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ChatGPTの登場から4年、AIとの関わり方はどう変わった?

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プリンシパルフェロー 黒住 好忠顔写真

皆さま、こんにちは。プリンシパルフェローの黒住です。

2022年11月にChatGPTが登場してから、もうすぐ4年が経とうとしています。

今では仕事でChatGPTなどの生成AIを使うことも珍しくなくなり、「文章の作成や要約にAIを使っている」という方も多いのではないでしょうか。

一方で、この数年を振り返ると、「プロンプト」「RAG」「マルチモーダル」「AIエージェント」「MCP」など、次々と新しい言葉が登場しています。最近では「コンテキストエンジニアリング」や「ハーネスエンジニアリング」といった言葉まで聞かれるようになりました。

「いろいろな言葉が出てくるけれど、結局何が変わったのだろう?」と感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、個々の技術を詳しく説明するのではなく、「ChatGPTが登場してからの約4年間で、AIとの関わり方がどのように変化してきたのか」を振り返ってみたいと思います。

※実際には、今回紹介する技術が順番に登場したわけではありません。以前から存在していた技術もありますし、複数の技術が同時に進化しています。
ここでは分かりやすくするために、「私たちがAIをどのように使うようになったのか」という視点から、大きな流れとして見ていきましょう。

第1段階. AIと「会話する」

まずは、約4年前に戻ってみましょう。

ChatGPTが登場した当初、大きな驚きだったのは、人間が普段使っている言葉でAIと会話できるという点でした。

それまでにもAIはさまざまな場所で利用されていました。しかし、多くの方にとってAIは、システムの裏側で動いているものであり、直接会話をするような存在ではなかったのではないでしょうか。

ChatGPTの登場によって、それが大きく変わりました。

「会議の案内メールを作って」「この文章を分かりやすく要約して」「新しい商品のアイデアを考えて」など、普通の言葉でお願いするだけで、AIがそれらしい答えを返してくれます。

まさに、「AIと会話する」という体験が一気に身近になったのです。

どう質問するかが重要になった

ところが、実際に使ってみると、同じAIでも質問の仕方によって回答が大きく変わることに気付きます。

例えば、「企画書を書いて」とお願いするより、「新しい社内研修を企画しています。対象は新入社員で、研修時間は3時間です。企画書の構成案を作ってください」と具体的に伝えた方が、欲しい回答に近づきます。

そこで改めて注目されたのが「プロンプトエンジニアリング」です。

プロンプトとは、簡単に言えばAIへの指示や質問のことです。どのように指示を出せば、より良い回答を得られるのか。そのテクニックが盛んに研究されるようになりました。

以前のコラム(今日から使えるLLMのプロンプトテクニック)でも、役割を与えたり、回答例を示したりするプロンプトのテクニックを紹介しました。

この頃のAI活用を一言で表すなら、「AIにどう聞くか」が重要だった時代と言えるでしょう。

第2段階. AIに「情報を見せる」

AIと会話できるようになると、次の課題が見えてきました。

例えば、AIに次のように聞いたとします。

「当社の出張規程では、どのような場合に新幹線のグリーン車を利用できますか?」

当然ですが、AIがその会社の出張規程を知らなければ、正確には答えられません。

一般的な知識については答えられても、社内規程や社内マニュアル、過去の資料など、その会社だけが持っている情報については知らないのです。

では、どうすればよいのでしょうか。

そこで広く利用されるようになったのが「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」という仕組みです。

RAGについても以前のコラム(生成AIのトレンド「LLM+RAG」を解説)で詳しく紹介しましたが、一言で表すなら、「必要な情報を探して、その情報をAIに見せてから回答してもらう仕組み」です。

人間に例えるなら、何も資料を持っていない人に質問するのではなく、必要なマニュアルを渡してから質問するようなものです。

これにより、AI自身がもともと持っている知識だけでなく、社内文書や独自データなどを活用した回答ができるようになりました。

AIに「どう聞くか」だけでなく、「何を見せるか」も重要になってきたのです。

第3段階. AIが「見る」「聞く」ようになった

さらに、AIが扱える情報そのものも変わっていきました。

初期のChatGPTでは、基本的に文章を入力し、文章で回答を受け取るという使い方が中心でした。

しかし、現在では、文章だけでなく、画像や音声などさまざまな情報を扱えるAIが一般的になっています。

このように、複数の種類の情報を扱えるAIを「マルチモーダルAI」と呼びます。

例えば、画面のスクリーンショットをAIに見せて、「この画面のどこに問題があるか教えて」と質問したり、グラフを見せて、「このグラフから分かることを説明して」とお願いしたりできます。

