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生成AIの業務利用について考える

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株式会社IDデータセンターマネジメント
ICTサービス第6部
テクニカルスペシャリスト 千葉 由紀祐顔写真

こんにちは、テクニカルスペシャリストの千葉です。
 
9月末になり気温も少し下がって、ようやく暑い日が終わりそうな気配ですね。
先週(14日)、米宇宙航空局(NASA)が1880年の集計開始以降、今年の夏(6月~8月)の平均気温が最も高かったと発表した報道がありました。
 
海水温の上昇など地球温暖化による影響が大きいようです。地球温暖化といった気候変動に対して、個人でできる対策をあらためて検索すると、国際連合広報センターが「個人でできる10の行動」を掲載していました。
 
来年以降、暑い夏が更に暑くならない様、1つ1つの項目を意識した行動をしていこうと思います。皆さんも是非確認してみてください。


ACT NOW

引用:国際連合広報センターHP「個人でできる10の行動

デジタルスキル標準が改訂

先月、デジタルスキル標準が改訂されました。デジタルスキル標準は以前のコラムで触れましたが、DXを推進する人材が備えるべきスキルや能力が示された、個人の学習や企業の人材確保・育成の指針となるものです。
 
今回の改訂では、生成AIの適切な利用に必要なマインド・スタンスなどが追加されました。生成AIが企業やビジネスパーソンにとって欠かせない技術であることが明確になったと言えます。
 
改訂を受け、社内の規程や取組みの整備・検討を進めた企業も多いのではないでしょうか。


デジタルスキル標準お改訂
引用:経済産業省HP「デジタルスキル標準の改訂<概要>


改訂内容から、企業において生成AIを生産性向上やビジネス変革のために適切に利用するには、社員一人一人が生成AIの業務利用を意識し、利用にあたっての課題を理解し、変化に対応するための情報収集を行うことがポイントと言えます。
 
本コラムでは、上記の点について具体的にどんな取組みができるのか、考えていきたいと思います。

生成AIの業務利用

生成AIは、テキスト、画像、動画、音声、音楽など、さまざまなコンテンツを自動生成する技術です。企業における業務利用について、野村総合研究所が今年5月に日本のビジネスパーソン約2400人を対象としたアンケート調査結果を公表しています。
 
アンケート調査結果によると、生成AIの認知率は5割を超えており、業務利用の状況は業界全体ではトライアル中を含めて1割弱、検討中も含めると2割弱という結果です。
 
ChatGPTが、昨年11月末に公表されてから半年後のアンケートである事を考えると、公表前から業務利用されていた企業の存在を加味しても、各企業が早いスピードで導入検討を進めているのがわかります。


■生成AIの認知率
生成AIの認知率



■生成AIの職場における導入・検討状況(勤務先の業種別)
生成AIの職場における導入・検討状況
引用:野村総合研究所HP「アンケート調査にみる「生成AI」のビジネス利用の実態と意向


また、生成AIの業務利用の用途としては、テキスト生成AI(テキスト、メール、プログラム)の利用が高いものの、画像生成AI、動画生成AI、音楽生成AIについても利用されているのがわかります。

“現在利用”に対して“今後の活用可能性”が大きく上回っている用途(マニュアルの作成、議事録の作成、プログラム作成、音楽の作成など)については、今後活用が進むものと考えられます。



■生成AIの利用用途と今後の活用可能性
生成AIの利用用途
引用:野村総合研究所HP「アンケート調査にみる「生成AI」のビジネス利用の実態と意向


これまでのコラムで取り上げてきた、ITサービスマネジメントの分野においても、ITサービスの品質・効率性の向上、顧客満足度を高める施策として、以下のような活用が期待できます。

  • 障害対応の迅速化・自動化 … 障害ログや利用状況データによる障害の予兆検知))
  • サービス品質向上…顧客からの問い合わせやアンケートデータによる顧客ニーズの分析)
  • 新サービス開発…製品・サービスの開発データや顧客データによる新サービスの開発)

生成AI利用にあたっての課題

企業において生成AIの業務利用を推進するにあたり、生成AIが学習データ提供による企業情報・機密情報の漏えい、著作権等の権利侵害、倫理的な問題等に注意が必要であることは周知の事実かと思います。
 
G検定やE資格を主催する日本ディープラーニング協会は、企業が導入をしやすいように「生成AIの利用ガイドライン」を今年5月に公開しています。これは、生成AIの導入を検討している企業が、社内規定を整備する際に雛形として活用できるものです。
 
条項毎の解説も公開しており、利用にあたって注意・意識すべき点が整理されている事から、個人利用されている方も確認しておくべき内容となっています。また、政府のAI戦略会議において、企業、行政、教育現場などでの生成AI活用促進と規制強化の両面で議論されている事から、動向を注視することも必要です。

様々な生成AIを比較

生成AIの情報収集にするにあたり、生成AIの種類としては、『テキスト生成AI』『画像生成AI』『音楽生成AI』『音声生成AI』『動画生成AI』の5つが挙げられます。これらは、一般社団法人 生成AI活用普及協会主催の「生成AIパスポート」※のシラバスで取上げているものです。

