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上坂 明
2022年12月27日、総務省から「AM局の運用休止に係る特例措置に関する基本方針(案)」が提示されました。本案は民間のAMラジオ放送事業者が、AMラジオ放送(中波放送)からFM放送(超短波放送)への転換、およびFM放送への転換を行わないAM放送局の廃止を検討する際に適用される特例措置の内容、要件、手続き等を記した基本方針案に対する一般公募意見を募集するものです。
リンク:AM局の運用休止に係る特例措置に関する基本方針(案)に対する意見募集
<https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu09_02000300.html >
AMラジオという単語を久しく忘れていましたが、地方の田舎育ちの私は、通学中の車の中などでよく聞いていたこともあり、懐かしさを感じます。今回はこちらをテーマに取り上げさせて頂こうと思います。
AM・FMラジオ放送
AM放送とFM放送では飛ばす電波(変調方式)が異なっており、AM放送は「Amplitude Modulation:振幅変調」方式、FM放送は「Frequency Modulation, 周波数変調」方式を採っています。
AM放送は中波(300kHz - 3MHzの周波数)と呼ばれる周波数のうち、波長約200~600m、周波数約526kHz~1.6MHz帯の電波を使った放送形式です。振幅変調方式は電波の外枠の形に音声信号の情報が乗っており、音声信号をそのままの電波の強弱として伝達しています。
特徴として到達範囲が非常に広く、日中であれば地表に沿って伝わる電波(地表波)により数10km~数百km。紫外線の影響が無くなる夜間帯は、上空50~500km程度に存在する電離層(主に90km以上に存在するE層)が中波を反射するため、数百km~数千km伝搬します。
一方、波長が長いことにより、電気雑音(電化製品等の電源装置)が入りやすいデメリットがあります。また、建物内に電波が届きにくくビルの多い都市部では、難聴エリアが多数存在します。(参考①②参照)
<リンク:https://www.soumu.go.jp/main_content/000216453.pdf >
一方、FM放送は超短波(30 - 300MHzの周波数)のうち、波長約3~4m、周波数約76~94.9MHzの電波を使用します。90MHz~94.9MHz帯の周波数は、テレビで利用されていた地上アナログ放送1ch~3ch(90MHz~108MHz)の枠を「FM補完中継局(ワイドFM)」としてAM放送のFM転換用周波数として用意されたものです。そのため、古いラジオでは90MHz帯以上の周波数に対応していない場合もあります。
FM放送の電波は、送信所からの直接波と大地反射波により伝搬し、送信所から見える範囲(数10Km~100km程度)が範囲となります。AM放送と逆の特性を持ち、遠くまで届かない分、電気雑音による影響は少なく音質はクリアです。ただし、LED照明(屋外型LEDディスプレイ 等)による電磁影響を受けることが判明しています。(参考③④参照)
【参考④:AM放送とFM放送の一般的な特性と特徴】
<リンク:https://www.soumu.go.jp/main_content/000216453.pdf >
FM放送への移行背景
前段の通り、AM放送はビル屋内等の密閉された空間ではノイズが入りやすく、音質も良くありません。更に電波が届きすぎるため外国波混信による影響もあります。
また、AM放送の送信局設置には高さ100Mクラスのアンテナが必要で、広い敷地が必要となります。そのため、川辺等の広い敷地(平野部)に集中しており維持費も高額です。昨今の集中豪雨・地震災害等による都市平野部での被害発生時に、安定して情報発信を行うためにも、FM放送波の有効活用が求められている状況なのです。(参考⑤参照)
<リンク:https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/housou_suishin/fm-seibi.html >
ラジオ放送事業の事業状況について
尚、コミュニティ放送とは地域の活性化等に寄与することを目的に制度化された地上基幹放送で、「行政、観光、交通・防災」などの放送地域に特化した情報を配信する、地域密着型メディアとなります。映像コンテンツが主体となった昨今においても、ラジオ放送のプラットフォームはまだまだ現役だと感じられます。(参考⑥参照)
<リンク:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/pdf/n3300000.pdf >
特例措置に関する基本方針について
今回提示された基本方針(案)の要点を抜粋すると以下の通りとなります。- 特例措置期間を2023年11月から2025年1月31日までとし、特例措置の適用を受けるための要件を定める。
- 期間内において、要件を満たすFM転換、およびAM局廃止を検討するAMラジオ事業者は、6か月以上に及ぶAM局の運用休止を認める。
特例措置を受けるための要件は以下の計10項となります。
【特例措置を受ける要件一覧】
(2) 特例適用局の運用休止の影響を受ける住民への周知広報を行うこと
(3) 地方公共団体等への周知及び災害時の対応に関する調整を行うこと
(4) 問合せ窓口を設置すること
(5) 特例適用局の運用休止の方法を選定すること
(6) 特例適用局の運用休止による影響を検証すること
(7) 特例適用局の運用休止に関する報告書を作成すること
(8) 特例適用局の運用休止の結果を公表すること
(9) 特例適用局の運用休止に関する適切な実施体制を確保すること
(10) 特例適用局の運用休止に関する実施計画を作成すること
(1)~(3)の要件に詳細記載がありますが、大前提としてAM放送を停止しても代替手段(FM放送、ケーブルテレビ 等)で放送区域をカバーすることが必要で、ラジオが視聴できなくなる地域住民に対しては停止期間・代替手段の事前通知義務が生じます。
また、地方公共団体と災害時のラジオ放送に関する取り決めがある場合はそちらの調整も必要となります
最後に
2028年のタイミングで全てのAM放送が停止することは想定されておりませんが、コストを考慮すると、徐々に廃止の流れが続くことは予想されます。(参考⑦参照)
<リンク:https://www.soumu.go.jp/main_content/000844715.pdf >
<リンク:https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/housou_suishin/fm-list.html >