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IBM Think 2025 Report:今後のAI活用

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プリンシパルフェロー 黒住 好忠顔写真

皆さま、こんにちは。プリンシパルフェローの黒住です。
 
先日、ボストンで開催されたIBM Think 2025に参加してまいりました。今回は、このカンファレンスの最新情報から、今後のAI活用における「エッセンス」を私なりに整理してお伝えしたいと思います。
 
Think 2025では、IBMの製品やサービスに関する内容が多く取り上げられましたが、ここでは製品に特化せず、普遍的なエッセンスをお届けします。

IBM Think とは?

IBM

IBM Thinkは、IBMが毎年開催する大規模なカンファレンスです。世界中から企業のリーダー、技術者、開発者、ビジネス専門家が一堂に会し、最新のテクノロジートレンド、イノベーション、ビジネス戦略について議論を交わします。
 
このカンファレンスでは、AI、クラウド、量子コンピューティング、サイバーセキュリティなど、先端技術の展望や実践的な活用事例が共有されます。基調講演、技術セッション、ワークショップ、デモンストレーションなど、多彩なプログラムが用意されており、参加者は最新の技術動向を学びながら、ネットワーキングの機会も得ることができます。
 
今回のIBM Think 2025は、5月5日から8日までの4日間、ボストンのHynes Convention Centerにて開催されました。

IBM Think 2025 のテーマ

今回のIBM Think 2025では、「AIを活用して、いかにビジネスをスケールさせるか」というテーマにフォーカスされていたと感じています。


このテーマに基づいて、CEOとしてのマインドセットであったり、各種サービス、そしてそれらを支えるプラットフォーム基盤やハードウェアといった複数のレイヤーに分けてのセッションが行われました。

企業データを活用する仕組みの重要性

IBMのCEOであるクリシュナ(Arvind Krishna)氏は、「AIは生産性のエンジンであり、データの価値を解き放つ存在」と定義し、企業データを効果的に活用するための仕組みの重要性を強調しました。
 
企業が保有するデータの活用は、ビジネスの成功において最も重要な要素の一つです。しかし、既存の企業インフラではデータを効率的に活用できる仕組みが整っていません。実際、現状でAIがアクセスできる企業データは、全体のごく一部に限られています。この未活用のデータにAIがアクセスできるようになれば、新しいビジネスの扉が開かれることでしょう。
 
それでは、企業データの価値を最大限に引き出すために、今回のカンファレンスから得られた重要なエッセンスについてまとめていきたいと思います。

エージェントのコラボレーション

1つめのエッセンスは「エージェントのコラボレーション」になります。
 
世の中では2024年末頃から、人間のように「自律的に考えて行動」できるAIエージェントが注目を集めています。今回のカンファレンスでも、AIエージェントの活用は必要不可欠な要素として扱われ、特に「エージェントのコラボレーション」の重要性が強調されました。
 
現在、業務領域ごとに特化したAIエージェントが導入される傾向にあります。例えば、HRやセールス、システム開発など、各領域に特化したエージェントが存在し、それらが並行して運用されています。
 
AIエージェントの数は今後も加速度的に増加すると予測され、あらゆる業務分野で専門化されたAIエージェントが登場するでしょう。さらに、AIエージェントは様々なベンダーから提供されるようになり、自社独自のエージェントだけでなく、外部のAIエージェントの活用も一般的になっていきます。
 
ここで課題となるのが、AIエージェントのサイロ化です。各領域でエージェントが個別に運用されることで、全体的なシームレスな連携が困難になり、非効率なワークフローが生まれ、ビジネスの全体最適化の妨げとなります。
 
この課題を解決するには、統一されたプラットフォームと標準化されたワークフローによる「エージェント間のコラボレーション」が不可欠です。これにより、エージェントのサイロ化を防ぎ、企業全体の業務プロセスを効率的に管理することが可能になります。

ハイブリッドクラウドによるセキュアなデータ活用

2つめのエッセンスは、「データをセキュアに活用」するための仕組みです。
 
企業システムにおいて、「データのセキュリティと信頼性」は極めて重要です。AIによるデータ活用を考える上でも、この要素は不可欠です。近年、クラウド上へのデータ配置は増加傾向にありますが、依然として大部分の企業データは社内サーバーなどのオンプレミス環境に存在しています。また、将来的にもすべてのデータがクラウドに移行するとは考えにくい状況です。
 
このような状況下で重要となるのが「ハイブリッド・バイ・デザイン」戦略です。これは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミス、エッジといった多様な環境を横断的に統合し、データのガバナンスとセキュリティを確保しながらデータを活用できる仕組みです。
 
この戦略により、企業が保有するデータの真価を最大限に引き出すことが可能となります。
 
また、企業が持つデータの大多数は「非構造データ」、つまりは、フリーフォーマットの文章、画像、音声などであり、AIやシステムにとって扱いづらい形式となっています。このため、これらのデータへのアクセスが可能になったとしても、そのままの状態では効果的な活用が困難です。
 
したがって、非構造データをAIが活用しやすい形式に変換し、シームレスに連携できる仕組みを整備することが不可欠です。

エコシステム

最後のエッセンスは、作成・利用・保守が容易な「エコシステム」の導入です。
 
ビジネスにおいて、AIシステムは構築して終わりではなく、環境の変化に応じて柔軟な拡張が求められます。そのため、これらの仕組みは複雑になりすぎず、誰もが簡単に利用できる必要があります。
 
つまり、複雑な処理であっても、簡単に扱えるエコシステムが不可欠となります。
 
また、IBMでは、AIを効果的にスケールさせるためには単独企業の取り組みではなく、オープンなエコシステムの形成が不可欠だと考えています。Metaの大規模言語モデル(LLM)であるLlamaや、Salesforce、Oracleなどとのパートナーシップを通じて、各社のAIやデータ基盤を連携させ、業界全体で統合されたエコシステムを構築することが重要と考えられているようです。

まとめ

他にも、プロンプト(AIへの指示文)の複雑化とメンテナンスの課題に対応するためのプロンプトのプログラミング化や、量子コンピューティングの活用など、多くの興味深いトピックが議論されましたが、これらすべては「ビジネスをいかにスケールさせていくか」という一つの大きなテーマに基づいて展開されたものです。
 
日本においても、ビジネスにおけるAI活用の流れは今後さらに加速していくでしょう。本稿で取り上げた「企業のデータを活用する仕組み」のエッセンスが、皆さまのAI活用の検討において少しでもお役に立てば幸いです。
 
弊社ごとですが、2025年4月より組織体制を大幅に刷新いたしました。これまでコンサルティング、システム開発、セキュリティ、インフラ基盤、システム運用、AIなどの各領域に特化していた4社を、株式会社インフォメーション・ディベロプメントとして1社に統合いたしました。
 
この統合により、お客さまに対して企画提案から運用保守まで、一貫したサービスをシームレスに提供できる体制が整いました。
 
私の所属部署では、ビジネスにおけるAI活用について、気軽にご相談いただけるアドバイザリーコンサルティングをはじめ、実証実験(PoC)やAI開発などのサービスを展開しております。さらに、AIの活用が一般化する時代に向けて、ビジネスパーソン全員が身につけておくべき、AIリテラシーに関する教育研修プログラムもご用意しております。
 
AI活用に関するご相談がございましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。
 
それでは、次回のコラムでお会いしましょう。

リンク集

IBM Think 2025
IBM「The boldest ideas from the Think stage」
インフォメーション・ディベロプメント ソリューション
インフォメーション・ディベロプメント AIリテラシー教育研修



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黒住 好忠

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