる方法を目指しているようです。しかし、現段階で、バーチャルリアリティでの作業は圧迫感を感じ、イライラの原因ともなり、非生産的であると研究者は述べています。
 
しかし、この研究は、VR環境で働くことを否定するために書かれたものではなく、VRを仕事に使う際の課題点を浮き彫りにするために書かれたものです。この研究は、「現在の欠点を明確にし、VRでの仕事を改善する機会を見つける」ことで、VRの更なる実用化へ向けたプロセスに貢献できると考えられます。

最後に

今回のレビューで試してみましたが、現状では一日中ヘッドセットをつけたまま仕事をするのは難しいでしょう。ただ、VRでの打ち合わせは、例えばZoomなどのミーティングツールと比較して、相手との距離感が縮まったように感じました。もちろん、アバターを通しての交流ではありましたが、同じ空間で同じものを見ているということで、より親近感が湧くのかもしれません。
 
確かにまだまだ使い勝手は悪いですが、ハードウェアは進歩していますし、今年発売が期待されているQuest Proにいては、エンタープライズを意識した作りになっているそうですので、性能を体験するのが楽しみです。また、ソフトウェアも日々進化していますので、今後もより高性能になっていきます。ですので、VRで仕事をするような未来は、意外と近いのかもしれませんね。
 

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