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家電を壊すのは直撃雷だけではない

2026-10-01

ITニュース

IoTセキュリティリスク

サイバー・セキュリティ・ソリューション部
テクニカルスペシャリスト 藤原 和紀顔写真

CSS部テクニカルスペシャリストの藤原です。

今年も酷暑、台風、ゲリラ雷雨、線状降水帯など、自然災害が途切れることなく発生しています。特に8月の千葉豪雨では多数の水没車が発生し、都市型水害の脆弱性が浮き彫りになりました。

雷についても例外ではありません。昨年(2025年)夏の発生件数は近年で2番目の多さとなり、7〜8月に加えて秋雨前線の影響で9月も雷が増える傾向にあります。もはや夏だけのものではなく、季節を問わず私たちの生活に影響を与える存在になりつつあります。

直撃雷より身近な「誘導雷」とは

落雷というと、どうしても直撃雷の危険に目が向きがちです。しかし、実際に家庭で被害をもたらすことが多いのは「誘導雷」です。私の自宅でも、誘導雷と思われる家電の故障が起きたことがあります。

誘導雷とは、近くで発生した落雷によって電磁界が急変し、電線や金属配管に瞬間的な過電圧・過電流が発生する現象です。この異常な電圧・電流を「サージ」と呼び、雷によって生じたものを「雷サージ」と呼びます。

直撃雷の電圧が1億V以上ともいわれるのに対し、誘導雷サージは2,000〜5,000V程度で、条件によっては数万Vに達することがあります。家庭用機器の耐圧は数百V程度ですから、機器が壊れてしまうのも無理はありません。

誘導雷は、数百m〜数km離れた落雷でも発生することがあります。そのため、落雷が家の近くでなければ安心、というわけではありません。

誘導雷が家庭に入り込む5つの経路

雷サージは、私たちが普段使っているさまざまな配線や配管を通じて家の中へ侵入します。

  1. 電源線

    屋外の配電線にはアースが施されています。このため、落雷があっても直撃雷がそのまま流れ込む可能性は低いものの、雷サージは瞬間的な高電圧であり、アースだけで完全に防げるわけではありません。直撃雷や誘導雷によるサージが、コンセントを通じて家電へ流れ込みます。

  2. 通信線

    電話線(メタル回線)、LANケーブル、CATVの同軸ケーブルなどは雷サージの侵入経路です。光ファイバー自体は電気を通しませんが、屋外の支持線や保護材に金属が使われている場合は、その金属部分が誘導を受けます。

    また、LANの場合、HUBが被害を受けると、接続されている機器全体に影響が及ぶ可能性があります。

  3. アンテナ

    屋根上のアンテナは雷の影響を受けやすい設備です。一般家庭では直撃雷よりも、近くの落雷による誘導雷や、周囲の高い物体から雷が飛び移る側撃雷のほうが現実的な脅威です。同軸ケーブルを通じて屋内へサージが伝わります。

  4. アース(接地)

    近くの樹木や建物などへの落雷で大地電位が上昇すると、アース線を通じて逆向きに電流が流れ込む「逆流雷」が発生します。

  5. ガス管・水道管

    金属管は電磁誘導を受けやすく、接続部などで火花が発生すると火災につながる可能性があります。築年数の古い住宅では特に注意が必要です。

雷が鳴ってからケーブルを抜くのは危険

ケーブルや電源プラグを抜いておけば、雷サージの影響は防げます。しかし、雷が鳴り始めてから抜くと感電の危険があります。雷注意報が発表された段階で抜くのが理想とはいえ、現実的には難しい場面も多いでしょう。

家庭でできる雷対策:サージ防護デバイス(SPD:Surge Protective Device)

雷サージを防ぐために有効なのが、サージ防護デバイスの導入です。SPDを引込点(クラスⅠ)→分電盤(クラスⅡ)→機器の直前(クラスⅢ)の三段階に設置してサージを段階的に減衰させることで、直撃雷級のエネルギーにも対応できます。

