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データ・マネージメント・サービス部第2部
エバンジェリスト 千葉 由紀祐
こんにちは、エバンジェリストの千葉です。
今年も早いもので9月半ばとなり、もうすぐ紅葉のシーズンを迎えますね。
夏の海は外出自粛で行けませんでしたが、秋の紅葉は、感染予防対策を万全に行なった上で楽しめる事を期待しています。
さて、前回の投稿では、
IT
サービスマネジメントの定義について述べさせて頂きました。
前回のリンク:
【エバンジェリスト・ボイス】
IT
サービスマネジメントとは
“有用性”があり、“保証”を備えた
IT
サービスを提供するためにはITサービスマネジメントが必要であり、ITサービスマネジメントを行うための仕組み、安定した運営管理や継続的な活動を支えるものとして、ITサービスマネジメントシステムがあるとお話しました。
今回は、そのITサービスの
マネジメントシステム(以下、SMS)
についてお話したいと思います。
●ITサービスにおけるSMSとは
SMS
は、国際規格として
ISO20000
、国内規格(日本産業規格)として
JIS Q 20000
がありますが、
JIS Q 20000-1:2020
には取り組むべき事項が以下の通りまとめられています。
「
SMS
は、サービスの計画立案、設計、移行、提供及び改善を含むサービスライフサイクルの管理を支援するものであり、合意された要求事項を満たし、顧客、利用者及びサービスを提供する組織に対して価値を提供する。」(引用:
JIS Q 20000-1:2020
序文
P1
)
引用:
JIS Q 20000-1:2020
序文
P2
上図は、サービスを提供する組織の状況・目的によって、適用範囲を定め、組織のトップ主導のもと、方針を確立し、計画策定、支援の確保等をした上で、顧客とのサービスレベルの合意に基づき、サービスの設計、構築、提供等を行う。また、継続的改善のために、サービスや
SMS
自体のパフォーマンスや有効性を評価し、改善活動をつなげ、ライフサイクルとして回す事を表しています。
ITサービスマネジメントを安定的に行うためには、
SMS
を組織の目的・戦略にあわせ、組織のトップ主導のもと、計画から改善までを推進する事が必要であると言えます。
では、
SMS
が、顧客、利用者、そしてサービスを提供する組織にとってどのような価値があるのでしょうか?
●顧客、利用者におけるSMSの価値とは
顧客・利用者は、事業・ビジネスの実現・発展につながる“有用性”、“保証”を備えたサービスの提供を期待している事から、
SMS
によってサービスに“有用性”、“保証”が、確実に備わる事が価値であると考えます。
“有用性”のあるサービスと
SMS
の関係として主に
・顧客関係を管理し、顧客との円滑なコミュニケーションを図る「事業関係管理」
・認識齟齬を防ぐためのサービスレベルを合意する「サービスレベル管理」
・サービスの監視・測定・分析・評価を行う「パフォーマンス評価」と「改善」活動
が挙げられます。
顧客のニーズに合わせたサービスの設計・構築・提供は重要ですが、やはり
顧客・利用者が実価値を得る、サービス提供後の活動が特に重要
です。
例えば、「事業関係管理」における顧客満足度調査は、収集・分析後に、評価結果とアクションプランを顧客と合意し、改善計画等のインプットとする事で効果が期待できます。コミュニケーション不足によるアクションプランの合意が不十分であったり、計画へのインプット漏れがあったりすると調査結果を有効に活用しておらず、“有用性”を高める事は期待できません。
「サービスレベル管理」における明確なサービス内容・サービスレベル目標の提示・合意が、提供サービスの基準となり、「パフォーマンス評価」におけるトップマネジメントの正確な判断がその後「改善」活動につながります。
また、“保証”のあるサービスと
SMS
の関係としては主に
・サービスを利用したい時に利用するための「サービス可用性管理」
・大規模な自然災害等の緊急事態においてもサービスを継続させるための「サービス継続管理」
・サイバー攻撃やシステムが想定通りに動かない等に対応するための「情報セキュリティ管理」
が挙げられます。
各項目においてポイントとなるのはリスクアセスメントです。サービス停止のリスク、事業・サービス継続のリスク、情報漏洩等の情報セキュリティリスクに対して、分析を行い、対策を検討・計画・実行します。
サイバー攻撃の多様化や、新型コロナウイルス感染症発生による事業継続への影響など、リスクの多様化・変化への対応・対策を行う仕組みは、顧客・利用者のリスク軽減において、大きな価値があるものといえます。
●サービスを提供する組織におけるSMSの価値とは
SMS
を導入する事によって、企業のトップの方針・目的が全社に伝わり、社員のモチベーションに繋がったり、企業の資産や資源(人、技術、情報、金)の効率的・効果的な割り当て・配置が可能になったり、共通の基準・指標がある事で内外の関係者とのコミュニケーションが円滑になったりなど、各項目においても組織に提供する価値は多々あります。
私が考える
SMS
が組織に与える価値とは、
変化の速い時代に対応できるサービスを提供し続けられる事
だと思います。
ITサービスの多様化、変化スピードの高速化に伴い、“有用性”のあるサービスを提供するには、顧客と共に見直しを繰り返す必要があります。
また、前段でも述べたように、多様の外部環境変化に対しても、リスクマネジメントを確実に行い、“保証”されたサービスにしなければなりません。
そのためには、常にその時代・環境にあわせてサービスライフサイクルを回す事を、安定的・継続的に可能とする仕組み、マネジメントシステムが必要だと考えるからです。
●まとめ
以前、顧客から、
SMS
は導入をしても、うまく回す事が難しいと言われた事があります。
有効に回すにはどうしたらよいか、それは結果に一喜一憂せず、継続的に改善する事だと思います。そのためにはより良いものを追求するパワーと、同調して貰える仲間・協力者を増やす事が必要だと思います。
今回は
SMS
の全体像を掴んで頂くための内容となりました。特定の項目を深堀する事も大事ですが、全体像を意識した上で取り組むと、また違った視野・視点で考え、気付きを得るきっかけとなり、技術者にとって非常に大事な事だと思います。
個々の項目については、今後、ご紹介していきます。
なお、ITサービスマネジメントの力量を図る資格として、情報処理技術者試験のITサービスマネージャ試験が有名ですが、
JIS Q 20000-1:2020
の改訂にあわせて、
2020
年
5
月
8
日にシラバスが改訂されています。
新型コロナの関係で、今年の試験は
11
月以降予定との事ですが、興味を持たれた方は一度チェックしてみてださい。
※外部リンク:
情報処理推進機構
では、次回をお楽しみに。
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