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株式会社IDデータセンターマネジメント
上坂 明
こんにちは。IDデータセンターマネジメントの上坂です。
RPAが一般浸透し始め約3年。RPAに対する興味も一旦落ち着き、導入する企業と導入しない企業の二極化が進んでいると感じます。
私の周りでは、WinActorやUiPathなどのRPAツールを利用する企業が多く、専門のタスクフォースチームを組み、業務の自動化に取り組んでいる企業もありますが、中小企業の多くではコスト・人員の問題で導入を見送っている企業も多いと思います。
さて、本日扱う内容はRPAツール「Power Automate Desktop」についてです。
Power Automate Desktopとは
Power Automate Desktopとは、Microsoft社が提供する「Microsoft Power Platform」のサービスの一つである「Power Automate」に属するRPA機能です。(2020年10月にリリース)
当RPAツールはMicrosoft社が買収したSoftomotive社のWinAutomationをベースに開発された製品であり、「Webブラウザ・デスクトップアプリの操作自動化、スクリプトの実行やAI機能連携」を備えています。また日本語化されているのも特徴の一つです。

「Power Automate Desktop」は従来Power Automateのデスクトップフローでのみ利用可能であったため、有償版のみの製品でした。
しかし、2021年3月に開催された「Microsoft Ignite 2021」の中で、「Windows10利用者に当製品の無償版である「Power Automate Desktop For Windows 10」を提供開始する」と発表があり、Windows10を利用するユーザであれば、誰でも利用出来るRPAツールになっています。
無償版と有償版の違い
無償版・有償版ともにWebフォーム操作、ファイル・フォルダ操作など、標準的なRPA機能はそのまま利用可能となります。以下は無償版・有償版の違いとなります。
無償版 | 有償版 | 備考 | |
---|---|---|---|
データ保存先 | OneDrive | Dataverse | DataverseはM365データベース |
レコーダ機能 | 〇 | 〇 | デスクトップアプリやWebアプリのレコード機能を利用可 |
ビジュアルデザイナー | 〇 | 〇 | ドラックアンドドロップでフローを構成 |
ブラウザサポート | 〇 | 〇 | 主要ブラウザをサポート (Edge、Firefox、IE、chrome) |
用意されたアクション | 〇 | 〇 | 約400種の事前構築されたアクションを利用可能 |
新しいアクション | 〇 | 〇 | SAP、メインフレームやAS/400などのレガシー端末や、Javaアプリ、Citrixなどの新しい端末を含めた対応 |
例外処理 | 〇 | 〇 | 例外処理を利用して、喧騒が必要な複数のケースの自動化が可能 |
クラウドフローとの連携実行 | ✕ | 〇 | トリガー・スケジュール実行の可否 |
共有とコラボレーション | ✕ | 〇 | 作成したフローを組織メンバーで共有 |
一元管理 | ✕ | 〇 | 管理サイトでのフロー集中管理、実行状況の確認 |
サービス連携 | ✕ | 〇 | AI Builderなどの外部サービス連携 |
無人実行 | ✕ | 〇 | PCへの自動サインイン |
まとめると、有償版のメリットは以下の通りとなります。
- 作成したフローの共有利用が可能となり、利用アカウントの制限が無くなる。
- 人の手で起動する必要が無い。
- クラウドフローとの連携で、高度な実行制御が可能(例えば途中で承認プロセスをはさむなど)
上記メリットを享受したい、または「組織の業務を一元管理して自動化したい」という要件であれば、有償版利用が推奨されます。
しかし、「ユーザ毎の業務を自動化したい」のであれば、無償版でも問題ありません。
このRPAツールは、無料で使用できるという特徴が最も大きく、例えるなら一般ユーザがExcelマクロを作成して、業務の自動化を図るのと同じレベルで業務に導入することが可能です。
まずは、ユーザ端末に導入し、スモールスタートで導入検証を進めるのが良いと考えます。
Power Automate Desktopを利用してみよう(導入編)
では、実際にPower Automate DesktopをPCに導入してみましょう。以下に導入から起動までの流れを記載します。
前提事項
- Power AutomateにサインインするためのMicrosoftアカウントを準備してください。
※職場または学校等の組織アカウントでも可能です。 - Windows管理者権限を持つPCアカウントを準備してください。
- システム要求事項を満たすWindows 10 OS搭載のPCを準備してください。
※最低 ストレージ:1GB、RAM:2GB程度あれば動作します。
- サイト「※外部サイト:Power Automate Desktop」にアクセスし、「無料でダウンロード」をクリック。インストーラをダウンロードしてください。
- ダウンロードしたインストーラを、管理者権限で実行すると以下の通りインストーラが起動します。起動後はインストーラの指示に従って画面を進めてください。
- インストールが完了すると以下画面に遷移します。
※デスクトップフローでWebアプリを使用する場合は、優先利用するブラウザで拡張機能を有効にしてください。 - スタートメニューからPower Automate Desktopを起動して下さい。
