
株式会社IDデータセンターマネジメント
ICTサービス第1部
テクニカルスペシャリスト 上坂 明
東京都知事選が7月7日に行われ、現職の小池百合子氏が再選を果たしました。
今回の上位得票者の公約方針を見ると「少子化対策」、「教育」、「若者世代の所得増加」などの公約が多く、子育て・若者支援に対する注目度が高い選挙という感想でした。
若者世代の雇用状況
さて、選挙公約で話題となった若者世代(10代~20代)の雇用状況を見ると、2024年度卒、2025年度卒業予定の大卒求人倍率は1.7倍を超え、業種別の求人倍率の推移を見ると、2024年度は建設業・物流業は10倍を超えています。2025年度は建設業の求人倍率は若干低下しましたが、依然高い倍率を維持しています。
流通業は16.21倍と過去最高の倍率となっており、運転手の時間外労働規制強化、いわゆる「2024年問題」の影響が大きいことが伺えます。
ただし、これら求人倍率は事業規模の小さい中小企業の倍率が高い状況で、従業員1000人を超える企業では求人倍率はほぼ横ばい、5000人以上の大手企業ではむしろ低下しています。
【参考①:業種別 大卒求人倍率の推移】


出典:リクルートワークス研究所 大卒求人倍率調査(2025年卒)
一方、マイナビ・日経が発表する「2025年卒大学生就職企業人気ランキング」を見ると、大卒文系は金融・商社。大卒理系は製造業の大手企業が並ぶ結果となり、前述の求人倍率と大学生が希望する就職先に大きなズレが生じています。
求人は多いものの、希望する職種は競争倍率が高く、簡単には就職出来ない現状が伺えます。
また、高学歴学生のトップ層の就職先として、高収入が見込める外資系の投資銀行やコンサル企業が増えつつあり、中小・大手企業問わず人材確保のため、初任給増加や労働環境の改善を進めています。
【参考②:2025年 大学生就職企業人気ランキング】


出典:【マイナビ・日経】2025年卒大学生就職企業人気ランキング
参考:Yahoo!ニュース 「定年まで働きたい」新入社員はたったの2割…“会社を辞める若者”に大企業が頭を抱える本当の理由「転職サイトの口コミはダメージが大きい」
国際的な人材獲得競争の激化
現在のトレンドは、AIを活用したLLM等の生成AI開発やドローンや車の自動運転。ビッグデータを分析するデータサイエンティストなどの専門家需要が高く、日本国内だけでなく世界的な人材獲得競争が発生しています。このような状況下、日本の国際競争力は弱いと言わざるえない状況です。
国際経営開発研究所(IMD)が発行する「世界競争力ランキング」を見ると、2024年度の日本の競争力は38位。2023年度の35位から3位後退しており、他国の競合企業に対し遅れをとっています。
【参考③:日本の世界競争力ランキング】

出典:IMD 世界競争力ランキング 2024
本格的なジョブ型雇用への転換期
諸外国との競争には、専門性の高い即戦力となる高スキル人材が必要です。日本型雇用の主流であるメンバーシップ雇用では、幅広い仕事に対応するゼネラリスト育成には向いていますが、スペシャリスト育成には向いていません。そのため、スペシャリスト向けの雇用形態であるジョブ型雇用への転換議論が活発になっています。
ジョブ型雇用は、仕事に人を割り当てる職務特化型の雇用形態であり、欧米諸国では広く普及しています。
職務遂行能力・成果が主に評価されるため、高度なスキルを持った人には最適な雇用形態である反面、スキルが無い人は仕事が無く安定した収入が得られず、格差が開きやすいデメリットがあります。
また、長期的なキャリアパスを描きづらく、自身のスキルを業務に併せて常にアップデートし続ける自己投資やキャリアプランニング能力が求められます。
各々の雇用形態の特徴は下図の通りです。
【参考④:雇用形態の特徴】

ジョブ型雇用への転換は目新しいものではなく、日本でも2000年代頃から政府主導のもとジョブ型雇用の促進が進められており、成果主義という形で多くの企業では既に採用されています。
欧米などのジョブ型雇用とは異なり、日本はメンバーシップ型雇用契約を維持したまま、職務内容や成果に基づいて評価を行う「ジョブ型人事制度」の採用が主流となっているため、人材の流動性は比較的ゆるやかなものとなっています。
オープンバッジを活用したスキル・学習歴の証明
ジョブ型雇用は即戦力となる人材を求めます。従来の学歴・経歴ではなく、スキル・経験を重視するため、どのようなスキル・経験を身につけているかを第3者に証明する必要があります。
このような「知識・スキル・経験」などの学習歴を客観的に証明する手段として「オープンバッジ」と呼ばれるデジタル証明が活用されています。
オープンバッジは国際標準規格に沿って発行されるデジタル証明書で、資格だけにとどまらず、研修受講により発行された認定書・終了証や、特定の活動参加の証明書として利用されます。
特徴として、証明書はデジタル画像形式で発行され、ブロックチェーン技術による偽造・改ざん防止措置が取られ、受講者専用のウォレットで一元管理されます。
画像には「発行者・作成日・知識・スキル、取得条件」などの情報が格納され、証明内容は共有者全員が確認できます。
【参考⑤:オープンバッジ(サンプル)】

出典:一般財団法人 オープンバッジ・ネットワーク サンプルバッジ
オープンバッジはSNSやメール・名刺に画像添付することで第3者と共有します。
発行者の学習歴証明は勿論のこと、発行元団体にとっては広報ツールとして利用出来るため、自社の取り組みを社外にアピールできるチャンスとなります。
オープンバッジの詳細は下段リンクを参照下さい。
一般財団法人 オープンバッジ・ネットワーク
【オープンバッチ発行団体(一例)】
最後に
日本のみならず、世界全体の雇用情勢は日々刻々と変化しており、学生であっても将来を見据えたキャリアプランニングが不可欠となっています。ジョブ型雇用社会が主流へと変化する中、求められるのは、単に知識やスキルを身につけるだけでなく、能動的に新しい情報や知識を獲得し、常に専門性を磨き続ける姿勢です。
また、本来学習とは「出来ないこと」を「出来る」に変えることが目的です。
つまり学習歴とは、
- 自分がどんな新しいことが出来るようになったのか
- どんな課題を克服したのか
そのためにも、獲得した知識はインプットだけで終わらせず、今回紹介したオープンバッジなどを活用して情報発信を行い、アウトプットすることで「使いこなせる知識」とすることが重要であると考えます。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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