生成AIを活用してコンテンツを作成する場合、複数のサービスを比較検討し、用途にあわせて利用する場合もありますので、それぞれを情報収集する事が必要です。

情報収集の手法として一番良いのは、実際に触ってみることです。生成AIを業務利用する場合には有料サービスが必要になるケースもありますが、イメージを掴むための無料版が多々提供されています。

以下に、実際に私が利用してみた無料版が提供されている生成AIを紹介します。テキスト生成AIとその他生成AIで分け、簡単な私見コメントを付けましたので参考にしてください。

※生成AIパスポートの第1回試験が10月に予定されています。申込期間が9月末のため、興味のある方は生成AI活用普及協会HPをご参照ください。


■テキスト生成AI

サービス名 開発元 言語モデル タイプ
ChatGPT OpenAI GPT-3.5
GPT-4※1
対話型
Bing AI Chat Microsoft
GPT-4
検索型(bing)
Bard
Google
LaMDA
検索型(Google)
Perplexity.AI
学際的なチーム GPT-3.5
GPT-4※2
検索型(bing)
※1…有料版の場合
※2…無料版は使用回数の制限あり

テキスト生成AIは、現在ChatGPTが最も広く利用されています。IT大手企業も追随してサービス提供を開始しており、言語モデルやタイプ、UIの使い勝手などにそれぞれ特徴があります。


  • ChatGPT
    対話型で文脈に沿ったやり取りが分かり易い。無料版のGPT-3.5は情報が最新ではなく、日本語の学習データ不足に伴う正確性に欠けるところがあり注意が必要だが、文章の要約、プログラムコードの生成など、ビジネス活用できる機能の性能が高い。

  • Bing AI Chat
    検索型で最新情報が得られ、関連するサイトリンクも表示されるため情報の根拠の確認がし易いが、プロンプト入力に対する反応は遅く感じる。

  • Bard
    Bing AI Chat同様、最新の情報を得られ、また、プロンプト入力に対して3パターンの回答案を一度に生成され、見比べる事ができる。プロンプト入力の反応は早く感じる。

  • Perplexity.AI
    Bing AI Chat、Bardと同様、最新の情報を得られ、生成情報のソース(情報源)へのアクセスが一番分かり易い。また、生成後に関連したプロンプト入力のための文章が表示されるため、深堀し易い。


■その他生成AI
種類 サービス名
開発元
画像生成AI
Clipdrop
Stability AI(Init ML)
音楽生成AI AIVA
AIVA Technologies
音声生成AI
Notevibes
Notevibes
動画生成AI
Runway Gen-2
Runway


  • 画像生成AI(Clipdrop)
    Clipdropでは画像生成AIで有名なStable Diffusion(ステーブルディフュージョン)が採用されており、テキストによるプロンプト入力で画像生成を行うことができます。有料版と比べて機能の制約があり、プロンプト入力も英文のみですが、1日100枚の画像生成、画像からのテキスト等の除去、明るさ変更、サイズアップなどができます。
    たとえば、事業継続計画 (BCP)の画像を生成してみたら、テロ対策を想定した画像ができました。日本ではテロの脅威に比べ、自然災害へのBCP立案が一般的だと思いますが、そのあたりは海外企業で開発・学習させているからかもしれません。(Stable DiffusionはイギリスのStability.Ai社が開発)

  • 音楽生成AI(AIVA)
    AIVAは、簡単な操作で音楽を生成することができます。Jazz、Pianoなど好きなスタイルなど、いくつか選択するだけで最大5曲を一度で生成できます。生成した曲はダウンロードが可能です。なお、生成した曲を商用利用したり、著作権を得るには有料版となります。

  • 音声生成AI(Notevibes)
    Notevibesのブラウザ版は、テキストを貼り付けるだけで音声生成ができます。様々な国の男性・女性の音声が用意されており、また、MP3またはWAV形式で音声ファイルのダウンロードが可能です。AIVA同様、商用利用には有料版となります。

  • 動画生成AI(Runway Gen-2)
    Gunway Gen-2は、テキストや画像をインプットに動画生成ができます。1回の動画生成は4秒分で、続きの生成を行うことで最大16秒の動画が生成できます。無料版は合計105秒分の動画が生成でき、プロンプト入力は日本語対応されています。
    ただし、「大きな水槽で10匹のクリオネが泳いでいる。」というテキストだけで生成を行なったところ、クリオネではないもの(魚ではある)が泳いでいる動画が生成されました。プロンプト入力の工夫、生成物に対する人の目による確認などを十分に行う必要があると感じました。

最後に

経済産業省がデジタル時代の人材政策に関する検討会で取りまとめた「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方」において、生成AIが社会にもたらすインパクトや、生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方などが纏められています。

生成AIは企業での活用がますます進み、正しい知識を持ち活用を推進するためのスキルが求められます。
そのためには、日々の情報収集が欠かせませんし、スキルを身に付けるには知識だけでなく実際に触って使うことが大事です。

使うことで何ができるのか、できないのか、仮説と検証によってメリット・デメリットやリスクを認識でき、アイディアに繋がる。百聞は一見にしかずです。本コラムで、今まで以上に生成AIに興味を持つきっかけになれば幸いです。

当社グループでは、企業の規模を問わない生成AIサービスを提供しています。ご興味がある方は是非お問合せください。

では、また次回コラムでお会いしましょう。


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千葉 由紀祐

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