※インストール時にデスクトップにショートカットを作成した場合、以下のアイコンが追加されます。 - アプリを起動するとサインインが求められるので、保有しているMicrosoftアカウントのメールアドレス・パスワードを入力してください。
- サインイン完了後、国/地域の選択で日本を選択後、画面下にある「開始する」を押下すると、Power Automate Desktopが起動します。導入作業は以上で完了です。
Power Automate Desktopを利用してみよう(操作編)
それでは実際にどのようにしてフローを組むかを見てみましょう。今回は非常に簡単な例で、Excelのファイル操作行うフローを作成してみます。内容としては以下のフローとなります。
① 新規Excelファイルを起動。
② メッセージボックスを起動し、ユーザがExcelファイルに記入する内容を入力。
③ ②で入力された値を①Excelファイルに反映する。
④ 名前をつけてファイルを保存。
⑤ Excelファイルの終了。
設定手順
- 前項起動ページの左上にある「新しいフロー」をクリックすると、フロー名を入力する下記画面に遷移します。フロー名に任意の名前をつけ、作成ボタンを押してください。
- フローを新規作成すると、対象フローの編集画面が起動します。
中央のメイン画面に実行したいアクション(左側メニュー)を追加し、具体的な操作設定を行います。今回はExcel操作を例としますので、「Excel > Excelの起動」を選択し、画面中央にドラッグアンドドロップします。 - Excel起動アクションのパラメータ設定画面が起動しますので、必要なパラメータを設定します。指定するパラメータの詳細は、上段の「詳細」リンクをクリックすることで確認することが出来ます。(以下ヘルプページ参照)
- アクションを登録すると、右側のフロー変数欄に「ExcelInstance」というフロー変数が生成されます。これは先ほど作成したExcelの起動アクションにより生成された変数で、以降のフローでこの変数を指定することにより、起動したExcelに対して操作を行うことが出来ます。
- 「メッセージボックス > 入力ダイアログを表示」を追加します。この操作によりユーザが入力した値は変数「UserInput」に格納されます。また操作したボタンのテキストが変数「ButtonPressed」に格納されます。
- 「Excel > Excelワークシートに書き込み」を追加し、以下の通り指定してください。
尚、入力欄右にある{x}を選択すると、生成された変数の一覧が表示されます。
今回はユーザが入力した値を利用したいため、変数「UserInput」を選択してください。 - 「Excel > Excelの保存」を追加し、保存するファイルパスを指定します。
今回の例ではデスクトップ上に「テスト.xlsx」の名前で保存します。 - 最後に「Excel >Excelを閉じる」を追加します。完成したフローは以下の通りとなります。

作成したフローを実行 & 修正してみよう。
作成したフローはフロー画面上段にある「実行ボタン」を押すことで実行され、フローの上から順番に実行されます。先ほど作成したフローを実行すると以下画面が表示され、入力を求められます。ここで入力された内容が変数「UserInput」に格納されます。
入力後「OK」を押すと処理が終了し、デスクトップ上に先ほど入力した内容が書き込まれたExcelファイルが保存されます。
では、作成したフローの修正を行ってみましょう。修正ポイントは以下の通りです。
① 新規Excelファイルを起動。
② メッセージボックスを起動し、ユーザがExcelファイルに記入する内容を入力。
③ ②でキャンセルボタンが押された場合、起動したExcelを終了し、フロー処理を停止する。
④ ②で入力された値を①Excelファイルに反映する。
⑤ 名前をつけてファイルを保存。
⑥ Excelファイルの終了時に名前をつけて保存。
キャンセルボタンを押した場合の処理は、「入力ダイアログを表示」の下に以下、IF文とアクションを追加するのみです。「Excelを閉じる」については「前項8」にて追加したアクションのコピーを行ってください。
「名前をつけてファイルを保存する処理」の削除は、該当フローを削除することでも良いですが、アクションを右クリックし、「無効にする」を選択することを推奨します。
(後々戻したいときにすぐ戻せます)
また、Ctrlキーを押しながら複数のアクションを選択して無効化することも可能です。
これはデバッグの際などに良く使います。
最後に「Excelファイルを閉じる」アクション内に、ファイル保存のパラメータを指定すれば修正完了です。
再度当フローを実行し、キャンセルボタンを途中で押すと、処理が途中で終了することが確認できます。
終わりに
いかがでしたでしょうか。無償版とはいえ、流通しているRPAツールと操作面では遜色無く、設定パラメータのドキュメントもしっかりしているため、導入しやすいと思います。
今までライセンス費用の問題で個人PCへの導入は進まない状況でしたが、このツールから「個人事務作業の自動化推進」が進むのではと感じました。
今回操作したアクション以外にもWeb入力、メール送信やクラウド連携(Azure、AWSのインスタンス操作等)もありますので、今後もう少し踏み込んだ内容をご紹介できればと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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