つまり、人間がAIに合わせて情報を文章に変換するのではなく、AIの方が人間の扱う情報に近づいてきたのです。

これは文章中心だったAIからの大きな変化ではないでしょうか。

第4段階. AIが「考え」、道具を使う

次に起きたのが、「すぐに答えるAI」から「少し考えてから答えるAI」への変化です。

2024年9月にはOpenAIから「o1」と呼ばれるモデル(当初はプレビュー版)が登場しました。これは、回答する前により深く考え、複雑な問題についても答えられることを重視したモデルです。

こうしたモデルは「リーズニングモデル」と呼ばれます。

もちろん、人間とまったく同じように考えているわけではありません。しかし、問題をいくつかのステップに分けたり、途中で見直したりしながら回答することで、複雑な問題にも対応しやすくなりました。

さらに重要なのが、「ツールを使う」という考え方です。

人間も、すべての情報を頭の中に覚えているわけではありません。

分からないことがあればWebを検索します。計算が必要なら電卓を使います。資料を確認したければファイルを開きます。

AIも同じように、必要に応じて道具を使えばよいのです。

例えば、「最新情報が必要ならWebを検索する」「社内資料が必要ならファイルを検索する」「計算が必要ならプログラムを実行する」「ほかのシステムの情報が必要なら、そのシステムに問い合わせる」といった具合です。

AI自身がすべてを知っている必要はありません。

「分からなければ調べる」という、人間にとっては当たり前の仕事のやり方を、AIも実践できるようになってきたのです。

第5段階. AIに「仕事を任せる」

ここまで来ると、AIの使い方がもう一段変わってきます。

それが「AIエージェント」です。

AIエージェントについては以前のコラム(AIエージェントの仕組みを徹底解説~なぜ「自分で考えて動くAI」が実現できたのか~)でも詳しく紹介しましたが、一言で表すなら、「目的を伝えると、必要な作業を考えながら進めてくれる仕組み」です。

例えば、従来のAIに、「A社について調べてください」とお願いすると、調べた結果を文章で返してくれるでしょう。

では、「A社について調査し、競合3社と比較してください。その結果を表にまとめて、報告資料を作ってください」とお願いした場合はどうでしょうか。

AIエージェントであれば、

  1. A社について調べる
  2. 競合企業を調べる
  3. 必要な情報を整理する
  4. 比較する
  5. 表を作る
  6. 報告資料を作る

といった複数の作業を順番に進めることができます。

つまり、AIとの関係が、「質問して、答えてもらう」というものから、「目的を伝えて、仕事を進めてもらう」というものへ変わってきたのです。

AIにも「道具箱」が必要になる

AIに仕事を任せるためには、AIがさまざまなサービスやデータにアクセスできる必要があります。

そこで登場した仕組みの一つが「MCP(Model Context Protocol)」です。

MCPは、AIと外部のデータやツールを接続するための共通の仕組みです。2024年11月にAnthropicから公開され、その後さまざまなAIサービスで利用されるようになっています。

少し乱暴に例えるなら、家電のコンセントのようなものをイメージすると分かりやすいかもしれません。家電製品ごとにまったく異なる接続方法を用意するのではなく、共通の「コンセント」につなげば動く、というイメージです。

家電のコンセントと同様に、AIについても、いろいろな道具を使わせやすくするための「共通の接続口」が整備され始めているのです。

また、一つのAIだけにすべての仕事をさせるのではなく、「調査担当」「分析担当」「レビュー担当」のように複数のAIエージェントを組み合わせる「マルチエージェント」という考え方もあります。

人間の仕事でも、一人ですべてを担当するより、それぞれの得意分野で役割分担した方がよい場合があります。AIでも同じような考え方が使われ始めているのです。

第6段階. 「AIそのもの」から「AIが働く環境」へ

さて、AIがさまざまな道具を使い、複数の作業を自分で進めるようになると、新しい課題が出てきます。

AIには、どんな情報を見せればよいのでしょうか。

どのツールを使わせればよいのでしょうか。

どんなルールを守らせればよいのでしょうか。

過去のどの情報を覚えておいてもらえばよいのでしょうか。

仕事が複雑になるほど、「AIに一言指示を出せば終わり」というわけにはいかなくなります。

そこで注目されるようになったのが「コンテキストエンジニアリング」という考え方です。

プロンプトからコンテキストへ

「コンテキスト」とは、AIが回答を考えるときに参照できる情報全体のことです。

ユーザーが入力した質問だけではありません。

AIへの基本的な指示、過去の会話、参照する資料、利用できるツール、そのツールから得られた情報なども含まれます。

Anthropicは、プロンプトの書き方だけを工夫する「プロンプトエンジニアリング」から、AIにどのような情報を与えるか全体を設計する「コンテキストエンジニアリング」へ考え方が広がっていると説明しています。