  1. 家庭用SPD(電源タップ・クラスⅢ)

    タップに内蔵されたバリスタやアレスタでサージを吸収します。通信線用や逆流雷対策用の製品もあります。

  2. 分電盤SPD(クラスⅡ)

    既設分電盤の空きスペースに設置できるSPDです。家中のコンセントを雷ガード付きに交換するより効率的です。逆流雷に対応する製品もあります。

  3. 引込点SPD(クラスⅠ)

    メーター周りの配線スペースに設置するもので、電力会社との調整が必要になります。

  4. 雷保険の活用

    最後は保険です。落雷による損害は火災保険で補償される場合がありますが、「建物」「家財」の両方への加入が必要なケースや、経年劣化扱いで対象外となるケースもあるため、補償範囲の確認が欠かせません。

本来、直撃雷クラスの雷サージに対応するには、引込点(クラスⅠ)、分電盤(クラスⅡ)、電源タップ(クラスⅢ)と多層で防御するのが望ましいところです。ただし、引込点への設置には電力会社との調整が必要で、分電盤への設置にも電気工事士の資格が求められます。まずは地元の電気工事店へご相談ください。特に家庭用蓄電池は高価な電子機器であり、雷サージに弱い構造を持っています。導入の際は、あわせて分電盤SPDと引込点SPDによる多層防御を強く推奨します。

マンションや賃貸住宅では、引込点や分電盤が共用部に該当するため、個人での対策は難しくなります。共用部にSPDが設置されているかどうかで雷サージのリスクは大きく変わりますので、まずは管理会社へ確認することをお勧めします。なお、共用部にSPDが設置されていても、電源タップで保護しておいたほうが安心です。また、賃貸の場合、建物側(オーナー側)の保険は通常、入居者の家財を補償しません。ただし、家具・家電付き物件の備え付け家電はオーナーの所有物のため、オーナー側の保険の対象となる場合があります。ご自身の家財については、加入している家財保険の補償内容を確認しておきましょう。

雷サージタップの寿命にも注意

雷サージ電源タップの寿命は平均3〜5年と短めです。保護ランプが消灯している場合は交換時期です。ランプが点灯していても本体が熱を持つ場合は、バリスタの劣化が疑われますので交換をお勧めします。

また、一度雷サージを受けた電源タップは性能が低下しているおそれがあるため、外見に異常がなくても交換をお勧めします。

まとめ:雷は防げないが、被害は減らせる

古い建物では、金属管が使われていたり、使われないまま残された配線があったりするなど、目に見えない部分に雷サージの侵入経路が潜んでいることがあります。こうした経路では、誘導雷が発生した際に火花や過電流が生じ、火災につながる可能性も否定できません。

だからこそ、電源線・通信線・アンテナ・アース・金属管といった「複数の侵入経路」を理解し、家庭用SPD・分電盤SPD・引込点SPDを組み合わせて多層的に防御することが重要です。

落雷そのものを防ぐことはできませんが、対策を積み重ねることで、家庭内の安全性を確実に高めることができます。

余談ですが、屋外で雷に遭遇した場合は、建物や車の中に避難するのが基本です。やむを得ず屋外にとどまる場合、雷は高い構造物や電線に落ちやすいため、電線の真下は比較的安全な位置とされています(電柱からは4m以上離れてください)。

ただし、ご注意いただきたいのは、電線には100/200Vの低圧線だけでなく、6,600Vの高圧線が通っている場合があるという点です。高圧線は一番上に張られており、落雷の衝撃や熱、あるいは倒木などによって溶断・破断することがあります。高圧線が破断すると、通電したまま落下して地面や水たまりの広い範囲に電気が流れるため、極めて危険です。破断した電線を見かけたら、とにかく近寄らずに通報をお願いします。

それでは次回までしばらくお待ちください。




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藤原 和紀

サイバー・セキュリティ・ソリューション部 テクニカルスペシャリスト

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