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システムマネジメント事業本部 DCM第6部
テクニカルスペシャリスト
水谷 知彦
最近、日本国内で証券口座が不正に操作され株式が勝手に売買される事件が相次いでいます。これらの被害はサイバー犯罪によるもので、楽天証券、SBI証券、野村証券など、複数の大手証券会社に影響が及んでいます。
金融庁の発表によれば、2025年1月から4月までのわずか4か月で、不正アクセスは6,380件、不正取引は3,505件に達し、被害総額はおよそ1,612億円にも上りました。
※参考:金融庁ホームページ
こうした深刻な事態を受け、私たち一人ひとりができる日常的なセキュリティ対策の重要性が改めて注目されており、具体的には以下のような基本的対策が推奨されています。
・パスワード管理
推測されにくい複雑なパスワードを設定し、他のサービスと使い回さないこと。また、パスワードは定期的に変更する。
・多要素認証の設定
二段階認証やログイン追加認証を設定して、IDとパスワードが漏洩しても、第三者が不正アクセスできないようにする。
・公式サイトからのアクセス
メールやSMSに記載されたリンクは不用意にクリックせず、公式アプリやブックマークからアクセスする。
・端末のセキュリティ対策
OSやアプリを最新の状態に保ち、信頼できるセキュリティソフトを導入してマルウェア感染を防止する。

今回は、これらの中でも特に注目度の高い「多要素認証」の中核技術として利用されている生体認証について、セキュリティに詳しくない方にも分かりやすくご紹介します。
生体認証とは?
みなさんは、スマートフォンのロックをどのように解除していますか?顔をかざすだけで解除される「顔認証」や、指でタッチするだけの「指紋認証」を使っている方も多いのではないでしょうか。これらはすべて「生体認証(バイオメトリクス認証)」と呼ばれる技術です。
生体認証は、人の身体的特徴や行動的特徴を利用して本人確認を行う仕組みです。従来のパスワードと異なり、忘れることがなく、盗まれにくいという利点があります。
近年では、スマートフォンやパソコンはもちろん、オフィスの入退室管理、銀行のオンラインサービスなど、さまざまな場面で活用が進んでいます。
2つのタイプ:身体的生体認証と行動生体認証
生体認証は大きく以下の2種類に分類されます。・身体的特徴による認証
指紋認証、顔認証、虹彩認証などがこれに該当します。一人ひとり異なる身体の構造を使って認証を行う、最も一般的な手法です。
・行動的特徴による認証(行動生体認証)
こちらは比較的新しい分野で、「キーボードの打鍵リズム」「スマホの持ち方」「マウス操作の癖」「歩き方」など、日常の無意識の動作に着目します。
行動生体認証は、たとえパスワードが漏えいしたとしても、本人特有の行動パターンが一致しなければ認証を通過できないという特性があり、セキュリティの強化に大きく貢献します。
多要素認証(MFA)と組み合わせた安全性の向上
セキュリティ対策の基本として、「多要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)」という考え方があります。これは、異なる種類の認証要素を複数組み合わせることで、なりすましや不正アクセスのリスクを下げる手法です。多要素認証は、以下の3つのカテゴリに分類されます。
- 知識情報(知っていること):パスワードや暗証番号など
- 所持情報(持っているもの):スマートフォン、ICカード、トークンなど
- 生体情報(自分自身):指紋、顔、行動パターンなど
たとえば、「パスワード(知識)」+「指紋認証(生体)」のような組み合わせが一般的ですが、近年では「パスワード」+「行動生体認証」という組み合わせも登場しています。
社内システムなどでは、ログイン後のユーザー操作(マウスの動き、入力速度など)をAIが分析し、普段と異なる挙動があれば追加認証を求める、といった高度な仕組みも実用化されています。

行動生体認証の活用例
行動生体認証は、現在も進化を続けており、以下のような分野での活用が進んでいます。- オンラインバンキング:取引中の操作パターンから不正アクセスを検出
- リモートワーク環境:社員のPC利用状況を常時分析し、異常行動を自動検知
- 教育分野の試験監督:オンライン試験でのなりすまし防止
最後に ~これからのセキュリティ対策のあり方~
サイバー攻撃は年々巧妙化しており、もはや「強いパスワードを設定する」だけでは十分な対策とはいえません。セキュリティに詳しくない方でも、「顔認証や指紋認証を有効にする」「2要素認証を設定する」といった基本的な対策から、少しずつ取り入れることができます。
また、企業においては、利便性とセキュリティのバランスを考慮しながら、生体認証や行動生体認証などの先進技術を戦略的に導入していくことが求められます。
「あなた自身がパスワードになる」—そんな未来は、もうすぐそこまで来ています。
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