人間の仕事に置き換えてみましょう。

新しく配属された社員に、「この仕事をやっておいて」と一言だけ伝えるより、業務マニュアルを渡し、必要なシステムを使えるようにし、過去の事例を見せ、判断に迷ったときのルールを説明した方が、うまく仕事を進められるはずです。

AIエージェントでも同じなのです。

「何と指示するか」だけでなく、「どんな情報や環境を用意するか」も重要になってきています。

AIに仕事のやり方を教える「Skills」

もう一つ、最近注目したいのが「Skills(スキル)」という考え方です。

Skillsとは、ある仕事をするときに必要となる手順や知識、ツールなどをまとめ、AIが状況に応じて利用できるようにする仕組みです。

人間で言えば、「業務マニュアル」や「作業手順書」に近いでしょう。

例えば、「議事録を作るときは、このフォーマットを使う」「提案書をレビューするときは、この観点を確認する」「月次報告を作るときは、このデータを取得して、この順番で集計する」といった、会社や個人が持っている仕事のノウハウをAIに渡せるようになります。

このように、AIを使うたびに細かく説明するのではなく、「仕事のやり方そのもの」をAIに覚えさせて再利用する方向へ進んでいるのです。

AIが働きやすい環境を作る「ハーネス」

そして、さらにその先にある考え方の一つが「ハーネス」です。

最近では、特にAIエージェントを使ったソフトウェア開発などの分野で「ハーネスエンジニアリング」という言葉が使われるようになっています。

ハーネスという言葉は少し分かりづらいかもしれません。

一言で表すなら、「AIが能力を発揮できるように、周りの環境を整える」という考え方です。

いくら優秀な人を採用しても、必要な情報がどこにあるか分からず、仕事のルールもなく、道具も用意されていなければ、十分な力を発揮することは難しいでしょう。

AIも同じです。

AIモデルそのものの性能だけを見るのではなく、「必要な情報にアクセスできるか」「適切なツールが用意されているか」「仕事のルールが明確になっているか」「結果を確認する仕組みがあるか」といった、AIが働くための環境全体を考えることが重要になってきています。

こうして見ると、AIとの関わり方も4年前とはずいぶん違って見えるのではないでしょうか。

まとめ

今回は、ChatGPTが登場してからの約4年間で、AIとの関わり方がどのように変わってきたのかを振り返ってみました。

大まかに整理すると、次のような流れになります。


  1. AIと「会話する」:ChatGPT、プロンプト
  2. AIに「情報を見せる」:RAG
  3. AIが「見る」「聞く」:マルチモーダル
  4. AIが「考え」、道具を使う:リーズニング、ツール利用
  5. AIに「仕事を任せる」:AIエージェント、MCP、マルチエージェント
  6. AIの「働く環境」を整える:コンテキストエンジニアリング、Skills、ハーネス

こうして並べてみると、AIそのものが高性能になっただけではないことが分かります。

ChatGPTが登場した頃は、「AIにどう質問すれば、良い回答が返ってくるのだろう?」ということを考えていました。

それが今では、「AIに何を見せるのか」「どんな道具を持たせるのか」「どんな仕事を任せるのか」「どんな環境で働いてもらうのか」というところまで考えるようになっています。

AIとの関わり方そのものが、大きく変わってきたのです。

そして、おそらくこの変化はまだ進化の途中でしょう。さらに4年後、私たちはAIとどのように仕事をしているのでしょうか……。今後の変化も楽しみにしながら、まずは現在使えるAIを実際の仕事の中で少しずつ試していただければと思います。

AI活用についてお困りのことがあれば

最後に少しだけ弊社のサービスをご紹介します。

生成AIに興味はあっても、「自社の業務で何に使えるのか分からない」「AIエージェントを使ってみたいが、どこから始めればよいのか分からない」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

弊社では、AI活用に関するご相談から、AIエージェントを含むソリューションの検討、ChatGPTなど生成AIを業務で活用するための研修、Difyを使った実践的な研修まで、皆さまのAI活用を幅広く支援しています。

「こんなことをAIで実現できないだろうか」といった段階からでも構いません。ご興味がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

それではまた、次回のコラムでお会いしましょう。




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